和製ウィザードリィへの確執という名の恨み言・7

2010-10-24 22:01:07 | ゲーム
RPGのバグは付き物。大作だろうとシンプルだろうと関係ない。
それを踏まえて。
サマナーとか初代エンパイアとかのバグはひどすぎる。これは制作期間が足りないとか開発環境が苛酷とかいうんじゃなく、単純に技術不足なんじゃないか?
エンパイアはバグが無ければまだ遊べるらしいが、サマナーはバランスが崩壊しているにも関わらず簡単らしい……なんじゃそりゃ。

ウィザードリィの開発者、ロバート・ウッドヘッドは偉大な人物だった。
ウィザードリィはD&Dをトレースしただけのゲームではない。TRPGから必要な部分だけを抽出し、ついでにサムライやニンジャやクイジナートなどの趣味を叩き込む。何よりバランスが見事だったからこそ、コンピューターRPGという一大ジャンルを築き上げることができた。

移植を行った遠藤雅伸もすごい人物だった。氏はウィザードリィとあまり関係ないところで国産RPGの始祖「ドルアーガの塔」を作った大人物である。インタビューで答えてたウィザードリィを移植の経緯(アスキーから話が来てウッドヘッドが「移植は不可能」とか言ってたとかいう話)はどこまで真実か疑わしいが、原作の尊重と同時に、優れたビジュアルと音楽、プレイしやすさを最大限に考えた移植はウッドヘッドからも絶賛された。
クリエイターの格が違った。一流のRPGを作れる人間が一流の原作を移植したのだから、そりゃ面白くて当然だった。

いや、たぶん徳永剛だってそんなに無能な人じゃないよ。
ただ自分の名前を出しちゃったのが彼の失敗点で、残念ながら氏はウィザードリィの世界を勝手に滅ぼす権利を持つほど人気のあるクリエイターではなかった。
遠藤雅伸がウボナサム・オドネ王(ひどい名前だ)とかいう名前で滅ぼすのならまだ多少は受け入れられる……わけでもないか。

アガン王のストーリー:
外伝3は新種族と新職業を追加し、さらに迷宮の外の世界を冒険する。ゲームボーイでよくここまでやったという意欲作である。
それだけの変化を起こすストーリー上の裏づけとして、旧シリーズより未来の物語となっている。リルガミンの街は滅び、守護龍も魔除けも力を失っている。それはさておき謎多き国王「アガン」の仮面を外すのが冒険者の当初の目的なのだが、その過程で滅びた街を探索することになる。
ちなみにリルガミンを滅ぼしたのはアガン王であった。
ネタバレ:ラスボスはアガン。


エンパイア(古の王女)だけはプレイした:
まあ、辛いゲームだった…
ひたすら単調で苦痛だった記憶しかない。迷宮がオートマップ前提なのか非常にいやらしい構造になっていて、魔法の種類がやたら多くて属性も多くて混乱する。
種族ごとに相性が設定されているが、どんな組み合わせでも大抵マイナスになるのでパーティは同じ種族で固めたほうがマシになる。ドワーフとエルフで仲悪いから共存できないというのは辛すぎる。で相性を何とかするためにハーフエルフというしょうもない種族を入れることになるが強い種族が増える後半はハーフエルフ前提みたいだ。
そして新職業の「狂戦士」。簡単に言うとカイエンの必殺剣みたいな技を使える。#6の新システムを否定した結果ファイナルファンタジーになったでござるよ。
もっともバグはそんなに致命的なのは無く、これでもまだ遊べるほうらしいのだが。
エンパイアはシリーズを重ねるごとに改善しているというが、もう一作だけで僕は無理だった。
これはただ古いシステムを使っただけのRPGじゃないか、と。

それにストーリーも、なんというか。
二次創作のために年表を作ってくれてる人がいたので参考にリンクするが。
「首都カシナート」という単語が出て来るだけで頭が痛くなる。さんざんフードプロセッサーだと言ってきたのに、この英語圏ではネタにしか見えないオメガ恥ずかしい名前を採用する理由とは、いやいやフードプロセッサーじゃなくて格好いい武器なんですよというアピールなんだろうが、別に街の名前でやる必要はないんじゃないか。
で、リルガという王女が出て来る。どうもこの王女の名前を取って将来は街の名前をリルガミンと改名してくださいという誘導的配慮のようだ。他にも何かギルガメッシュとか出てくるので、こいつらが将来の店の名前になるのが決定されているようだ。
断っておくが、このゲームはウィザードリィの版権を完全には取得していない。
……いいさ、どうせアガン王に滅ぼされるDESTINYだ。
未来を決めてしまったアガン王と、過去を勝手に決めたエンパイアとどっちが正しいという問題でもないだろう。

PSのエンパイアはまだいいほうとしても、有象無象シリーズについてはアガンくらいなら越えられるんじゃね?って気持ちでウィザードリィ作っちゃったんじゃね?
だが間違いなくファミコン版ウィザードリィは「極めて優れたクリエイターが作った傑作」であって、ただの古いシステム、古いプログラム技術のRPGでは決してない。
そのことを理解できない人たちがウィザードリィを作ろうとして、やっぱり作れなかったから今の惨状がある。
09年の時点で、Wizardryのブランドは死んでいた。

和製ウィザードリィへの確執という名の恨み言・6

2010-10-24 17:13:00 | ゲーム
ファミコン版のプログラムは大変高度なものだが、致命的なバグがあった。参照するパラメータを間違えていて味方のACが無意味な数値になっている。
TAS氏(ロックマン2TASの解析などで知られるTaoTao氏)による詳しい解析が公開されたのは2008年の末のことで、FC版の発売から21年が経過していた。それまでも計算式が不自然であることに気付いているものはいたようだが、正確なところまで知っているものはいなかった。
『II』以降は修正されているので、知っている人は知っていたのかもしれないが。
このことによって、最高傑作だと思われていたファミコン版『I』の評価が急激に揺らいでいるらしい。困ったことに、ACが機能していないにも関わらず何故かバランスは取れているのである。味方のACの代わりに敵のACで判定しているため、敵が強くなれば味方も強くなるというシンプルなロジックがあるからだ。
逆に言うと2Fや3Fの毒モンスターはどれだけ装備を固めても強い。
これは知らないほうが幸せだった。

この手のミスはNASIRの専売特許だと思い込んでいたが、そうではなかったようだ。かなり最近のゲームでも計算式のミスは見られる。

ゲーム進行に支障をきたすタイプとは違う、計算式関連のバグについて、知ってる例をいくつか。

FF1:ストライなど、いくつかの魔法に効果が無い。味方が使うデスペルには何の効果も無いが敵が使うデスペルは機能している。「知性」に何の効果も無い。敵の打撃属性に「敵本人の弱点属性」が参照されているため、炎に弱いゾンビ系のマヒ攻撃は炎属性になっており、アイスアーマーで防げる。他にも不可解な点が多数ある。

FF2:やはりバリアやデスペルの魔法などが機能していない。
あとABキャンセル。

FF3:戦闘中に装備変更などをすると強化系魔法の効果が消える「ウインドウイレース」と呼ばれる現象が知られている。3のプロテスとヘイストは非常に(異常なレベルで)強力なのだが、このバグのおかげで活用しにくい。

FF5:「ちからのくすり」はゴブリンパンチの攻撃力しか上がらない。

FF6:魔法回避率が物理攻撃の回避率を兼ねてしまっている。魔法回避の高い装備をそろえれば物理相手にも無敵になる。物理回避率のほうは一切機能していない。
有名なバニシュデスは実は仕様であるという解釈がある。バニシュ状態だと全ての魔法が効くのは「仕様」であり、ミスなのはボスにバニシュが効く設定のほうなんだと。

FF7:防具に設定されている魔法防御が機能していない。

WIZ外伝1:武器のダメージの設定にミスがあり、固定部分が参照されていない。たとえば7~13ダメージの設定(2~8+5)は実際には2~8になっている。このミスにより、事実上の最強武器は中盤で手に入るファウストハルバード。
また敵のヒーリングの効果が異常。HPが回復するはずが、ターンごとにレベルが上がる設定になっている。これは外伝3まで共通なんだと。

世界樹2:いくつかのスキルの効果がおかしい。レンジャーのフォーススキルがマイナス効果。あと敵にも耐性を付与してしまうダークハンターバグ。

TOD2:称号バグ。成長値のボーナスがオーバーフローしてレベルアップ時の成長がマイナスになる可能性がある。

TOD(PS2):術防バグ。相手の術防御が味方の術防御で決まるので、術防御を低く保ったほうが大ダメージを狙える。DC版で修正。
ところでPS版の空気王が初期レベルで加入するのはバグみたいなもんだと思う。

簡単なミスもあれば「うっかりじゃ済まんぞ」的なものもある。場合によっては余計な知識を手に入れたばかりにゲームの攻略方針そのものが揺らぐことになる。
RPGのダメージ計算式などは詳しく画面に表示されないので、デバッグ過程で発見しにくいのだと考えられる。
こう考えるとドラクエは安定してる。ヒャダインの習得レベルくらいだ。

ということで、ウィザードリィが悪いわけではない。RPGがみんな悪いんじゃ。
そのことを踏まえて次の記事に続く。