旅のウンチク

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高齢者介護施設の歩き方

2017年08月07日 | その他
 過去に"2010年E&Gの冒険"という記事で触れたように、私は一時期、介護施設で介護職員として働いていた事があります。実は仕事は意外と性に合っていて、親しい人達はE&Gを閉じて介護の世界へ進むのだと思いこんでいたりもしたものです。その後、別の通常規模デイサービスで仕事をしたりした経験もあり、今は介護職員としては働いていませんが、高齢者介護の世界から完全に離れたわけでもありません。

 そんな事情を知った人からたまに介護施設の利用に関して相談を受けることがあります。

 第一線で働いていて、そこへ親の介護が必要な状況になったら、何らかの介護サービスを受けざるを得ないのは現実的な事ですし、私の年齢からして、周囲の人間がそういう状況下に置かれる事が多くなり始めているということなのでしょう。

 介護現場から少し離れて数年が経ち、その業界と利害関係がほぼなくなったので、そろそろこの話題について公開しても良い頃になったかと思います。

 私の両親も子供二人が離れて暮らしているので時たま不安を口にします。私が彼らに言えることは....

"あなた達のような人達が快適に過ごせる施設はこの世に存在しない。だから神様は息子が介護職員として経験を積む事を強要したんだと思う。介護が必要になったら引っ越してきてあげるから自分で何とかできる間は頑張って。介護職員としての知識も技術も、多分ほとんどの職員より上だから、自分が帰ってくれば施設より良い介護が家で受けれるよ。”

 という事になります。これが言えるだけ、介護職員としての経験を積んだ甲斐があったというものです。

 さて、多くの人達はそういう訳にはいきません。体が麻痺したり、色々な事情で自分で暮らすことができなくなった肉親を24時間面倒を見られる人は少ないでしょうし、時間が確保できたとしてもどう対応して良いか解らないことだって多いのです。生活相談員として契約関係にも関わった私はそういったご家族の悩みを何度となく聞かされたものです。
 
 やはり何らかの形で介護サービスを受けなければ、介護する側が"介護疲れ"に苦しむことになります。

 訪問介護、通所介護、老人ホーム、様々な介護サービスがありますが、そのうち、訪問介護については私はあまり知識がありません。だから、ここで触れるのは”高齢者介護施設の歩き方”というわけです。

 まず、介護が必要になった際に最初に関わる人達が”ケアマネージャー”という人達だと思います。介護サービスをどう活用するかについて色々なアドバイスをしてくれます。そして、利用する介護施設に関しても推薦してくれます。

 施設に延べ3年半ほど身を置いて、"ケアマネージャー"という人達が見学に来た事は数回しかありません。ある程度の頻度で開かれなければならない介護内容の見直しのための”担当者会議”すら、ほとんど開かれていないのが現実です。だから、ケアマネージャーの方々は施設のサービスの良し悪しについては”知らない”というのが実際のところ。ケアプランを立てるのに忙しくて、それどころではないというのがケアマネージャーの皆さんの言い分です。

 だから、ご家族は利用予定の施設へは時間を作って一度見学に行ってください。

 さて、施設側は、見学者が来る日は当然、構えて対応します。朝礼で”今日は見学者が来られるので....”といった具合。その日、その時間だけは取り繕ったサービスが展開されます。だから、見学に行った時より、普段は”悪い”と考えて間違いありません。
 
 見学に行った時、職員の言葉遣いに気をつけていてください。見学者の目の前でお年寄りに”タメ口”とかは問題外でしょう。おそらく普段はほとんど虐待に近い介護を行っている施設と思って間違いありません。

 案外勘違いしやすいのは”テキパキ動いている職員の姿”。
 
 早足で忙しそうにテキパキ働く職員の姿を見たら、”頑張ってやっている”と勘違いしがちですが、そんなテキパキしている職員に体の麻痺がある高齢者が”トイレに連れて行って”とは依頼しづらいのです。

 実のところ、高齢者介護施設の人員配置は世の中の他の職業から比べれば驚くほど余裕のある配置なのです。早足でテキパキ仕事をしなければならない事はありません。お年寄りのちょっとした仕草から”お茶でもお持ちしますか?”とか、”お手洗いに行っておきますか?”と声をかけられる程度に気を回す余裕は充分あります。

 急ぎ足で仕事をしているということは、配置されている人員の一部がサボっているとか、あるいは職員が利用者さんに声をかけられることを回避するために意図的に早足で歩き回っているかいずれかです。その両方ということも普通に有り得ます。こういう施設もNGです。

 レクリエーションや体力増進のトレーニングを全面に出している施設も少し眉唾です。おそらく見学者に良い印象を持ってもらうための演出がかなりの割合を占めるので、実際に利用し始めてみたら、レクリエーションもリハビリも行われていない事がほとんどだと思います。
 
 職員がゆったり利用者に対応していて、しかも”言われて動く”のではなくて、自分達から利用者さんに声をかけて回っているような施設が選択肢として正解だと思います。こういうところなら自然と良いレクリエーションも行っています。ただし、見つけるのはかなり根気のいる作業になるとは思います。

 私が介護の仕事に関わって来て本当に残念に思うのは、懸命に良いサービスを模索しているような施設でも良さを見出してもらえずに撤退を余儀なくされるところが沢山ある一方で、いい加減な仕事しかしていない施設がそれなりに事業として整理しているところです。こういう流れの一つの理由は、利用者さんのご家族が施設選びをケアマネージャー任せにしてしまったり、あるいは”テキパキマジック”に騙されたりしている事にあると思います。

 今回の文章がより良い施設選びの一助となり、その結果、よいサービスを提供している施設が脚光を浴びることができるようになればと願う次第であります。


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