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米国の労働市場

2008-12-11 | Weblog
Edward L. Glaeserが"A stimulus package that helps unskilled workers"というコラムをNew York Times(12月10日付)に書いています。先週の雇用統計で、米国の失業率は6.7%を記録しましたが、Glaeserによると、この数字は労働者の教育水準の違いによる不均衡を隠蔽しているとのこと。先月の大卒労働者の失業率は3.1%で横這いだったのに対し、高卒労働者の失業率は6.3%から6.8%に上昇したそうです。また、過去1年間の推移を見ると、大卒労働者の失業率は1%未満の上昇に留まっていますが、高校中退者になると、7.6%から10.5%に跳ね上がります。 Glaeserは、Obamaの景気刺激策は高スキルの技能を必要とする運輸、クリーン・エネルギー、通信インフラなどの分野に偏っており、最もサポートを必要とする低スキルの労働者の利益につながらない、と懸念しています。

Glaeserは、再分配よりも、社会的リターンを最大化する分野に公共投資を集中させること自体には経済合理性があると見ているため、Obamaの景気対策に必ずしも反対という立場ではありませんが、その代わり「低スキルの労働者により高い技能をつけさせるような対策・分野に財政資金を投入すべし」と唱えています。例えば、失業者や若者がコミュニティ・カレッジなどの教育機関に通うためのバウチャーに資金補助せよ、といったことです。

いわゆる「どマクロ」の財政政策ではなく、その中味をよく吟味して、長期的な生産性を高める用途に資金を振り向けよ、という主張にはまったく同感です。ところが、前日(12月9日)のNew York TimesでAlan B. Kruegerが、「大卒労働者の労働市場からの退出が顕著になっている」というコラムを書いているんですねぇ。Kruegerの言うには、先月の大卒労働者の雇用は28万2000人減ったのに対し、大卒労働者の失業は2000人程度した増えなかったのだそうです。これは、経済の先行きを悲観した大卒労働者が求職活動を控えたため、失業にカウントされなかったということらしいのです。特に2008年3月以降、失業率に関してはless-educated workersの上昇幅が大きいのですが、雇用の減少は大卒労働者のほうが大きい、とのことです。つまり大卒労働者にとっても、この不況は極めて厳しいものがあると解釈できそうです。Kruegerは「不況の深刻さは失業率だけを見ていてもわからない」として、雇用者の人口に占める割合を見たほうが、労働市場の動向がよくわかるのではないか、と示唆しています。

長期の人的資本形成を見据えたGlaeserの提案自体はもっともなものですが、現下の米国の状況は想像以上に厳しいと見るべきかもしれません。

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