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遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

劇団fireworks『≒生活。』

2024-02-03 23:10:53 | 演劇を見てきた

2024/2/3

・本来なら去年上演されるはずだった作品の振替公演。

・札幌で暮らす以外に共通点のない人々が、ある出来事で知り合い、それぞれの生活を少し前進させる話。

・地下鉄の再現度が高い。実写ならものすごい手間とお金がかかるようなことを演技と演出だけで見せる。

・繰り返すことで生活のリズムも見えてくる。

・そんな一地方都市の生活の断片をつなぐ前半。

・札幌に住んでいる人なら、ああわかるわかると思える小さいエピソードがたくさん詰め込まれている。

・それなら札幌に住んでいない人には伝わらないんじゃないかと言うのはだいぶん野暮で、そういうツッコミには「札幌に住んでいなくても、札幌に住んでいるような感覚を共有できるところがいい」と返せる。

・当たり前の話だけど、人生は一回しかないので、自分が住んでいるところ以外には住むことができない。

・自分が体験できないことを体験した気分になれるのは、創作の根本的な役割。

・それに、地元愛がベースになっているので、その共感さえ得られれば、どこに住んでる人でも楽しめるんじゃないかと思う。

・こういうエピソードを細かくつなぐような話だと、よっぽどうまくやらないと、実時間よりも体感時間の方が長くなってしまいがち。バランスが難しい。

・上演時間は70~75分くらい。本作では適切だと思うけど、この作り方で飽きさせず2時間できたら相当にすごい。

・演劇では難しそうな、それぞれが勝手に話を交わす雑踏の表現が音として心地いい。読書がはかどりそうなザワザワ感。ものすごく微調整に神経使っていると思う。

・地下鉄の暗闇。ペットボトルランタンは舞台の上で見てもきれいだった。

・作中でも話題にあがっていたけど、2018年の地震を思い出した。変に取り乱すことなく、淡々と状況にあわせて行動する人たち。雰囲気が似ていた。

・最近上映されたばかりだし、『ガメラ2』を思い出した人も少なくないと思う。そういう話じゃないのでわかってはいたけど、全員無事で本当によかった。

・劇場に来るまでほぼ視界ゼロの猛吹雪だったのが、終わって外に出ると気持ちいいくらいの穏やかさだった。

・作中の出来事と何となくシンクロしていい塩梅だった。

(シアターZOO 2/2 20時の回)

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MAM 『初恋と不倫2024』(不帰の初恋、海老名SA)

2024-01-28 02:51:11 | 演劇を見てきた

2024/1/27

・ある男女が、お互いを意識し始めた中学生のころから、大人になって大きな事件が一段落するまでの間に交わされた手紙やメールを、ほぼ時系列で読み上げていく話。

・小林エレキくんと吉田諒希さんの回。

・単純な二人芝居とも朗読劇とも少し違う往復書簡形式。

・一対の椅子、コップと水、加湿器。奥中央にお花。シンプルできれい。

・本を持つので演者はセリフを覚えなくてもいい。それがラクなのかと言われると、全くそんなことはないということが始まるとすぐにわかる。

・舞台上に動きがなく、声に集中せざるを得ない状況だからなのか、場の空気が張りつめている。

・そこまで重い話ではないし、戯曲で読んだときにはユーモアを感じたやりとりも深刻な雰囲気になる。

・上演中、客席かどこかでビニールか何かがかちゃかちゃ鳴った程度の音も気になるくらい。

・あくまで往復書簡なので、会話のテンポと違う間合いになるのも難しそう。新鮮なところでもあったけど。

・あと、ずっとほぼ同じ姿勢なので本を持つ腕が筋肉痛になりそう。

・一人が音読している間、作中実際に手紙やメールを読んでいるのはもう一人のほうになるので、沈黙している側の演技も入っている感じ。

・それぞれの人生を歩むことになっても、お互い相手のことを特別だと思っている二人。

・それが初恋というものなんだと言われると、たしかにそんな気はする。

・二人とも、通り過ぎる罪とか、いろいろ言っていたけど、実際にやりとりを聞いてみると、衝動が先にあって後追いでそれらの言葉をあてがっているようだった。

・このあたりの説明は脚本の構成上の都合だと思うけど、言葉だけではぴんとこないところ、フィジカルを通した朗読で補完されている。

・言葉に先行して衝動が伝わってくるんだから、演者が脚本に依存しすぎていないということなんだと思う。

・初恋なんて一方通行で当たり前なのに二人は違う。本当ならこんな幸せなことはないはずなのに。ままならない。

・それでも、物語が終わったあとも二人の人生はまだまだ続くんだから、そこに希望を感じたりもした。

(カタリナスタジオ 1/27 19時の回)

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OrgofA『異邦人の庭』他

2023-12-22 00:00:56 | 演劇を見てきた

2023/12/20

・劇作家の男が、ある秘密を抱えながら、拘置所で死刑囚の女との面会と取材を重ねる話。

・配信含めて三回目の観劇。前は2021年と2022年。

・前回見たときよりも、最初の入り方が軽い感じ。

・今回は仙台、松本公演の報告会を兼ねていたり、会場が専用劇場ではないのでそういうバランスになったと思うけど、題材が重めなぶん今回の入り方が好みだったりする。

・舞台装置は従来通り。面会用のアクリル板をはさみ二人が会話する。最小限でたしかにツアー向き。

・今回はそんな舞台を囲むように客席が作られている。

・自分は比較的二人の顔が見えやすい中央よりの席。窓際のせいか意外なほど腰が冷える。

・演出効果は照明くらいで、とにかく演技勝負。

・前回から期間が空いているものの、話は大体わかるし、距離も近いので、演技に集中して観ることができた。

・詞葉は、7人を殺した死刑囚でありながら、犯行時の記憶を失っている。その記憶も完全に消え去っているわけではなく、悪夢のような記憶がよみがえる不安も抱えている。

・それゆえに死刑になるべく契約結婚を持ち掛け、つかの間で独特な新婚生活にちょっとうかれてしまっている。

・感情のレイヤーが幾層も重なっている。役者経験はほとんどないけど、演者的にはやりがいがありそうなのはわかる。

・一春さんが軽い失言をして表情だけで謝る雰囲気になっているところ好き。

・三回見るとあまり気にならなくなるけど、死刑執行の後押しになりかねない執行日の任意指定とその期限の設定、両親や配偶者の精神的負担が厳しそうな同意が必要という制度にはやっぱり納得できていない。

・張りつめた空気のまま終幕すると、余韻もそこそこにパーティーモードに切り替わる。

・明逸人さんは、終演後の言動のほうがより演技感強めになっていてちょっと不思議。

・だいぶん駆け足気味のツアー報告動画、突貫工事気味ながらテンションで乗り切る漫才コーナー。

・そして、さっきまで死刑囚をやっていた飛世早哉香さんが微笑亭乙姫として演じる落語『鈴ヶ森』。

・二人芝居のあとに落語を一席。スタミナと温度差がすごい。

・落語では演劇家族スイートホームの本庄一登くんがいじられていた。おいしいということでいいんだと思う。

(あけぼのアート&コミュニティーセンター 中ホール)

※今はWEBで読める戯曲が増えているので助かる。→戯曲アーカイブ 刈馬カオス『異邦人の庭』

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弦巻楽団『死と乙女』

2023-12-05 10:53:21 | 演劇を見てきた

2023/12/3

・拷問による心の傷が癒えない女性ポーリナが、かつて自分を拷問した医師ロベルトに、彼女なりの方法で復讐する話。

・事実をもとにしたフィクション。三人芝居。

・彼女はその医師を拘束し、自白を迫る。

・その間、彼女の夫ジェラルドとひたすら激しく重苦しい口論が続く。

・膨大なセリフ量をものすごいスピードで繰り出していく役者さんの負荷を考えると、ホントにもうおつかれさまですとしか言いようがない。

・法的に裁けないとしても、ある人にとっては間違いのない真実だとわかることはある。

・少し前の映画『それでもボクはやっていない』を思い出す。確信しているのは冤罪だから逆なんだけど。

・観客として見ていると、彼女が狂っているのか、医師がとぼけているのかわからないバランスで進行する。

・特に序盤、拘束して自白を迫るという手口が日本の冤罪事件の取り調べと一緒で心配になってしてしまう。

・現実では十分な証拠がないと加害者の糾弾は難しい。

・本作はフィクションとして描かれているので、しっかり加害者を断罪することができる。

・真実を創作に隠すやりかたは色々応用が利く。

・パンフに書かれている、実際に起きたのほうの出来事を参照すると、驚くほど誰も罪に問われていない。認定された死者だけで2279名も犠牲になっているのに。

・本作は「死人に口なし」という、残念な現実の裏返しでもある。

・さらに残念なのは、生きていたとしても、愛する夫にまで正気を疑わるくらい、激しく主張しないと正当性を証明できないという矛盾。

・物言わぬ、言えぬ被害者がどれだけいたことか。

・本作では創作らしい機転で医師の嘘を確信する。もし拷問される機会があったら参考にしたい。

・ポーリアが拳銃を過信しすぎていてハラハラする。彼女にとっての命綱なのに、わりと隙があるように見えた。

・意図的な調整だと思うけど、夫の言いようがうっすらモラハラ気味なのも影響している。

・最後の医師のぬめっとした座り方。座った後は、無言でただひたすら夫婦を見つめる。

・被害者の奇跡的ながんばりにより断罪はなされたものの、憎悪の連鎖までは終わっていないという風に解釈した。

(12/2 コンカリーニョ)

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オパンポン創造社『幸演会』

2023-11-23 21:24:35 | 演劇を見てきた

2023/11/23

・人生停滞気味の青年野村が、「なにがなくとも幸せになれる」と詠いながら裸踊りをするおじさんと出会い、その運営団体である幸演会に加わることで、濃密な人間関係にもまれながら成長していく話。

・ゴミ袋や檻(おり)を思わせる台が不規則に置かれた舞台、床には主人公を囲うような円。舞台美術が初期の彼の心象風景をそのまま表している。

・主人公のカラフルな衣装も目を引く。アフタートークで話題になっていたけど、様々な人がモザイク状に主人公の人格形成に影響を与えてきたことを思わせる。

・最後には脱いでいたから、人とのかかわりは強みでもあるけど、脱却したいしがらみでもあったのかもしれない。

・狭い演技スペースのなかを七人の登場人物が複雑に動き続ける。自然で無駄のない動きが美しかった。

・スガさんみたいな人はほんと嫌いだし、あんな環境で脚本なんか絶対書きたくないけど、どこか憎めないし、守銭奴だけでは表現しきれない、少しの正論と見栄っ張りな人間性もある。

・現場にいたらダメだけど、客席から見ると味わい深いタイプの人だった。

・野村青年がスガに責められているところ、セリフでは謝りつつ、全く気にしていないどころか、ちょっと挑発気味の表情をしているところが楽しかった。

・それにしても、主人公はあの環境でいつ演技の技術を身に着けたのか気になる。本当に天才だったのか。

・一応脚本を書く人間なので、オーダーに沿った脚本が書けない、書きたくない気持ちは少しわかる。自分の場合は書きたくないということはあまりなくて、ただ書けないだけだけど。

・アフタートークはのと☆えれき。同じ表現する側の人たちでも、立ち位置が少し違うという話がおもしろい。

・野村さんものとえれきも自分もほぼ同じ年代なんだけど、「ここよりもっと自分にふさわしい場所があるはずだ」という思いは、たぶん野村さんが一番強い。

・だからこそ、裸一貫から始められたし、映画に東京進出に、力強く新しいことに踏み出せるんだと思う。

・オパンポン創造社の作品は、観劇三昧の動画とは言え、札幌在住の人の中ではかなり見ているほう。

・なので、最後のシーンは、あのオパンポンダンスの継承の儀を見たような、厳かな気持ちになった。

(11/2119時の回シアターZOO)

 

※作中の話題にあがっていた短編演劇は動画で見られます(要会員登録、一部有料)

観劇三昧「さようなら」(舞台)

prim video「さようなら」(映画)

 ※社長の貯めこんだ金を奪おうとする話

観劇三昧「ストラーーイクッ!!」 

 ※卵子と精子のラブコメ

観劇三昧「最後の晩餐」 

 ※隕石が落ちてきて地球最後を迎える日

 

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星くずロンリネス「くずテレビ」

2023-11-19 22:20:45 | 演劇を見てきた

2023/11/10

・短編演劇4作品、映像作品2作品のオムニバス公演。

・オープニングの映像が素敵。20人もの出演者を実在するテレビ番組のパロディ風に紹介する。遠藤洋平くんのどうでしょう風の紹介が好き。もっと売れてほしい。

・『緑の神』は、離婚目前のお笑い芸人野上が初心を思い出して窮地を乗り切る話。

・若手時と年配時の芸人野上が入れ替わって、老若横並びで進行するのに二人は同価値ではない。わりとシビア。

・素晴らしい役者さんを集めて、結構ジャンクな食べ物で繋いでいるところがいい味わいになっている。

・お笑い芸人が面白いギャグをするという、作り手にとっては相当難しいシーンで、監修にYes!アキトくんという一線級の芸人を起用しているところがさすが。

・『ワイルドシングな恋』は、恋と仕事と家族と趣味との軋轢に苦しんだ末に自分自身を見つめなおす話。

・人生の荒波にもまれながら徐々にカドが取れていって、だんだん自然体になっていく様子が、たぶん脚本の仕掛けや想定を超えてスケールの大きな話になっている。

・個人的には楽太郎くんがのびのび演技しているのを見てほっこりした。一言一言がおもしろい。

・プロレスラーのオンオフ表現が生々しく、最後のオチは程よい意外性があって好き。

・『長い一日』は、夫を誘拐された夫人が、妹や刑事とともに、誘拐犯人からの電話を逆探知すべく、話を引き延ばそうとする話。

・大昔のよくあるコント設定を堂々と採用し安定感を確保しつつ、とにかく演者は「長い言葉」を要求される。

・演者のフィジカルに訴えかける構造で、各人のクセの強い声色と言い立ての合わせ技が楽しい。

・きゃめさんのセリフで、言葉の意味を捨てて、言い方とニュアンスだけで喋っている瞬間がおもしろかった。

・『白衣の女王』は、マンガ家と、マンガのモデルになった医師と、マンガのファンがそれぞれ窮地に陥るが、全部混ぜるとうまくいったという話。

・こういう豪華な座組が見られるのは、ウェイビジョンと短編作品だからこそ。

・それぞれの世界の関係性と、混ぜ合わせた際のルールで良くわからないところがあって、回収パートについていくのが大変だった。

・あと、ところどころで「うまいなあ」と役者さんと同じ程度の声量でうなる客席のおじさん(たぶん)がいた。おもしろかったけど、すこしは遠慮してほしい。

(11/17 19:30の回 演劇専用小劇場BLOCH)

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演劇家族スイートホーム『いつか、いつだよ』

2023-11-06 22:14:25 | 演劇を見てきた

2023/11/4

・かつて熱血高校生だった社会人が、死神との取引の結果、一高校生としてコロナ自粛期の高校の放送部に送り込まれる話。

告知用の感想文を書いた関係でご招待いただく。

・それこそ高校演劇では、すでにコロナ自粛期を扱った名作は結構あって、若いとは言え高校生ならぬ大人たちが、コロナ禍の高校生たちの話をどう仕上がるのか、気にしつつ見る。

・実際、高校生がコロナでいろいろ台無しになって辛いというだけの話なら、巧拙の違い以上の意味はないので、むずかしい題材だったと思う。

・社会人として一定の知識や常識を身に着けてから、高校生に戻って学生生活をやり直せたら楽しそうではある。誰だって似たようなことを考えたことはあるはず。

・本作では、そういう異世界転生の亜種みたいなことはほとんどなく、主人公は高校生のサポートに徹する。

・題材的に硬軟のバランス取りはむずしそうだったけど、抑圧された生活の中でも、世代間ギャップやなりすまし系勘違い系のコメディ要素をねじ込んでエンタメ性を確保している。

・告白エピソードの使いまわし方がきれいだったし、いい感じの流れをぶった切る死神の割り込み方もよかった。

・元大人の主人公が指摘されるまでマスクをしてなかったのはよくわからなかった。

・現実では完全にコロナ自粛期は終わっていて、世間は簡単に理不尽な思いをした高校生たちのことを忘れていく。

・しかし、存在しなかったわけではない。

・大人の総体が社会である以上、その放置すれば消えていくような小さな記憶を草の根的に残していく。

・そんなアーカイブ意識を持つのは大人としての義務。

・苦しむ高校生の演技を見て感動しているだけではダメなんだと思う。

・自分自身、年齢的にはだいぶん大人なので、この作品に接して襟を正したい気持ちになった。

・当時の大人たちがそうだったように、ただの一般人に過ぎない主人公が加わったところで、コロナ禍の理不尽を解決することはできない。

・少しでも高校生たちの後押しができたのか、本当に若さだけで一歩先に進めたのか、主人公は何を受け取ったのか、最後のインタビューで少しだけわかる。

・あと、終演後のハッピーショーが完全に大学生のノリで、楽しいのは楽しいけど、この年になると、ずっとあの感じを続けられたら厳しいような気もする。

・はからずも主人公の気持ちの後追いができた。

(11/3 19時の回 シアターZOO)

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第73回北海道高等学校文化連盟石狩支部 高校演劇発表大会 札幌大谷高校『食卓全景』

2023-10-05 00:45:41 | 演劇を見てきた

2023/10/4

並んでトイレ昼食をとることが習慣の女子三人(実は異母姉妹)が、知り合って、仲良くなって、それぞれ自立していく話、だと思う。

テレビドラマ『パパはニュースキャスター』を思い出した四十代は、自分だけではないはず。

最初は偶然が過ぎるのとトイレ食事が共感できなかったので入り込みにくかったけど、三人が仲良くなって、漫談を始めるあたりから、尻上がりに面白くなっていく。

お互いに依存したり、暴走したり、仲良しだからこそ気になる価値観の違いに悩みながら、長い時間をかけていろいろな経験を重ねていく。

結構いろいろなことが起きている作品ではあるけど、一つの劇的なきっかけよりも、日々の積み重ねのなかでいつの間にか成長しているという話なんだと思う。

個人的にはそういう成長の仕方のほうが現実に即していると感じる。

そんな日々の積み重ねの象徴としての食卓、というか食事シーンなのかなと思った。

脚本を書かれたイトウワカナさんのプロデュースユニットであるintroを思わせる演者の動き、音楽の使い方が印象に残る。

とにかく難しい本だったと思うけど、演者、演出、よくここまで作ったもんだなとため息が出た。

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第73回北海道高等学校文化連盟石狩支部 高校演劇発表大会 北星学園女子高校演劇部『あたしたちがいくつになっても』

2023-10-04 22:28:31 | 演劇を見てきた

2023/10/4

吹奏楽部で挫折中の女性生徒が周囲の人たちや後輩の励ましで元気を取り戻す話。

女子寮の食堂兼談話室みたいなところ。

まず装置がすごい。パネルをしっかり並べて、窓にはガラス(的なもの)がはめられており、屋外も効果的に使っていた。

キッチンは直接見えないが、配膳口から中の様子がわかる構造。この前、上演した自分の脚本の装置に少し似ている。

階段は絶対必要という感じではなかったが、それでも作る謎のこだわりぶりが素敵。

お笑いに対するキモの据わり方が出色と言っていいと思う。

特に文科系の部員は全身タイツを来ているという謎ルールがとてもバカバカしくて好き。

自意識を飼いならすのが難しいはずの高校生なのに、振り切っておどけている。強い。

時事ネタも効果的に入れている。除草剤の話も笑った。

テニスのサーブがとてもきれいなフォームだったことも信頼できる。

テーマ的には、学生生活の評価基準を「部活」に限定してしまうと、こういうつぶしの利かない感じになってしまうんだろうなと思ったりはした。

(10/3 14:20 えぽあホール) 

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OrgofA『エアスイミング』

2023-09-05 21:07:58 | 演劇を見てきた

2023/9/3

・四人の女性たちが、いわゆる「普通」ではないとされ、物理的あるいは精神的に隔離され続ける話、だと思う。

・実際には二人だったのかもしれないけど、自分の頭の中ではつながらず。ドリスの扱いがよくわからない。

・実話がもとになっていると言っても、個人の話というよりは、普通ではないとされる人全般の話になっているので、二人や四人どころの話ではないのかもしれない。

・舞台装置がシンプルながら美しい。階段の質感、バスタブの黒かび、傾いた肖像画。

・基本的にドーラとペルセポネー、ドルフとポルフの組み合わせの決まった二人の会話が交互に並べられている。

・前半は話がどこに向かっているのかよくわからず、付いていくのに苦労する。

・もう少し前知識を入れて観たほうが良かったのかもしれない。

・二人一組であることを強調するほど、片方が欠けたときの喪失感が大きくなる。

・自分の老後を想像して時々怖くなる感覚を思い出したりもする。

・「エアスイミング」という言葉だけ聞くと、空を泳ぐようで気持ちよさそうだけど、実際に見てみると、水中にいないのに息苦しい思いをしている人たちの話。

・大前提として女性が個人として尊重されない社会の話なんだけど、不合理に社会から長時間断絶されてしまった人々の話でもある。

・冤罪事件、拉致、介護、ネグレクトの問題、いくらでも現代日本につなげられる。

・彼女たちの長い長い時間の中で積み重ねられてきた窮屈さや重苦しさもこの作品の重要なところなので、小手先の笑いや見やすさで中和してしまうと雰囲気が損なわれる。むずかしい。

・途中、アーティスティックスイミング風のダンスや音楽がはいるけど、それすらも最小限。

・演者さんは四人とも好演。序盤少し硬さを感じたものの、抑揚の少ない二人芝居を淡々と繰り返す構成なのでホントに大変だったと思う。

・ただ、重めの話が始まったなあと身構えていると、すごい勢いで舞台に飛び込んでくる服部一姫さんがほほえましかった。

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