旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

旅先での食の悩み

2017年10月02日 | 旅行一般
 海外旅行の経験がある人で、”どうしても馴染めなかった”との体験談を語る人を何人か知っています。その人達のうちで”食事がどうにも口に合わなくて...”という理由の方が結構な割合を占めています。食べる事は人間にとっていかに重要かという証明なのでしょう。

 私にとっては食べる事はとても大きな楽しみなので、逆に旅に出ていろいろな物を口にするのは旅の楽しみの重要な要素なわけですが、一方で食べる事が旅先での苦痛につながる人もおられるのが少しおもしろい点だと感じます。

 先日、ひょんなところでナンプラーをいただきました。買ってはみたものの、その独特の匂いに馴染めなくて、処分することになり、何でも食べる私に回ってきたわけです。何でも食べるように親に強制され続けた事はこの歳になって有利に働くのです。

 曰く、”臭くて驚いた”。

 さてナンプラー。確かに独特の匂いがありますが、我々日本人にとって驚くほどの臭気を放っているというわけではありません。例えばイカの塩辛や納豆などを思い浮かべればナンプラーより強い匂いがあると思うのです。

 "ベトナムにもニョクマムという魚醤があって、ナンプラーよりもう少し匂いが強いのだけれど、ベトナムの人は米飯にニョクマムだけかけて食べる事もあるよ”
 
 ナンプラーをくれた人に話すと

 ”オエーッ”

 という反応が返ってきました。

 ”日本でも同じような食文化があるでしょ。例えばイカの塩辛”

 ”あっ!”
 
 ”だから、ホントは米飯を食べる文化にある程度共通して、少し発酵臭がして生臭いものを米飯と合わせるというのは王道の組み合わせでしょ?漬物なんかもそうなんじゃないかな。”

 そんな会話をしたのですが、くれるというものを返す気はないのでしっかりナンプラーは持って返ったのでした。

 ナンプラーの特殊性は、なんとなく”醤油”と似ている事にあると思います。海産物を発酵させてつくるのですから当然、塩辛あたりとの比較をするのがフェアな比較なのですが、慣れ親しんだ醤油と外見が似ているだけなのに、勝手に比較して”臭い”となってしまうのだと思います。

 旅先で出会うものは、旅が深ければ深いほど”異質”なものになっていきます。だから、それを自分の偏狭な体験だけを尺度にして”判定”しようとすると大抵は悪い判定になると思います。

 あなたの行先の食文化は大抵の場合、何百年、何千年の歴史の中で磨かれてきたものです。たかだか数十年の人生経験で”判定”できる相手ではありません。判定することを辞めて、敬意を払い、受け入れる事、そして白紙に戻って感じる事を覚えれば多分、旅先での食の悩みは回避できるのではないかと思います。

 もしかすると旅先での文化の違い全般との正しい付き合い方だといえるかもしれませんね。

□□□第5回旅行好きの夕べ開催□□□
10月6日(金)19時~21:30
四谷三丁目
参加費:
3,500円
詳しくは
http://www.bekkoame.ne.jp/i/eandg/event/yube.html


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