Good Life, Good Economy

自己流経済学再入門、その他もろもろ

Christina Romer

2008-12-04 | Weblog
すでに旧聞に属するのかもしれませんが、先日オバマのeconomic teamの顔ぶれが明らかになりました。その豪華な布陣に、大いに期待する向きもあれば、船頭多くして...にならなければよいが、といった説も無きにしも非ずのようです。

そんななか、Council of Economic Advisers (CEA)のチェアに選出されたChristina Romerに注目する声が、そこここに聞かれるような気がします。HarvardのEdward L. GlaeserもNew York Timesに"Obama's Most Interesting Pick"というコラムを書いています。Romerについては、(著名な人ですから)名まえくらいは聞いたことがありますが、その業績については詳しく知りませんでしたので、ここでGlaeserのコラムを少々眺めてみます。

Romerが最初に注目を集めたのは、1980年代半ばに発表された景気循環の歴史についての研究に関してです。Glaeserによれば、Romerの登場以前は、FRBの創設など、経済政策立案能力の向上のおかげで、第2次大戦後は第1次大戦以前と比べ、米国のoutputのvolatilityが小さくなった(生産活動が安定化した)、という説(SummersとDe Longに代表される)が通説となっていました。しかし、RomerはGDPデータの新しい推定値を使い、第2次大戦後は第1次大戦以前と比べ、必ずしも景気循環が平準化したとはいえない、と結論づけました。この論文は、過去30年間のなかで、最も影響力をもった経済史学上の業績と位置づけられるようになりました。

Glaeserいわく、Romerの論文は「20世紀の間、経済政策は一貫して進歩してきた」という考え方に真っ向から挑戦するものです。最近の研究で、再びRomerは、1950年代から60年代にかけてマクロ経済政策の質が急速に悪化した、との見解を表明しています。

1980年代以降のRomerの業績は、金融政策の有効性に集中しています。Romerは(というか、DavidとChristinaのRomer夫妻は)、FRB議事録の精読を含む新しい分析手法を使い、Milton Friedmanの「monetary contractionsは持続的な失業の増加をもたらす」という説を裏付けています。また、大恐慌に関しては、ニューディールではなく、貨幣供給の拡張が回復の決め手となったという議論を展開しています。

これらの業績からGlaeserは、(1)不況対策としては、金利引下げが、財政出動より常に効果的であり、(2)財政政策は、迅速かつ巨額でなければ効果を発揮しない、とのimplicationsを導いています。

これで米国の政策当局はBernankeとRomerという、大恐慌研究の泰斗2人を得たことになります。Bernankeに対しては、かなり厳しい評価も出ているようですが、彼らの研究成果がどのように生かされていくのか、注目したいところです。