定期的に通る道があります。明治神宮前駅を降り、明治通りを渋谷方向へ。目的地までの10分弱の間で、たいてい2つの行列が見られました。
1つは『ASOKO』。ここは年末の日曜日でもすでに行列は消滅していましたが、なぜか行列客を仕切るパーテーションだけは残っていて哀愁を漂わせていました。運営会社の業績不振で閉鎖が決まっているというニュースを見ましたが、店内はわりと混雑していました。
出店当初は、FLYING TIGER COPENHAGENとも比較され、負けない行列を作っていたのですが、FTCは行列こそないですが、首都圏だけでも16店舗まで店舗数を増やしています。そもそもの企業力が違うといえば、それまでですが、本来雑貨店というのは企業力で勝負をするよりも、商品力と売り場演出力が勝ることが重要だと思うのです。そういう意味で、商品力もFTCかなと思うのです。どこがどうというと困るのですが、あくまで直感として。
絶対に欲しい商品は、いずれの店舗にもないのですが、「とりあえず買っておくか」「まあ、これでもいいか」と思える商品がFTCにはあり、その商品を見つけやすいと思います。あくまで表参道のFTCと原宿のASOKOの比較でしかないのですが、売り場面積はそれほど違いがなさそうで、価格帯も明確にどっちが高いとか言いきれないです。でもFTCで物を買ったことは2回くらいありますが、ASOKOは1度もない。
1つは店内動線です。ASOKOは2層、FTCは1層で。FTCは悪名高き逆進禁止で、くまなくすべての商品を見せる動線が設定されています。まったく顧客本位ではないので、評判はよろしくないですが、表参道・原宿あたりで行列をしてまで店に入ろうという人には、この程度のことは素直に受け入れられてもらえます。「たかが安物雑貨店であり得ない」と怒り出す人は、端からターゲットにしなきゃいいし、私のように勝手に逆進する客を店員がスルーしたところで、店内でトラブルを起こすような頑固な客はいません。電車の中ではないのです。
こう割り切って、このルールを最初に作ったなら、さすがのマネジメントと思います。百貨店(古くは呉服店)の接客マナー、顧客対応の常識が土台となり、その中にアメリカから輸入されたGMSやファストフードのオペレーションを取り入れてきた日本の小売店主の常識には、顧客の行動を店独自のルールに合わせてもらい、嫌なら来なきゃいいという発想はあまりない。あるとすれば、頑固おやじが店主の飲食店くらいでしょう。
しかし、この方式は今のところ功を奏しています。直感的に欲しいと思ったとき、買い物かごに入れる率は、逆進ができる(自由に見て回れる)店よりはるかに多くなります。多くの人はわざわざ表参道・原宿に来ている人たちです。近所に住むおじさん、おばさんではありません。何か一つくらい買って帰らなきゃと思うに違いないです。それで商品がまったくダメなら、リピーターを生まず、やがて撤退となるでしょうが、そこまでひどくない。奇をてらうカテゴリーではなく、ふだん何気なく使うものがほとんどなので、そのデザインが近所のスーパーのものより優れているように見えれば、買って後悔することもないし、深く後悔するほど高い物を売っているわけではありません。その点でも、ASOKOの方が少し奇をてらっている感があります。ふだん何気なく使う商品のラインナップがFTCより少ないのです。
この2店舗とは異なるコンセプトで、いまだ明治通り沿いに行列が絶えないのが『水曜日のアリス』です。「不思議の国のアリス」のキャラクター雑貨ショップですが、開店して1年くらい(?)経つはずですが、いまだに朝には入店整理券を配っているそうです。ところが奇跡的にまったく行列がない時間帯に遭遇し、中に入ってみました。
店内が狭いから、たくさん人を入れられないということは入ったらすぐにわかります。不思議の国のアリスの物語風内装は、よく見ると安っぽいですが、演出としてはありです。入口が洞穴に入るように小さい(かがまないと入れない)のも、物語の世界観の体現という意味ではいいのでしょう。どうせなら、入場制限のために前に立っている警備員さんの制服も警備会社のものではなく、白うさぎのコスプレなら面白いのですが、そこはディズニーランドではあるまいし、というところなのでしょうか。
ワンコンセプトショップの成功には、そこでしか買えない、体験できないという気持ちにさせる希少性の仕掛けをいくつ作れるかといったところだと思います。それにしても、ここのところムーミンといい、ピーターラビットといい、懐かしいおとぎ話や絵本の世界が注目を集め、ビジネスに生かされています。新しいキャラクターもどんどん生まれているはずなのですが、嗜好が多様化しているのでしょうか。一言で「かわいい」と表現する先に描かれている絵は様々なようです。