Good Life, Good Economy

自己流経済学再入門、その他もろもろ

ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル

2009-02-19 | Weblog
「ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル」(スザンナ・クラーク著、ヴィレッジ・ブックス)全3巻をようやく読了しました。残業が続いていたもので、ブログも書かずに(笑)時間を捻出し、なんとか読み終わりました。おもしろかった割りに、意外と時間かかったなー。

ファンタジー小説に関してはまったくの門外漢ですが、新聞の書評と帯の宣伝文句と表紙デザインに惹かれて購入。「大人のハリー・ポッター」なる触れ込みだけあって、出てくる妖精も可憐な存在ではなくて、すっかりダークなキャラだったりします。

ストーリーについてはあちこちで書かれているので、ここではもう少し周辺的なことを。舞台は19世紀初頭のイギリス、対仏戦争の記述がかなりの紙幅を占めています。著者のインタビューによれば、政治史と軍事史のリサーチにはかなりの時間をかけた由。当時の時代背景は、例えばこんな感じ。作品中に出てくるリヴァプール卿ら政治家ののんびりした雰囲気とは逆に、かなり激動の時代であったことを改めて認識させられます。国際政治では対仏戦争からウィーン体制に至る転換期にあたり、産業革命の浸透、経済の不況、政治的急進主義の台頭など、社会の変化は急であったにも関わらず、保守党政権はむしろ安定していたというのも興味深い点です。

著者の最も好きなキャラクターはチルダマス、ノレル氏のモデルがいるとしたら自分自身、と答えているのも面白い。ストーリーが進むにつれ、ストレンジがどんどんディープな世界にはまっていくのに対し、チルダマスはより思慮深く精彩あるキャラクターになっていきます。多くの登場人物が、あたかも魔術をかけられたかのように、徐々にぼやけた印象になっていくのですが、チルダマスのみ-著者の言葉を借りれば-subversive and independentな人物として描かれているように思われます。


コメントを投稿