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エイプリルに恋して

2005年01月11日 | ’05年読書日記
舞台は1920年代の英国。夫の浮気から別居する事になった上流階級の婦人と、その14歳の息子。移り住んだ先は、今までの世界と似ても似つかない、貧しい崩れかけた古い家。
そこで14歳の息子は耳の不自由な少女、エイプリルと出会い、恋に落ちます。

…と書きますと、とっても暗いお話のようですが、そんな事はありません。
このご婦人、生まれも育ちも上流階級で、世間知らずのお嬢様のはずなんですが、ほとんど無一文に近い状態で夫に家を追い出された後、移り住んだ先で周りの住民たち(労働者階級の人々)を次々と味方につけ、「前のような暮らし(上流階級)をする」と言う目標に向かって確実に前に進んでいきます。

彼女は賢く、上品で人を差別せず、真実を見ようと努力します。
最初は床掃除の仕方すら知りませんが、ふとしたきっかけからエイプリルに掃除、料理の仕方を習い、それをいやいやで無く楽しげに習得していきます。

彼女の言葉でとても感銘を受けた箇所があります。
以下はその抜粋です。

「男というものは女の人柄ではなく、その評判を重んじるものだわ。それで、私たち女が自分の考えを持つ事を嫌うんだけど、だからこそ女は自分の考えを持つ事が大事になってくる…私がエイプリルに教えたかったのはそういうことなの」
「残念ながら、実際に私たちは評判に左右されながら生きていかなければならない。公平とも限らないけど、それが現実なの・・・・」

この、主人公の母親は、本当に魅力的なキャラクターでした。

…と、お母さんのことばかり書いちゃいましたが、この、主人公とエイプリルの関係もなかなか素敵です。
…と言っても出てくる人物一人一人が人間くさく、どろどろしたところも見せたりするので、題名から連想される様な「淡い初恋物語」とは、似ても似つかない本作です…。


でも、人間くさいからこそ、登場人物が生き生きしてくるのだし、だからこそ魅力的に映るのだと思います。

この本、気に入ってしまったので、同じ作者の別の本もあったら探して読んでみたいと思いました。

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