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ensemble マーケティングの視点

日常生活と趣味を綴る個人的散文です。タイトルに反し、仕事に関する話は書きません。

多数決の限界点

2017-02-02 23:33:44 | 国際・政治

アメリカで特定のイスラム教の国7カ国のビザ発給を中止して問題になっています。反対のデモが世界各地で起こっていると報じられるなか、アメリカ国内の世論調査では、この大統領令を支持する割合が多かったといわれています。調査をするまでもなく、トランプ大統領は選挙戦の公約を守ったわけですから、彼の支持者分はこの賛成に回らなければ筋が通りません。

このニュースはネットで見たのですが、それに対するコメントか何かに日本で韓国人の入国禁止の是非を世論調査したら、賛成が上回る可能性があるのではないかと書かれていました。確かに慰安婦像やその他諸問題でヒートアップしている最中に、万一そんな世論調査をすれば入国禁止を支持する人が多数を占める可能性はゼロではありません。でもそんなことはできない。日本に住む外国人のうち大多数を占める国の人たちを国籍だけの基準で、仮に外から来る人だけだとしても、一時的だとしても、入国禁止なんかにしたらどんな社会になるのか、どんな混乱を生むのか。戦争になるかどうかはわからないけれども、平和で秩序ある社会の実現から遠のくことだけは確かです。

多数決は民主主義の原点ですが、社会には多数決で決めてはいけないことの方が実はすごく多くて、為政者や企業のリーダーはみずからの哲学や良心、憲法、社会的常識(常識=数が多い方ではない)に照らし合わせて、政策や方針を意思決定しているのです。それができるからこそ、リーダーであって、できなければただの世論のあやつり人形でしかない。

たとえば、1億円を超える財産を持つ人から、超過分をすべて没収して、中間層を含めて全員に配分するといった「いきなり稚拙なレベルでの社会主義ですか」みたいな政策に対して多数決をとれば、もしかしたら賛成多数になる可能性もあります。総資産1億円以下の人の方がはるかに多いのですから。でもそんなバカなことは通らない。

ポピュリズムがなぜ危険なのかは、まさにそういうことです。当たり前や正しいことが賛成多数になるとは限らない。しかしその結果をかさに着て、社会を後戻りできない危険な水域まで落とすことができるのです。その先にある社会まで想像して世論調査で賛成としている人は少なく、彼らが気づいたときには遅いということです。

この政策に反発した(利用した?)イスラム過激派によるアメリカ国内でのテロを誘発し、その行為を大義名分にしてアメリカはまた戦争を仕掛けることもできます。第一に犠牲になるのは、対象国の市井の人かもしれませんが、アメリカ人もまた社会不安を抱えて生きなければならないし、自分やその身内からテロの犠牲者を出すかもしれない。米軍関係者や治安当局者はさらにリスクが大きいといえます。


大国でも小国でもそこに生きるひとりはひとりでしかないということ

2017-01-31 20:56:41 | 国際・政治

トランプ大統領の日々の政治判断が国際社会を不安に陥れ、連日ニュースになっています。貿易や難民の問題はあらためて書きませんが、この前エルサレムに行ったので、今後トランプ大統領がやりかねない危険なジャッジについて触れてみたいと思います。

エルサレムはいわずとしれた3宗教の聖地で、イスラエルとパレスチナ、アラブ諸国の帰属争いの中心地でもあります。そこにあるのは、政治的緊張状態ではありますが、シリアのようにテロ集団に占拠されているわけでも、内戦状態にあるわけでもなく、日常は一定の平穏と美しい街の景色が保たれています。もちろん日本の都市における平穏とは異質のものです。治安部隊(警察や軍隊)が街を警備し、エルサレムと隣接するベツレヘム(パレスチナ自治区)の間には検問所があります。しかし、ベツレヘムの産業が乏しいこともあり、その検問所を通り、毎日エルサレムに通勤している人も大勢いるのです。

※エルサレム旧市街地

 

ベツレヘムもまた、エルサレムを経由して訪れる観光客を多数受け入れ、外貨を得ています。ベツレヘムのレストランでは観光客のためにアルコールも用意されています。さすがにイスラエル産でなく、パキスタンからの輸入だったことに隔絶された何かを感じましたが、そこに暮らす人びとは様々な問題を抱えながらも、生きていくために政治的問題とは別の折り合いをつけているのです。

※ベツレヘム

「常時緊張状態の国」と「たまにテロの危険がある国」は別物です。安全志向の極端に強い日本人からしてみれば、どちらにしてもあまり近寄りたくない国かもしれませんが、たとえば最近テロが頻発していると聞くトルコには、今ではずいぶん減ったとはいえ、それでも頑張って観光客誘致をしている日本と同じくらいの数の外国人観光客が訪れています。もともとは観光大国だったのです。

人やモノ、情報が交流すれば経済活動を生み、その国の人の日常もまた一定の平穏を保てます。子どもは教育を受けられるし、少なくとも暴力的支配や日々降り注ぐ爆撃におびえることはない。それが戦時中や被侵略地の国との大きな差です。

トランプ大統領が選挙戦中、国際社会がイスラエルの首都とするテルアビブから、イスラエルが首都と主張するエルサレムに米大使館を移すと表明していました。もし実行に移したら、アラブ諸国がそれを許容するわけもなく、和平はいっそう遠のき、この街や中東地域は常時緊張状態になる危険をはらんでいます。

大国でも小国でもそこに生きるのは、ひとりひとりの人なのです。トランプ大統領を生んだのは、彼がアメリカの権力者になることで、他国がどうなろうが、自分とは異なる信仰や政治信条を持つ人がどうなろうが、知ったこっちゃないというアメリカに住むひとりひとりの結合です。アメリカ人が愚かなのではなく、そういう人はどこにでもいるし、そういう人の方がはるかに多い。世界に住む圧倒的多数の人は、日々の自分の暮らしに精一杯であり無力です。

自動車をはじめとした自国内製造業を囲い込もうとするトランプ政権の政策を「いつの時代を生きているのだ」と、各国の知識人は嘲笑しています。それは確かにそうですが、その陰で中東を混乱させ、軍需産業による利益を最大化し強いアメリカを取り戻そうと考えているのだとすれば、笑いごとではありません。中東だけでなく、アメリカも含め、どの国に住むひとりひとりにとっても多大な犠牲と悲しみをもたらすものになりかねないのです。


都知事選は「女性の敵は女性」という定説を生かせなかった結果か?

2016-07-31 23:23:27 | 国際・政治

政治的な話は横において、あくまでマーケティングの観点から都知事選をみると、まさにタイトルのようなことが言えると思います。

都内に住み、選挙権もある私が、この2週間、出会った選挙カーは、上杉隆さんとマック赤坂さんのみ。しかも選挙カーだけで本人には遭遇していません。有楽町も銀座も青山も何度か通った覚えがありますが、まあ広い東京。そんなものです。結局、候補者に触れるのは、まずインターネットも含めてメディア、各戸に配られる選挙公報。選挙公報にも一応、目を通しましたが、泡沫候補も全員マスメディアが平等に取り上げるべきという意見は、必ずしも正しくないと思いますね。

短い選挙期間に熱を薄めるだけの人がほとんどですから。きちんと志と政策を持った3人以外の人は確かに気の毒ですが、供託金が安すぎるのか、どう考えても無理な人が大勢出すぎです。

それはともかく、女性が初の都知事となりました。決して女性に好かれるタイプの人ではないのに、まるで女性票が小池さんに流れたように分析するマスコミや評論家もいます。

確かに東京は、日本の中では女性が社会進出している都市です。女性がリーダーになることに違和感は薄いと思いますし、そもそもほかの道府県で女性知事はすでに出ているのだから抵抗はないという人は多いでしょう。しかもドイツ(つまり事実上EUのリーダーでもある)、イギリスの新首相、アメリカ民主党の大統領候補(勝算もある)と、主要国がどんどん女性リーダーを出している。せめて日本も首都の知事くらいは、と思う気持ちが働いてもおかしくはありません。

でもまだまだ日本は社会的には男性上位の国であり、女性自体がそれに甘んじているところもあります。若い人の中にも「夢は(ある程度裕福な)専業主婦」という人も少なくないといいます。働く女性の中でも、女性上司は嫌だと思う人、既婚女性と未婚女性の心理的な対立も本音ではあるのです。

ところが、そうした女性たちも含めて、保守系思想や政策を認める層の票が増田さんには流れなかったのはなぜか。

石原親子のオウンゴール(厚化粧発言や数々の攻撃)を敗因に挙げる人もいますし、それも一つでしょう。でも個人的に「イメージが悪いよな」と何よりも思ったのは、増田さんの知名度を上げるために、自民・公明党の女性部会や議員の奥さんまで引っ張り出して、どこかの室内で集会まで開いて候補者の名前を連呼し、それをマスコミに取材させたことです。テレビでは政策ではなく、そればかりが放映されました。

選挙カーが動いているときには、政策を語ると、公職選挙法選挙違反になります。だから名前の連呼は外でやればいいのに集会でやってしまい、それがテレビで放映されました。もちろん実際、その場では政策は語っているのでしょうが、そこにいる人は基本的に支持者なのだから、テレビを観ている人に余計なパフォーマンスは見せない工夫が必要だったのです。

これでは候補者本人も女性に囲まれてへらへら笑っている冴えないおじさんに見えてしまいますし、何よりも女性に敵対視されている(ある意味勝ち組と思われている)女性代議士や政界関係者たちが動員されて、岩手では行政手腕でも評判が良くなかったその冴えないおじさんの応援をさせられている。その姿に感銘を受ける女性は、専業主婦であろうが、働く女性であろうが、あまりいないと思いました。

それに比べれば、まだ多少いけ好かなくても、政策的にかなり右寄りでも(左寄りの有権者は違うでしょうが)、自ら先頭に立ってがんばっている女性の方にシンパシーを感じます。まだまだ少数派とはいえ、社会の第一線で男性と伍して働く女性にとっては、自分と重ね合わせる部分もあるかもしれません。

結局、与党は「たとえ強い与党でも、こうやったら選挙に負ける」という反面教師のような選挙をしてしまった感があります。さらに大きな力が働いていたのか、あるいは慢心か……。

イギリスの住民投票やアメリカ大統領選の例をみてもわかるように、直接選挙がイメージに流れるのは止められません。大国の国単位や都市部のように有権者が多いほど、無党派層や政策を熟知しない人が多くなるのですから、その傾向が強くなるのです。民主主義とはそういうものなのですから、本気で勝つ気なら、メディア戦略はもとより、有権者心理を動かすことは必要です。


リーダー不在の世界を生きる

2016-07-01 23:39:22 | 国際・政治

自分が大人になったときに「世の中に大人がいなくなった」と思うのは、いつの時代も共通だとは思います。自分が子どものころに想像するほど、大人にはなっていないからです。

それにしても、ここまで世界的に強いリーダー不在の社会になるとは驚がくです。アメリカ大統領選がヒラリーVSトランプの一騎打ちに決まり、史上最も不支持率の高い2人、消去法の選挙のように言われています。そして先の戦勝国であることを考慮に入れれば、西側では2番目の大国ともいえるイギリスは、キャメロン首相が世論に丸投げしたといわれる国民投票のあと、離脱派リーダーだったボリス・ジョンソン氏が党首選不出馬という冗談のような話になっています。

そして日本も都知事選のドタバタや盛り上がりに欠ける参議院選挙を見れば、よそのことを笑っている場合ではありません。

なぜ西側の世の中から強いリーダーが消えてしまったのでしょうか。政治の世界だけでなく、経済界、一般の社会でもゼロとは言いませんが、かなり減っていると感じます。

理由のひとつは、ある程度社会システムが出来上がり、リーダーとなるモチベーションが希薄になっているということがいえます。とことん上昇志向を持たなくても、リーダーになり得る優秀な人であればあるほど、そこそこの立場のほうが幸せに生きていけます。そこそこを望めば、仕事に人生を捧げる必要もないし、名前や顔が売れて息苦しい日々を送る必要もありません。家族に迷惑をかけることも少なく済みます。

出る杭をとことん叩く社会もどうかと思います。仕事ができない聖人君子より、多少の問題があっても仕事ができる人のほうがいいはずですが、SNSなどの過度な監視もあり、著名人は聖人君子でなければならないという風潮があるように思います。著名人だけではありません。たとえば公務員、特に学校の先生などはその洗礼を受けています。

確かに強いリーダーも行き着けば、独裁者になり得ます。完璧な社会システムがあり、フラットな組織の中で皆が自分の役割を果たしながら生きられれば幸せなのでしょうが、そんな理想郷は少なくとも今現在はありません。でも戦争もなく、ある程度自由に生きられると、これでいいと思ってしまいます。

今、話題の中心になっている西欧の国々は、若い人の宗教離れが進んでいるようです。確かに多くの国の教会が観光教会になっています。それがアメリカや東欧との大きな違いでしょう。宗教とリーダー論は無縁ではありません。現代社会において、宗教をかさにきたリーダーには危険なイメージしかありませんが、あまりに重しのない社会もまた危ういものです。


まだ駆け込めたふるさと納税

2014-12-28 22:06:44 | 国際・政治

ここのところ、ふるさと納税の報道が多いように思います。

来年度から寄付上限額が倍に 専門家注目の「ふるさと納税」は

確定申告書に専用様式=ふるさと納税、手続き簡単に―政府・与党

上限の引き上げなど、新たな政策がこの時期に打ち出される背景には、駆け込み納税への期待があったように思います。

会社員の人はあまり意識されていないかもしれませんが、控除対象になる自分が住んでいる地域の住民税は、前年の1月~12月までの収入によって決まります。前年の収入が多ければ、翌年の税額が多くなる。つまり、12月末までにふるさと納税を行っておけば、翌年の税金の控除につながるというわけです。

むろん総額での税金が下がるわけではなく、その分控除されるだけなので、「ふるさと納税+自分の住まいの住民税」が「本来払うべき住民税総額」を下回ることはありません。ただ、自分の住むまち(概ねターゲットは都市居住者)に普通に納税しても、何ももらえません(もちろんゴミを回収してくれるなど、住民サービスはあります)が、ふるさと納税なら特典がもらえることがあったり、自分のふるさとや応援したいと思う地域に貢献できたりするわけです。

それで私もつい乗っかってしまいました。

正直、地域の特産品にはそれほど興味はありませんでした。ふるさとへの貢献といっても、生まれ故郷も都市部なので、そこまでの思い入れはありません。それでも一応調べましたが、特典の一つがよーじやのあぶらとり紙だったので、興ざめしてしまいました。別にあぶらとり紙が悪いわけではありませんが、乾燥肌なので使いません。そもそもすでに東京のデパートにも出店している有名なよーじやさんの商品を使うこともなかろうとも思いました。自治体が拠出するわけですから、もっと無名な会社や特産品をPRすればいいような気がしますが、どうでしょうか。

で、何に乗ってしまったかというと「人間ドック」です。

これはいいアイデアだと思いました。まさか東京の病院で受けられるわけはないでしょうから、自治体からしてみれば来てもらえるわけです。納税者目線でいえば、東京で受けようと思うと、高額なうえ、有名病院や健診センターでは予約も大変です。ふつうは健康な人が行くものなので、旅行を兼ねられるのも魅力的です。さっきも書いたように、この時期に税金を意識するのは、会社員より個人事業主や私のような小さな会社の経営者ですから、会社で一律の健診もない場合が多いです。半面、病気で仕事を休むのは最悪なので、健康には気を使う人たちでもあります。

しかも、ここはクレジットカードで納税もできたので、まだ年内納税が間に合いました。

あまり特典が派手になるのはどうだろうという意見もあるようですが、自治体にも経営者感覚が必要という観点からは、他の自治体との差別化やPRは必要だと思います。多くの自治体から、選んでもらうアイデア勝負という点では、ある種の広報戦略、マーケティングでもあります。

ちなみに人間ドックを提供している自治体のことを今まで知りませんでした。思い入れがあるどころか、行ったこともありません。もっといえば、同じ長野県内の取材でお邪魔したことがある別の市と勘違いしたまま、納税してしまいました。東京からはより遠いのですが、北陸新幹線が開通する自治体なので、そのPRも兼ねているようです。