イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

クリセニアン(1) リンバーグの毒婦に誑かされたバカ兄

2007年05月28日 06時21分11秒 | 小説

 ひかわ玲子(株)小学館キャンバス文庫での《クリセニアン年代記》シリーズにはガッカリしました。何故かというと、アルジェリック《魔法神殿》の言いなりになって、フェランの元を去ってしまったからです。それがショックで手持ちの《クリセニアン年代記》シリーズ全巻を古本屋に売り飛ばしました 当然ですよ。そのフェランの息子フェラザード主人公の、《クリセニアン年代記》シリーズの続編『クリセニアン夢語り(1) エル・デオの眠れる王に』が発売されると知って“書かんでいい!そんなモノは!!心の中で叫んだのはです。

 それにしても、フェランが主人公だった前回のシリーズ《クリセニアン年代記》で、今回のフェランの息子フェザンが主人公のシリーズ《クリセニアン夢語り》ならば、《クリセニアン》シリーズの「年代記」編に続く第2弾「夢語り」編でしょうか

 この《クリセニアン年代記》シリーズ大嫌いなキャラ主人公フェラン(フェラベリート・ラズ・オルフェ)に自分が継ぐべきエルミネール王国の王位を押し付け、自分はエルメール後のリンバーグ皇后ラリッサと乳繰り合い、不義密通を犯した厚顔無恥な罪人のくせに楽隠居の怠惰を貪る愚兄ジーク(ジークラード)です。『クリセニアン年代記(4) 月影の暗殺者』で、剣に塗られていた毒のせいで倒れたフェランアルジェリックが癒している間、フェランは夢の中で、幼い頃亡命する途中山越え山賊の棲み処に迷い込んでしまった時、ジークになって山賊を誘き寄せ、その隙に助けを呼びに行く途中で凍りつくような恐怖フェランが味わったことをジークは知らぬまま、『クリセニアン年代記(9) 緋の逃避行』での回想で、自分だけがフェランを失ったらどうしようと悩み、フェランは知らない自分だけの苦悩と恐怖だと思い込んだ独白に呆れました。

 嘗て、エルミネール王国バハウ帝国…というよりも、シャリザーンによって滅ぼされた時、我が身をケダモノどもの餌食にしてでも我が子を守るのが母として当然なのに、その責務を放棄して自己防衛のために自刃し、フェランとジークを見捨てたミルデラーテの弱さと身勝手さが容貌と共にジークに受け継がれてしまったのです。愚かなのは己に似すぎていても男ならば無事に済むだろうと思ったミルデの甘さです 尤も、男でも無事では済まないと気付かれたら道連れにジークを殺していたでしょうから、間抜けな女 で良かった。

 ジーク作者の思惑とは異なる意味王位に就かなくて良かったのかもしれません。本当の不幸とは、自分が不幸だと思い込むことであり、ジークの不幸とは、まさに分が不幸だと思い込んで、不幸に酔いしれ悲劇の主人公を気取っているのです。しかも、『エル・デオの眠れる王に』の中で、疫病神ラリッサ皇后に対して“セリシア皇姫エルミネール王国の王太子フェザン(フェラザード)の許輿入れ”ならばいざ知らず、あろうことか“降嫁”という言葉を使ったジークに呆れた エルミネールリンバーグの属国ではないぞ バカ兄

 リンバーグ側はこう言うだろう、という意味で言ったのかもしれませんが、卑屈なジークの本性亡き女皇ゼルミナの庇護下にあったせいで、ジーク骨の髄までリンバーグの国益になるようにとエルミネール王国よりもリンバーグのためになることばかり無意識に考えるように洗脳されたも同然呆れるより哀しい