旅のウンチク

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バックオーライ!

2010年01月18日 | ライフスタイル
樹脂加工のフライパンが全盛の中、私は鉄のフライパンを愛用しています。と言っても、何か高尚なこだわりがあるわけではなく、健康とか、環境とかとも関わり無い理由です。樹脂加工のフライパンは、いずれコーティングが剥がれて来ますし、そうすると買い換えたり、古いのを捨てたりするのが面倒。そのため、ものぐさな私はコーティングが剥がれたフライパンをズルズルと使い続けていた事が多いのです。最初から樹脂コーティングされていないフライパンを使えば、もうコーティングが剥がれる心配もなく安心ですね。

樹脂加工のフライパンを使い続けて来た人は、鉄のフライパンはすぐ焦げ付くのではないかと思われるかもしれませんが、そんな事はありません。その証拠に、洋食屋さんなどでは、鉄や銅のコーティング無しのフライパンを使っていますし、そのフライパンの中でカツやオムレツが自由自在に滑っているではありませんか。私は学生の頃、中華料理の厨房でアルバイト(皿洗い)をしていた事がありますが、あの強烈な火炎の中に入れられても鉄の中華鍋に食材が焦げ付いたのを見た事はありません。洗い場に回ってくる中華鍋は全てそのまま返してもバレないくらいきれいなものです。

ただ、樹脂加工のフライパンのように買ってきてすぐにそのまま使うというような気軽さはありません。鉄のフライパンの使い方は省略しますが、買ってきたら、錆止め塗料を落とし、それから、油を馴染ませるために慣らしが必要。私は今使っているフライパンの慣らしが完全でない頃にオムレツを作ろうとして、どうして上手く卵が動き回ってくれないのか悩んだものです。洗う際にも少し神経を使わなければなりませんし、しまう前には軽く油を引いてあげる必要があります。

きちんと”慣らし”が終われば、手入れは別として、料理そのものは樹脂加工のフライパンよりラフにフライパンを扱えます。樹脂コーティングが剥がれる心配が無いからです。

私の周りには何人かの鉄フライパン愛用者がいます。”樹脂加工のフライパンなんて、料理が下手な人が使うもの”的な事を言う人もいますが、それはまた違うと思います。確かフライパンにコーティングする事を考えた人は、毎日奥さんがフライパンの焦げを落とすために格闘しているのを見て、楽をさせてあげたいと研究を重ねたのだという話を聞いたことがありますが、多分1950年代の話だと思います。つまりフライパンの話と同時に思うのはコンロの性能の違い。薪コンロでは無かったのかもしれませんが、私が子供の頃(60~70年代)はまだ七輪併用で焼き魚は七輪で焼いていた覚えがあります。さすがに幼すぎて火は扱わせてもらえなかったので、コンロがどんな使い心地だったのかの記憶はありませんが、今のものほど自由自在に火力調整できなかったのではないかと思うわけです。薪コンロはカナダのエコロッジで使いましたが火力調整は薪の燃え具合を先読みしてキープしなければならないので、たいていの人には使いこなせません。

話が外れかけました。つまり、樹脂加工のフライパンはコンロの性能の向上によって以前ほどの必要性がなくなって、今はむしろ料理に使う油を制限したい人など、違った方向へ発展していく発明なのではないかと思いを馳せてみたわけなのです。

ようやく、何が言いたいのかをまとめる所までやってきました。

私がバックオーライと名づけたのは何か。。

以前は非常に有用な品だったものが、関連する物の技術の向上やそれを扱う人間の技術の向上によってそれほど有用ではなくなり、その結果、より以前の製品でも充分実用性を持つように時代が巻き戻せる物。つまり、バックがオーライな物。これ、考えてみると結構沢山あると思うのです。

それから、もう一つ、今回長々と例に挙げたフライパン。樹脂加工のフライパンなら使った後、洗剤をつけたスポンジで洗って拭いて片付ければよいのですが、鉄のフライパンは水かお湯だけで、タワシで洗って、拭いた後、軽く油を引いて片付けます。

つまり、油を引くという手順が1つだけ増えます。

この、手順の増加があなたにとってオーライであれば、あなたもバックオーライの仲間入り。つまり、人間の側の心がバックする事にオーライかどうかのバックオーライ。

定期的にフライパンを買い換える手間よりも、一歩後退して、使い終わったら油を引くという手間を受け入れられるのか。

使い終わったら油を引くという手間を省いて、定期的にフライパンを買い、古くなったフライパンを処分するという手間を受け入れるのか。

フライパンの例なら、少しの手間を毎回使うたびにかけているうちに、だんだん焦げ付かなくなっていくのを実感できます。フライパンを自分で育てていく楽しみがあるわけです。そんな、ちょっとした日々の手間を面白く楽しんでしまおうという精神がバックオーライな精神。

さて、来月初めにはまた、バックオーライなツアー、”スーパーカブで旅するタイ北部”に出発します。2月6日から2月13日の間、しばらく留守になるのでご注意を。


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