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「ぼくはお城の王様だ」 スーザン・ヒル*幸田敦子 訳   講談社

2004年12月06日 | ’04年12月読書日記
表紙のデザインとタイトルから、子供向けの楽しいお話かと思いましたが、大はずれでした。
主人公は11歳の少年チャールズ・キングショーです。
ある事情から、キングショーと彼の母親は、キングショーと同じ年頃の少年フーパーと彼の父が住む古びた館へと移り住んできます。

表向き、キングショーの母親が、フーパー家の家政婦として働く為の引越しでしたが、実際はキングショーの母親とフーパーの父親は互いに再婚相手を探していたのであり、二人の気持ちが固まった時、キングショーはある決意をします。

フーパーはキングショーを徹底的にいじめぬき(しかもかなり陰湿な方法で)キングショーはそれに耐えながら実際は弱虫のフーパーの世話をしたり、じっといじめに耐えたりしているのですが、周りの大人は彼の状況を全く理解していません。


::::感想::::

読んでいくうちに暗い気分になってしまいました。
キングショーのおかれた状況には全く救いが無く、実の母親も、フーパー氏の妻の座を得ると言う事しか頭に無く、息子の事をひとつも理解していません。
ここまで愚鈍な母親って、実際にはいないと思います。
しかもこんな母親に育てられたチャールズが、どうしてこんなに思慮深くて我慢強いのでしょう?
最後の最後まで、母親は息子の事よりも自分自身の幸せを守るのに自分のすべての神経を注ぎ込むのですが、この母親に限らず、人間はここまで残酷ではないと思います。
残酷な面もありながら、善良な一面やその他、数え切れないくらいいろいろな顔を持っているのが人間ではないかしら…。
人間の残酷な面、冷酷な面を思いっきり拡大させて、それをキングショーの母親と、エドマンド・フーパーに演じさせているように感じました。
また、なぜ、フーパー少年はキングショーをいたぶる事にこんなに執着するのかが分かりません。
理由が分からないので、非難する事も共感する事も出来ず、
「なぜ彼はこんな事をするんだろう??どんなメリットがあるんだろう??」
…というところまでで感想は止まってしまいます。

気分が暗くなったので、今度読む本は、面白おかしくて笑っちゃうやつにしたいです。

*****
◆少年2人は互いに名字で呼び合っていますが、あとがきを読むと、英国の、男子全寮制私立学校 ではそれがならわしなんだそうです。

◆本書「I'm the king of the casle」で、スーザン・ヒルは1971年サマセット・モーム賞を受賞、
 英国では世代を超えて読みつがれ、「今やひとつの古典となっている」のだそうです。

コメント
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