イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

星守る犬

2015年03月09日 11時37分36秒 | 双葉社



発売日:
 2009年7月11日 第1刷発行
 2011年3月15日 第29刷発行

著者:村上たかし
定価:本体 762円(税別)
ISBN:978-4-575-30143-4

【星守る犬】
犬が星を物欲しげに見続けている姿から、手に入らないものを求める人のことを表す。

★初出:漫画アクション2008年8月5日~8月19日号、2009年1月20日~2月3日号
「星守る犬」
「日輪草(ひまわりそう)」

あとがき
拙い作品、最後まで読んで下さってありがとうございました。自分で書いてて何ですが、作中の「お父さん」は、こんな結末を迎えなくちゃならないほど悪人じゃありません。ちょっと不器用だけど、普通に真面目なタイプ。ただ、ほんの少し、家族や社会の変化に対応することを面倒くさがったり、自分を変えることが苦手だったり・・・というだけで、昔なら、いたって平均的ないいお父さんです。しかし、今ではそれが十分「普通の生活」を失う理由になり得るようで、本当につまらないことになってきたなあと思うのです。ちやほやしろとは言いませんが、普通に真面目に生きている人が、理不尽に苦しい立場に追いやられていくような、そんな世の中だけは、勘弁してほしい。と、やるべきことすらちゃんと出来ていないダメな僕は、切に思うのです。

お父さんの旅立ちには、せめてものはなむけに、海辺のごきげんなドライブと素晴らしいパートナーを用意しました。計算やかけひきなしで、こっちが申し訳なくなるくらい、まっすぐに慕ってくれる犬。僕自身も愛犬にどれだけ救われてきたか知れません。

傍らに犬。二人は絶対に幸せだったと思います。負け犬の遠吠えじゃなく。後半の「日輪草」はそんな彼らへの葬儀の章です。奥津の名は墓所や魂の隠れ家を意味する「奥津城(おくつき)」から。今はまだ深い喪失感の中にいる墓守りです。その奥津の中にも、犬から与えられた愛情がくすぶっており、そこから小さな灯がともります。僕は、奥津がまた犬を飼ってくれたらいいなと思っています。

最後になりましたが、今まで一度も描いたことのない「ストーリー物」を描くよう僕にすすめて下さり、作品にぴったりのタイトルまで考えて下さった双葉社の加納さんには、心から感謝しています。また、出版に際しましては、多くの方々に大変お世話になりました。この場をお借りして、皆様に深くお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。支えてくれる友人と家族にも、ありがとう。僕も星守る犬です。

2009年夏 村上たかし


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