Marginal Revolutionのリンクから、ポジティブ心理学の現況のレポート記事へ行ってみました。
ポジティブ心理学は、マーティン・セリグマンがこの分野を創設して以来10年の間に大きな成功を収めましたが、他方でガイド本の乱造に代表されるポジティブ心理学マーケットの膨張などの問題も引き起こしています。ニューエイジっぽい自己啓発への安易な応用には、本職のポジティブ心理学者も懸念を抱いている模様ですが、記事では、ポジティブ心理学者自身の言説や行動自体がそうした傾向を生んでいる面も否めないことを指摘しています。
また、ポジティブ心理学の政策への応用についても慎重な見解が示されています。
例えば、イリノイ大学のEd Dienerはポジティブ心理学の政策への適用を最も声高に主張してきた人であり、ポジティブ心理学の研究は人々が本当に幸せになれるような「善き社会」をつくるためにあると唱導してきました。
セリグマン自身、「幸福になるスキル」の教授を盛り込んだPositive Educationというカリキュラムを行うパイロット・プログラムを試行したり、Ed Dienerの息子であるRobert Biswas-DienerによるStrength Projectと呼ばれる慈善活動(カルカッタのスラムの住民の支援をするプロジェクト)が始まったりと、ポジティブ心理学の名のもと「善き社会」を目指す実践活動は現実のものになっています。
しかし、記事では、ポジティブ心理学が個々人の幸福から一足跳びに「善き社会」の建設にジャンプしてしまうことに幾ばくかの懸念を示しています。実際、今年の国際ポジティブ心理学会では、ポジティブ心理学には、より緻密なアプローチが必要だという意見と、一般市民にも理解できるよう、簡潔で明快なメッセージを打ち出すべきだという意見が相半ばしたとのこと。例えば、政策や実践への応用に積極的なポジティブ心理学者に混じって、幸福の経済学の著名な研究者であるRichard Layardも、政策当局へのアピールを失わないよう、幸福研究の複雑化は避けるべきだという意見を述べています。
今のところ、ポジティブ心理学の研究成果の多くは、Layard流の単純化志向とは一線を画しており、比較文化的・行動科学的な視点を取り入れたり、より長期のデータセットを利用したりする方向へ関心が向いているようです。しかし、政策や実践への応用が進むにつれ、ポジティブ心理学の方向性に関する議論は、より過熱していくと思われます。
個人的にはセリグマンの著書には感銘を受けましたし、ポジティブ心理学により救われたり、癒しを得たりする人は数多いと思います。しかし、政策への応用は、まだ手探りの状態なのかな、という気もします。幸福の経済学や行動経済学の動向も含め、これらの新しい科学の政策への応用過程は今後もウォッチしていきたい分野です。
ポジティブ心理学は、マーティン・セリグマンがこの分野を創設して以来10年の間に大きな成功を収めましたが、他方でガイド本の乱造に代表されるポジティブ心理学マーケットの膨張などの問題も引き起こしています。ニューエイジっぽい自己啓発への安易な応用には、本職のポジティブ心理学者も懸念を抱いている模様ですが、記事では、ポジティブ心理学者自身の言説や行動自体がそうした傾向を生んでいる面も否めないことを指摘しています。
また、ポジティブ心理学の政策への応用についても慎重な見解が示されています。
例えば、イリノイ大学のEd Dienerはポジティブ心理学の政策への適用を最も声高に主張してきた人であり、ポジティブ心理学の研究は人々が本当に幸せになれるような「善き社会」をつくるためにあると唱導してきました。
セリグマン自身、「幸福になるスキル」の教授を盛り込んだPositive Educationというカリキュラムを行うパイロット・プログラムを試行したり、Ed Dienerの息子であるRobert Biswas-DienerによるStrength Projectと呼ばれる慈善活動(カルカッタのスラムの住民の支援をするプロジェクト)が始まったりと、ポジティブ心理学の名のもと「善き社会」を目指す実践活動は現実のものになっています。
しかし、記事では、ポジティブ心理学が個々人の幸福から一足跳びに「善き社会」の建設にジャンプしてしまうことに幾ばくかの懸念を示しています。実際、今年の国際ポジティブ心理学会では、ポジティブ心理学には、より緻密なアプローチが必要だという意見と、一般市民にも理解できるよう、簡潔で明快なメッセージを打ち出すべきだという意見が相半ばしたとのこと。例えば、政策や実践への応用に積極的なポジティブ心理学者に混じって、幸福の経済学の著名な研究者であるRichard Layardも、政策当局へのアピールを失わないよう、幸福研究の複雑化は避けるべきだという意見を述べています。
今のところ、ポジティブ心理学の研究成果の多くは、Layard流の単純化志向とは一線を画しており、比較文化的・行動科学的な視点を取り入れたり、より長期のデータセットを利用したりする方向へ関心が向いているようです。しかし、政策や実践への応用が進むにつれ、ポジティブ心理学の方向性に関する議論は、より過熱していくと思われます。
個人的にはセリグマンの著書には感銘を受けましたし、ポジティブ心理学により救われたり、癒しを得たりする人は数多いと思います。しかし、政策への応用は、まだ手探りの状態なのかな、という気もします。幸福の経済学や行動経済学の動向も含め、これらの新しい科学の政策への応用過程は今後もウォッチしていきたい分野です。