旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

プランB

2017年05月16日 | 旅行一般
 旅する場合に限らず、山登りや、あるいは仕事においても同じだと思うのですが、計画を立てた場合にそれがうまく行かなくなった場合の事を想定して代案を考えておいた方が良いという意見はいろいろなところで出会う意見で、私も過去の記事で代案について触れた事があります。プランBというやつです。

 たとえば、スーパーカブで旅するタイ北部の場合、もともとがそれほど綿密な予定に基づいた旅ではなくて毎日がプランBのようなものなのですが、それでも本気でプランBが必要な場合があります。

 固定されたルートがある企画ではないのですが、ここ数年使っていて、皆さんに一番人気のある4日目のルートは走行距離が長くなる日なので全体としてスケジュールがタイト。なおかつ難易度が高いルートはアップダウンが激しすぎてスーパーカブではローギアでしか走れない所も多いのです。ペースを上げて時間を稼ぐ手はほとんど使えません。

 時間的にファーンに届きそうにない場合の代案は、少し北のタトンに滞在先を確保する事を考えていて、この日ばかりは平野へ出てから何度も時計を見て、少しペースを上げたり、かなり真剣に調整します。

 ところが、実は一般論としてプランBには案外気がつかない穴があります。

 代案といえばどちらかというと本来のプランより実行しやすいと思い込みやすいのですが、もともとの計画は様々な計画の中で最も妥当と思えるものを選んでいる場合がほとんどなので、プランBの実行はより難易度が高い場合がほとんどです。

 十分に準備して取り組んだ本来のプランすら上手くいかない状況下でその場の判断だけで状況の建て直しをするのがプランBですから難しいに決まっています。

 先に挙げたスーパーカブで旅するタイ北部の4日目の場合、例えば早めに決断してタトンへ宿泊することにしたとしても、タトンにゲストハウスがある事は30年前の自分の体験と、通りがかりに見た風景から想像はできるのですが具体的にどこに泊まれるかはそれから探し始めることになります。それなら少し無理してファーンへ向かって、勝手知ったる宿に直行したほうが効率がいいかもしれません。

 また、プランBをチョイスした場合、今度は翌日の走行距離が伸びてしまうので、場合によってはそれ以降のルートも全体に見直さなければならなくなります。

 そういう迷いがプランBへの変更の決断を鈍らせます。

 また、プランBが必要になるときは何も事前に計画の危うさを予測している部分とは限りません。何の準備もないままプランBを急遽用意しなければならなくなる事だって多いのです。

 状況が悪化したときに計画にない方向へ舵を切ることは本当に難しく、勇気が必要なものです。

 山の事故などで”判断ミス”を”後出し”で批判するような記事をさかんに見かけますが、実際にはその場で”変更”の判断を下す事はとても難しいものです。動き始めた計画の軌道を曲げる方が、その軌道に乗っかっているよりずっと難しく、大抵の場合、より危険な事に見えるものです。
 
 プランBを実行する事になった場合、その場で最新の情報を集めたり、何かを交渉したりするための語学力が必要になり、計画を調整する柔軟性、さらには何の調整が必要になるかを把握する、元の計画に対する理解度なども必要となります。

 更に求められるのは新しい状況に対する新しい計画を考える柔軟性。これらを実現するためには様々な点でのスキルが求められます。

 具体的な能力や技術ではなくて、普段の生活でいかに広範囲に興味を持ってたくさんの経験や知識を積んでいるかという事と、どの知識や技術をどうやって現場の状況下で活かすかを考える柔軟性が試されます。

 計画にない行動、手探りの情報の中で苦悶することではありますが、ハプニングは乗り越えた後には旅の大切な思い出となるでしょう。そういう意味ではプランBも悪くはありません。

 旅先でも日常でもたくさんの体験を積んで、上手くいかなくなったときにはたくさんのプランBを思いつくことができるスキルを身につけておきたいものです。

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 場所 東京 四谷 サロンガイヤール
 会費 3,500円
 詳しくは下記ページから。
http://www.bekkoame.ne.jp/i/eandg/event/yube.html


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