せかいのうらがわ

君と巡り合えた事を人はキセキと呼ぶのだろう
それでも僕らのこの恋は「運命」と呼ばせてくれよ

王子に会えないシンデレラ

2007-08-15 10:56:02 | お題
彼が殺された。彼が、敵に殺された。
運ばれてきた彼の死体は冷たくて、でも綺麗で、生きているみたいだった。今に起きだして、嘘ですそんな顔しないでさくら、なんて甘い声で呟いてくれるんじゃないかと半ば半分以上期待した。でも皆何も言わない。一緒に出て行ったはずの山本も、ごめん、なんて謝った。どうして謝るの?彼は生きてるんでしょ?ねぇ、誰か。誰か冗談だって言ってよ!!
発狂した私にリボーンは無言で銃口を向けた。彼の襟ぐりを掴もうとした手は獄寺に捕まれて、泣きすがろうと思った腕は山本に羽交い絞めにされた。取り乱すんじゃねぇよ。リボーンの冷たい言葉が脳天に突き刺さった。でもでもでもでもでも、二日前彼は大丈夫だと笑っていた。大して危険な仕事じゃないと言っていた。そしていつものようにキスをして去っていったんだ。そう、いつものように。いつもじゃなかったのは帰りだけ。いつもなら多少怪我していても血が付いていても真っ先に私に会いに来てくれたのに、今回は違った。暗い顔をした山本の方に青い顔で乗っけられて一言も話せずに帰ってきただけ。そうそれだけ。それだけでもう私は彼と会えないのだ。信じられなかった。信じたくなかった。
背筋がゾッとして、嗚咽のような、叫びのようなものが込みだそうとした瞬間、目の前から全てが消えた。次に見えたのは家。女の子らしいごく普通の家。手元には、鈍い色をしたバズーカ。目の前には、昔のイーピン。

「・・これは、十年前の」
「(転んだ拍子に爆発したんだよ!)」

前は理解不能だった言葉も今では理解できる。どうやら私のドジらしい。数年前にこういうことがあったような、なかったような。そうして首を傾げているイーピンを見て、ふと思い出した。
この頃の彼はまだ、生きている。馬鹿でも餓鬼でも、私の愛しい恋人なのだ。

「ごめんね、イーピン!私、行かないと!!」
「(何処へ?!)」
「ランボのところ!」

きっとボスの所だろう。服装や髪型はぼろぼろ。今まで暴れていたしあそこはイタリアだから靴なんて脱いでいなかった。山本に捻り上げられた腕がまだ軋むし、獄寺に捕まれた手首は青くなっていた。それほど必死に私を止めたかったんだろうか、(どうして?)

「ボス!」
「う、わっ!あれ、さくら・・の、十年後?!」
「ランボ、ランボは?!」

そこにはボスもフゥ太もビアンキも獄寺も山本も、ハルも京子もリボーンもディーノさんも居た。だけどランボだけが居ない。未来のように死んでしまってはいないだろうか。こちら側で死んだから向こうで死んだということはないんだろうか。嫌な汗が頬を伝った。

「ランボ?それなら、さっきママンと一緒に出て行ったよ」
「そん、な」

私がこっちに居られるのは五分間だけなのだ。もしもこの先私が十年バズーカを爆発させたりなんかしなかったら、もう私はランボには会えないのだ。そんなの嫌だ。ランボ、お願いだからもう一度だけ会いにきて。そして別れを告げさせて。

「ガハハー!ランボさん今帰ったもんねー!」
「あ、ランボちゃんおかえり!」
「ただいまー」

聞こえた声にかたかたと私を嘲笑うように震える足を叱咤して立ち上がった。最後のチャンスだった。リビングを抜けて廊下を曲がった。


「おい、どこに行くつもりだ!」
「・・・っ!!!!」

途端目の前に広がったのはまた彼の居ない今。悔しさと苦しさで吐きそうになって私はしゃがみ込んだ。獄寺の声が背中を突き刺した。今に悲しみで翼が生えてしまいそうだった。なんで、なんでなんでなんで。そんな当たり前の疑問が頭を過ぎった。

「ラン、ボ」
「・・戻った、のか?」
「もう一度会いたかったのに。おやすみって、さよならって、ありがとうって、言いたかったのに。ランボどうして、言わせてはくれないの」
「・・・戻ったみてーだな」

たったそれだけの願いさえ叶えさせてくれないなんて、神様はマフィアより残酷。
リボーンの静止の声なんて私には届かない。止めるなら死んでしまったランボを止めて。



白薔薇赤薔薇に変わる



――
(王子に会えないシンデレラ)
それでも時は来て、魔法は解ける。

間違っちゃいけませんけど題名は白薔薇が以下省略(笑
ていうか死にネタばっかか死ね早瀬お前が死ね早瀬。