Good Life, Good Economy

自己流経済学再入門、その他もろもろ

パトリック・ゲデスに関するノート1

2010-11-05 | Weblog
Patrick Geddes (1854-1932)
Ballatar, Aberdeenshire, Scotland出身
都市計画家、植物学者、社会学者

Volker M.Welter, Biopolis - Patrick Geddes and the City of Life, Ch.1 "Angling for Cities!"より

1853年 オースマンのパリ再開発始まる
1859年 セルダによるバルセロナ市街地拡張案公表される
また、ウィーンでもフェルスター案によるリング大通りの建設に着手

これらの都市計画の実践は、19世紀末にかけて、都市計画・デザインに関する活発な議論の礎となった。ゲデスはそれらの議論の中心人物となっていったが、恐らくはその植物学者としての出自が、彼をして他の都市計画家や社会改革者から区別させる要因となっている。

ダーウィンの進化論の影響を受け、ゲデスは生命の形態や、環境との相互作用による生命の発現に強く惹かれるようになる。Welterの著書から引用すると;

In this light, Geddes's lifelong interest in the city takes on a meaning far beyond the typical late nineteenth-century social consciousness based in finding relief for urban misery through philanthropic endeavors. The city is for Geddes the most distinct form that human life can take; even more, it is the form human life should take, especially in its highest development as cooperative and communal life.

1978年から79年にかけ、ゲデスはソルボンヌで生物学を学ぶが、そこでフレデリック・ル・プレーの社会学の感化を受ける。

WelterはThe Economics of NatureとThe Economies of Citiesと題された二節を設けている。ゲデスの経済観についての言及は比較的珍しいと思われる。ゲデスは消費と生産をnecessariesとsuper-necessariesに二分して考えている。necessariesとは燃料、食糧等の文字通り必需品であり、super-necessariesは純粋に審美的な物品、例えば装飾的な家具や食器、衣装等をいう。ゲデスによれば、生命のより高度な形態はより複雑な神経システムに依拠するため、生命のより高度な形態(より発達した人間)はより多くのsuper-necessariesを必要とする、ということになる。

ゲデスは資本主義をsuper-necessariesを犠牲にして、necessariesの回転を速め、エネルギーや物質を浪費する経済システムと捉えており、これを是正するにはsuper-necessariesの創造へ向けた生産・消費システムへと転換する必要があると認識していた。

ゲデスは自然法則に則った経済を志向しており、これは古典ギリシアの経済観-農業を中心とした健全な家族(オイコス)経営の世界-を取り入れたものである。ここではジョン・ラスキンの影響が見出される。

ゲデスにとっては、現存の都市はエネルギーや物質を浪費する存在であり、来るべき新しい都市は、super-necessariesの恒久的な富を創造する、"healthy and happy artists"の都市である、としている。

(暫定的)キーワード:都市、進化論、社会進化論、ヴィクトリア朝、古典ギリシア、スコットランド