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うーまんどらいばー<リンダ>

2019-01-10 02:12:33 | うーまんどらいばー
前回
うーまんどらいばー



「…」
「…?」
「…ん?」



「旦那がいない…」



「どこに行ったんだろ?」

「あなた」



「キャ!」

 わたしの不安は的中した。わたしの旦那とわたしの姉が重なり合ってるところを見てしまったのだ。わたしはショックだった。ショックのあまり、おしっこがちびれそうになっていた。ああどうしよう。このままじゃおしっこがちびれちゃう。わたしはそっとトイレに向かった。



 そしてわたしは、泣き崩れた。



アンルイス リンダ

リンダ
クリエーター情報なし
PASSION








 わたしはあの光景を見てから、姉と旦那から逃げるように外へ飛びだした。そして悲しみが込み上げてくる中で、わたしは営業車で駆け巡っていた。



 その時、誰かがこちらを見て手をふっている。

「お客さんだ」



 停車すると、わたしの親友だった。



「あら」

「あら、何ブラジャーでブラブラしてるの」

「あなたこそ、ブラジャーで」



「わたしたちラブラブね!」

「うふふ」
「かけ違ってる」



「送ってってくれる?」

「ええ、どうぞ」

「おじゃましまーす」



 わたしは親友を乗せて営業に走った。ブラジャー姿でもわたしは駆け巡る。駆け巡るウーマンドライバーなのだ。



「ねえ、リンダ?」



「わたしリンダじゃないわ」

「リンダじゃなかった?」



「そういえば、わたし誰だっけ?」
「ちょっとお母さんに聞いてみる」

「お母さんに?」

「お母さんに聞くのが一番よ」

「意味わかんない」



「もしもし、あたし」
「あたしよ、あたし」
「そそ、ミヨコ」
「ミヨコよ」
「元気かって?」
「それがねー、夫が浮気しちゃって」
「離婚しようかと思ってるの」
「それで離婚に慰謝料が必要でしょ?」
「でもいま、お金がなくて」
「えーん…」
「すぐにでも離婚したいの」
「明日にも慰謝料払わないと」
「あたし離婚できなーい」
「えーん…」
「泣いてる?うんうん、大丈夫」
「お金さえ払えれば」
「お母さん、今からあたしの口座に振り込んでくれる」
「え?振り込みどうするのかって?」
「近所にATMがあるでしょ?」
「今から向かって、切らないでよ」
「すぐにね」



「お母さん、振り込んでくれるって」
「わたし、ミヨコだった」

「離婚するの?」

「わたしたちダメみたい」

「ねえ?このタクシーあなたのタクシー?」

「そうよ」

「あそこに写ってるの、あなたの顔写真だよね?」
「カードに名前書いてあるわよ」



「ブリ子」
「あ、わたしブリ子だったわー」
「ごめん」

「今、電話してたの何!」




「あ、そこで降ろしてもらえる?」

「承知しました」

「じゃね」
「ブリ子、男なんて捨てちまいなよ」
「元気だしてね」

「うん、またね」



「バイバイ―イ」

「バイバイ―イ」



「あの娘、誰だっけ?」
「ま、わたしの親友なのは間違いないわ」



 わたしはその日、ブラジャーで駆け巡った。



 ブラジャーで何人もの客を乗せて、その日は夜通し営業車で駆け巡ったのだ。



 あくる日、わたしは旦那を問い詰めることにした。問い詰めて慰謝料を旦那に叩きつけてやるのだ。


 
「あなた!」
「浮輪してるでしょ!」

「そうだよ」

「なんで浮輪したの?」

「これは結婚浮輪じゃないか」



「結婚浮輪」

「キミのもあるだろ」



 わたしと彼の結婚式の日、ふたりで浮輪をつけてゴールインしたのだった。



 あぶないあぶない、その手には乗らないわ。彼に白状をさせ、わたしは慰謝料を叩きつけてやるのだ。



「あなた…」

「なに?」

「今日は何してたの?」

「暖炉の前で暖まってたよ」

「一日中?」

「一日中、暖まってたよ」

「あなた!」

「なに?」

「サラリーマン、お疲れ様」

言えない



「おかえりー」
「ご飯できてるから」

「そう」

「お風呂も沸かしてあるから」

「そう」



「しらじらしい」

「どうしたの?」



「あなた!」

「なに?」

「う、う、浮輪」
「してるでしょ」

「そうだよ」

「じゃなくて」
「浮輪のことよ」

「はあ?」



「うーん、もう」
「浮輪が邪魔で浮気が言えない」



つづく

次回
うーまんどらいばーWOMAN


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うーまんどらいばー

2019-01-07 14:31:09 | うーまんどらいばー


 わたしはタクシードライバー。少女時代からレディースに入り、原チャリで何度も免停を経験し、現在は二種免許を取ってドライバーをしている。



 ドライバーは一日中、街中を駆け巡る。男であっても女であっても駆け巡る。



 わたしはレディースにいた頃から駆け巡っていたが、ドライバーはとにかく駆け巡るのだ。



 駅で待機していると客がくる。客がくればわたしは乗せる。



「お客さん、どちらまで?」

「あの、ソ、ソソソ、ソープランドまで」

「どちらのソープランドですか?」

「あああ、あの、この街、初めてなので」
「運転手さん、ソープの場所、教えてください」

「承知しました」

 ドライバーの仕事は楽しい。わたしにとって天職だ。わたしも客も楽しさを求め乗車し、観光地案内やグルメなお店探し。そしてソープランド巡り。わたしは客の要望に応えるためにおすすめの場所まで駆け巡るウーマンドライバー。

アンルイス 恋のブギ・ウギ・トレイン

恋のブギ・ウギ・トレイン
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「お客さん、こちらです」

「ありがとうございます」

 レディース時代のダチが働いているソープランドを紹介してやった。



 けど、わたしは男が嫌いだ。もの心ついた頃から男という人間が嫌いだった。レディースに入ってた頃は、無我夢中でレディースの仲間とで男たちとタイマンの日々。あの頃、わたしはレディースが楽園に思えた。



 「はあー今日の仕事は終わりだ」



 わたしは仕事を終えると急いで家に帰るのだ。



 家には旦那が待っている。旦那?どうして、わたしに旦那がいるかと?わたしにだって旦那ぐらいいるわよ。



 男嫌いだったわたしを唯一恋に落としたわたしの旦那。彼はサラリーマン。ある日、彼はわたしのタクシーに乗車し、ハプニングバーを訪ねた。わたしはハプニングバーがわからず、ラブホテルの前で止まった。その時、彼との恋が始まり、そのまま彼とゴールイン。男嫌いのわたしにハプニングが起きたのだ。


 
 わたしは旦那が待つ家に帰ることがなによりの幸せ。

「ただいま、あなた」

「おかえりー」

「今日は何して待ってたの?」

「いつものように暖炉の前で暖まってたよ」

「まるで子猫ちゃんねー」
「一日中、暖まってたの?」

「そうだよ、一日中」

「サラリーマン、お疲れ様」

 わたしの旦那はとてもやさしい。けっしてわたしに怒ったりしない。家ではいつもジャージを着ていて、暖炉の前で一日中ぬくぬくしているサラリーマンなのだ。



 そんなわたしの家にも天敵がいる。



 わたしの姉。旦那がわたしの家に来てからも、家から出ていかないでいる居候なのだ。



「ご飯先に食べたから」

「そう」



「あなたたちの分も作ってあるから、早く食べて」
「あと、お風呂沸いてるから」

「そう」



 姉はわたしと違って男好きで肉食系女子。わたしの居ない間に旦那を誘惑してるんじゃないか?と思うと、運転中もおちおちと眠れない。
 
「それがわたしの不安な種なのだ」



つづく

次回
うーまんどらいばーリンダ

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