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遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

劇団words of hearts『春燕と手曳き、更には陰と光の抄』

2018-11-09 12:49:25 | 演劇を見てきた・TGR2018

2018/11/8

・大正時代、盲目の春燕に仕える手曳きが、ある事件をきっかけに大きな決断をする話。

・一応、ぼんやりめに粗筋を書いたけど、原作は谷崎潤一郎の『春琴抄』なのでわかる人にはわかる展開。

・舞台は春燕の自宅。三味線の師匠として自立しているので立派な造り。重厚さが作品の雰囲気にも見合っている。

・正面奥の木調の曲線部分が好き。正式名称があるなら知りたい。

・そんな舞台装置も、登場人物の見た目も衣裳も美しいし、余計な茶化しも最低限に留めているので、耽美な空気に安心して身をゆだねることができる。

・タイトルの「手曳き」も介護人って言っちゃうと台無しだし、意味の通る範囲で、うまく聞き慣れない、味のある言葉を挟みながら話を進めている。

・各登場人物の演技も、台詞に声色や抑揚をつけたり、構図に気を使ったり、やや様式的な方向に寄せている。

・小劇場系の演劇はどうしても笑いを求めがちだけど、別の価値基準があることを実感できる。

・そういう耽美な世界なので、人の見た目の美しさも大事。

・そのど真ん中にいる春燕が実際美しい。

・今は美しさにも多様性が求められる時代で、そのあたりの正解は未だによくわからないんだけど、とりあえずありがたいありがたいと拝むようにして見る。演じているのは飛世早哉香さん。

・温水元さん演じる旦那の、お金持ちなのに軽んじられているところがかわいい。

・今で言うところの共依存の話だし、「お前がそうしちゃったら、誰が彼女の面倒を見るんだよ!」というツッコミは、野暮過ぎて絶対しちゃいけないんだけど、個人的にはどうしても言いたくなってしまう。

・それこそ、谷崎と同時代の小生意気な若手作家だったら「現実逃避した芸術のお遊びだ!」と言うと思う。

・そんな好みが語れる段階まで、ちゃんと巧拙の部分はクリアしていると思う。谷崎潤一郎の世界で、ここまで造りこむのはかなり大変そう。

・場転の見せ方楽しい。演出さんも楽しんでたと思う。

・事後の二次創作がはかどりそうな感じもするので、誰か「その後の春燕さんと佐助さん」というタイトルでかわいいタッチのマンガを描いてほしい。

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札幌市教育文化会館 東京芸術劇場ルーツ企画『書を捨てよ町へ出よう』

2018-11-09 00:58:28 | 演劇を見てきた・TGR2018

2018/11/7

・寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』を、マームとジプシーの藤田貴大さんが上演台本を作成し、演出した舞台作品。

・ウィキで見てみると、表題作の最初は評論集だし、著者自身でシナリオも書いているし、舞台にも映画にもなっているから、どのジャンルの作品なのかよくわからない。ジャンル分けの意味もあんまりなさそう。

・藤田貴大さんの演出作品は初めてだけど、経歴を見れば、現時点で日本の劇作家、演出家の中でも最先端にいる一人ということでいいんだと思う。

・小ホールに入って、舞台を覆うイントレのパーツにわくわくしながら開演を待つ。

・ただ、始まってからは、言葉がなかなか頭に入ってこなくてちょっとウトウトしてしまう。

・たぶん演出的に超絶技巧の部分だと思うけど、生演奏と役者さんの台詞のリズムの良さも、ウトウト方向に働いてしまったような気がする。

・はっきりした筋立てがなく、コラージュのようにシーンをつなげていくタイプの作品は、どちらかというと苦手。

・数学のテストみたいに、出てきた完成品(答え)よりも、途中の製作過程のほうがスリリングなのでは…と意地悪なことを考えてしまう。

・ビジュアルの強さは圧倒的で、縦横高さ、広い舞台を完全に支配している。演劇というより巨大なインスタレーションを見ている感じ。どのシーンを切り取っても、印象的な舞台写真が撮れそう。

・特に白い壁にウサギを映すシーンが問答無用にかっこいい。イントレ3つ横に並べて簡易階段で繋げるところも好み。

・セックスが大量生産の工場でモノ作ってるみたいな感じ。

・なんとなく寺山修司には挑発的というか、猥雑なイメージがあったのでつくりのオシャレさに戸惑う。

・それでも、強引に又吉直樹さん作のコントをねじ込んできたり、その又吉さんと詩人の穂村弘さんがスケボーで遊んでいる謎の映像を流してみたり、結構雑多なところも狙っている感じ。

・そのあたりも全体の高尚な雰囲気に吸収されていた。もっと笑いがおきてもよさそうなものなのに。

・教文小ホールが、わりと大きな会場で、かつキレイなので、オシャレな方向に引き寄せられていたのかも。

・大きな会場だからこそ、ここまで迫力のあるものになるだけど、小さなアトリエとか、テント芝居とか、毛色の違う他の会場ならどうなるんだろうと妄想して楽しむ。

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空宙空地『雨の日はジョンレノンと』(ビフォアステージ)

2018-11-08 01:02:09 | 演劇を見てきた・TGR2018

2018/11/3

別れ話の間、男がお気に入りのジョンレノンの逸話を披露しようとして、女にボロクソにダメだしされる話。

男女の別れ話は、とてもわかりやすい題材で、世の中で似たような話はいくらでもある。だからこそ力量が問われる。

逸話の真相と二人が別れ話に至った経緯、二本の軸が同時進行で進んでいく。

台詞が単なる話の説明ではなく、飛躍したり停滞したり擦れ違ったり、きちんと会話として書かれているし、その会話の全体を見ればちゃんと物語になっている。うまい。

こういう会話劇だと、誰がやっても面白くなりそうなものだけど、下手に演じるとちゃんと残念な感じになるもの。

そこに関してはイレブンナインの明逸人さんと澤田未来さん、二人の腕のある役者さんがきっちりまとめている。安心感がすごい。

アフタートークでもお話されていたけど、道外の劇団は作品の質に関わらず集客に苦戦するケースが多いので、こういう形式はもっとあってもよさそう。

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札幌放送芸術& ミュージック・ダンス専門学校 (SBM高等課程)『DELETE~無能者たちの一週間~』

2018-11-07 00:02:03 | 演劇を見てきた・TGR2018

2018/11/6

・ある日、突然「無能者」として排除対象になった人たちが、殺されないように一週間逃げ切ろうとする話。

・高等過程なので、出演者はほぼ高校生くらいの年代、だと思う。

・もうちょっと年齢層に幅がありそうに見えたけど、どういう編成なんだろう。

・世界観も人物設定の説明もそこそこに、唐突にマンハントが始まる。

・正統派B級映画のノリ。題材選択が渋い。

・追跡者のビジュアルが出来上がっている。

・特に片腕マシンロマンスグレーおじさんが素敵。

・腕(特に手首から先)のマシン部分がかっこいいし、いかにも悪役然とした仕草も完成度が高い。

・同僚が殺されて動揺しているメンタルの弱さと、水ぶっ掛けられただけで死ぬモロさもかわいい。

・っていうか、雨の日はどうするんだ。彼。

・あとは鉄線巻き血染めのバッド持ちガールに、学ラン日本刀中二病ボーイ。

・無能者として狩られる対象になるのは、高校生チームと元小説家のホームレス、テレビ局のアナウンサー、政治家、元エリートなど。

・この少子高齢化の時代に高校生を殺すって、なんて悪い奴なんだ。

・いつの間にか仲間になっているチャイナドレスのあだ名がチャイナ。

・いくらそういうキャラだからって、語尾の「あるよ」率がとても高い。

・一体、世界観どうなってるんだ。

・衝動で話やキャラを作っている感じが若い。

・銀魂やBLEACHみたいな感じがしないでもない。

・メカや銃、日本刀などの武器を持つ悪役三人組に戦いを挑むのは、むき出しの角材にビニテを巻いただけのものを振り回す女子高生というのが熱い。

・読んだことないけど『彼岸島』の丸太って、こういうことなのかもしれない(たぶん違う)。

・人を狩る系は好き嫌い分かれるけど、もうちょい腹を据えてジャンルムービーっぽい感覚で作れたらもっと面白くなりそう。

・あと、少年マンガ的な雑多なかっこよさをどこまで信じて作れるのかが、たぶん大事なんだと思う。

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空宙空地『轟音、つぶやくよう うたう、うたう彼女は』

2018-11-04 00:01:58 | 演劇を見てきた・TGR2018

2018/11/3

・ごく平凡な母と娘が、あっという間に過ぎ去っていく人生にちょっとだけ抗う話。

・序盤。母親の周りの時間が、彼女を置き去りにして、暴力的な速さで流れていく。

・まるでそういう呪いにかけられてしまったかのように翻弄される。

・もちろん、それは人生の誇張された姿。

・光陰矢のごとしとは言うけれど、轟音をたてながら走る列車のように人生が過ぎ去る。抗いようがない。

・ただ、それでも娘は抗う。母親と全く同じ人生を繰り返しているように見えて、ほんの少しだけ違う。

・それは、ほんの少しだったとしても進歩とか希望とか言っていいんだと思う。

・「平凡な人生にも価値はある」と言うだけなら簡単で、本作は「こんな状況でもそれ言える?」という人生の否定から始まって、最後には「それでも価値はあるんだ」と肯定している。たぶん。

・結局、娘も同じように時間の流れに弾き飛ばされてしまうんだけど、息子なのか、更にその子供なのか、いつか、あのパートのおばちゃんコンビに一矢報いることを期待したい。

・「人はなぜ生きるのか」という根源的なテーマをこんなにわかりやすくておもしろくできるのはすごい。

・わかりやすくておもしろいと、客としてはそれで満足しちゃうんだけど、それだけじゃないことは強調しておきたい。

・生々しさといとおしさを両立している、奇跡のような認知症の母親。

・その母親役、おぐりまさこさんの表情変わる瞬間でいちいち泣きそうになる。何をどう準備したらあんな演技になるんだ。

・あと、おぐりさんが当たり前のように劇場の受付をやってて心底びっくりする。

・娘役の米山真理さんのガキンチョぶりが全力のガキンチョで笑った。

・ものすごい速さで二人の周りの時間が流れるわけだから、この母娘に共感すればするほど、ジェットコースターに乗っている感覚になるのもわかる。

・昼に見た『裸足のベーラン』は「人はどうしてムダにしか見えないことをやるのか?」と悩む話だったと思うけど、本作では「それは人生が一瞬で終わってしまうからだよ!」と喝を入れているように感じた。

・時間の流れに棹差すためのアイテムが、ある作品ではお人形だし、ある作品では野球だったりお酒だったり、もっと言えば日常の些細な出来事全部だったりする。

・だとすると、人生無駄なことなんか何もないというのもホントなのかもしれない。

※おぐりさんと言えば一人芝居『如水』。会場でもらった上善如水ステッカー。なんか気に入ったのでPCに貼ってみました。

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演劇家族スイートホーム『裸足でベーラン』

2018-11-03 23:18:58 | 演劇を見てきた・TGR2018

2018/11/3

・大学野球の二軍でくすぶっている大学生が、生真面目な後輩に刺激されて、野球にかかわる意味を見つける話。

・舞台は手前と奥で二分されている。手前が野球グランドのホームベース付近、奥が部室。力作。

・手前と奥でシーンを切り替えながら、ソツなく話を進めている。

・TGRの新人賞エントリー作品なのでそういうつもりで見てたけど、明らかに新人っぽくなかったのが各種野球仕草の精度。

・野球は、テレビでいくらでもプロ選手を見られるので、中途半端にやると途端に嘘くさくなるリスキーな題材。

・そんななか、素振りもボールを投げるのもグローブさばきも、明らかに訓練されている人のそれ。

・女子マネすらかなりバットが振れている。

・素振りが始まると話そっちのけで見入ってしまう。

 ・さらりと出た「お、流すねえ」という一言が、いかにも野球やる人が言いそうなセリフで好き。

・部員どうしの会話もいいリズムで、役者さんの中の野球経験者の割合とか、役者さんのプライベートでの仲良し具合も気になってしまう。

・将来何の役にも立たないはずの野球をどうして続けるのかという疑問。

・例えば、鉄道マニアの人はどういう気持ちで見てるんだろうと思いながら見る。

・好き過ぎると負担になることもあるから、そういう意味では共感できるのかも。

・作中、裸足にはならなかったけど、自分の中で制約を設けていた男が外部からのきっかけで開放に向かうところは、ニール・サイモンの『はだしで散歩』感がある。

・本家と違うのが、変化のきっかけが妻とのケンカではなくて、黙々と繰り返される後輩の素振りというところ。

・言葉に頼るのが必ずしも悪いことではないけど、そういうところに作り手側の腕を感じる。

・とかくありがちなしょうもないエピローグもなく、ばっさり話を切り上げたのも印象がいい。

・素振りの印象が強いけど、実際には個々の演技力も高いし、他に何が出来るんだろうと今後の期待感が高まる作品だった。

・80分と書いてたけど65分なかったんじゃないだろか。

※(訂正)TGRのサイトに70分と書いてあったような気がしたんですが、80分だったので直しました。

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トランク機械シアター『ねじまきロボットα~バクバク山のオバケ~』(TGR2018 )

2018-11-01 00:18:38 | 演劇を見てきた・TGR2018

2018/10/31

・ねじまきロボットαが、何でも食べるバクバクと友だちになる話。

・このシリーズを前に見たのが4年前。2回目。

・自分は開演ギリギリに到着したけど、会場内、すでにアットホームな雰囲気が出来上がっていた。

・人形劇と演劇の中間くらいの見せ方。人形を操る人のほうもガンガン演技しているので、最初のうちはどっちを見たらいいのか迷う。

・慣れてくると、人と人形が4:6くらいで見られるようになってくる。たぶんこのくらいのバランスで見るのが一番おもしろい。

・その中でもアルファーやツギハギはビジュアルがしっかりしているので、役者さんの顔が近くあっても両方楽しめる。

・反面、バクバクは馴染みの薄いシリーズゲストでもあるので(たぶん)、キャラクターを前面に出して、役者さんはあまり出しゃばらないようにしている。

・そういう細かい調整はたくさんしてそう。

・バクバクが空き缶に話しかけるところ。悪ではないけど、人間的な基準をあんまりわかっていない感じが人外っぽくて好き。

・ツギハギがかわいい。なんだかんだでアルファーが一番かわいいと予想していたので、うれしい不意打ち。

・足が遅いのはベタなギャグなんだけど、大人目線だとその不憫さが堪らない。

・体があまり動かないのも、いちいちアルファーに置いていかれるのも、ちょっと薄汚れたところが味なんだと思いたい感じも、大人の感情移入先として申し分ない。

・あと、膝裏のメカ感もかっこいい。

・結構シビアなテーマにも踏み込んでいて、人間側の行動にはギョッとする。

・主なお客さんである子供たちに対して容赦してないテーマなのは好み。大人でも解決できない問題を取り上げて子供に見せるのは結構勇気のいることだと思う。

・ただ、バクバクが美味しく食べてるんならそれはそれでいいんじゃないのとは思わないでもない。

・「そりゃあ腹が減ったら多少体に悪いものでも食べちゃうよね」と変なところで共感する。

・確かに「彼は人間の犠牲になったのだ」という構図のほうがわかりやすいけど、意図的なのかどうなのか、そのへんは微妙にズラされている。

・最後のシーンで「あれ、君はそこにいていいんだ?」と思ったけど、あくまで「お話」であるということは形式からも強調されているし、そういう塩梅なんだと納得する。

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