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玉飛接近

右玉&左玉、ときどき詰将棋

駒組みの一例(対居飛車編)

2012年10月19日 | 右玉
今回は対居飛車の駒組みの一例を紹介(24有段者の対局から取材)。

▲7六歩△3四歩▲6六歩△6二銀▲6八銀△4二玉 ▲6七銀△3二玉▲2六歩△4二銀▲4八銀△5四歩▲4六歩△5二金右▲3六歩△8四歩▲4七銀△8五歩▲7七角△3三銀▲7八金△3一角▲3七桂△4四歩▲2九飛(第1図)

9手目▲2六歩について少し。タイミングを誤ると緩手になったり銀冠に組むことを許すことになるので、▲2六歩と突くタイミングは非常に難しいです。
私が▲2六歩と突く場合、下記の点に注意しています。
 1.相手玉の位置
 2.急戦の有無
 3.左美濃
それぞれについて詳しい説明をば。
まず1。飛先の歩を伸ばす利点は、継ぎ歩攻め(詳しくは手筋集で)があること。相手玉が1段目にいては継ぎ歩攻めの効果が薄く、攻めを効果的にするためには2段目にいてもらわなければなりません。本譜では後手はすぐに2段目に上がりましたが、普通はなかなか上がってくれないので2段目に上げさせる工夫をしなければなりません(私は南流っぽく指して上げさせています)。
続いて2。急戦の有無は相手の右銀の位置・動きで判断します。1,2段目にあればすぐの急戦はないと判断して突くことを考えます。3段目にあれば急戦の可能性ありと判断して下段飛車の実現を急ぎます。
最後の3ですが、これは銀冠に組ませないためです。銀冠はミレニアムや菊水矢倉同様やっかいな囲いなので、なるべく組ませたくありません。
以上3点は▲2六歩と突く場合の指針であり、右玉の序盤のポイントだと思っています。

△4三金▲4八玉△8六歩▲同歩△同角▲同角△同飛▲8七歩△8四飛▲5八金△7四歩▲3八玉△7三桂▲5六歩(第2図)

△8六歩からの角交換は攻撃目標になりやすい角を手持ちにでき、右玉にとってありがたい展開。
▲5八金~▲3八玉~▲5六歩として、右玉が完成しました。

絶対にこの手順で組まなければならないというわけではありませんが(相手の指し手によって優先する手が変わってくるため)、駒組みの参考になればと思います。

右玉の種類

2012年10月18日 | 右玉
今回は実戦に現れやすい右玉の種類を紹介。清野流(岐阜戦法)などレアな右玉は割愛しました。


風車は昔からアマチュアの間で指されていた知る人ぞ知る戦法でしたが、伊藤果七段が改良を加え居飛車穴熊への対策として多用したことから一躍有名になりました。専守防衛型で、千日手は大歓迎。


右玉の中でポピュラーなのが、この新風車。基本形といっていいでしょう。
攻め30%受け70%という配分で、相手の攻めにカウンターを入れるのが基本パターン。


矢倉の後手番の戦法としてアマチュアの間で指されていた矢倉右玉。この戦法を石田和雄九段が採用し、竜王戦挑戦者決定戦に進出する原動力になりました。「石田流右玉」とも呼ばれています。


右四間飛車に耐性があるのが、この雁木右玉。
右玉の広さ+雁木の堅さで相手の仕掛けを封じます。持久戦になるとキツいのが玉に瑕。


元奨のアマ強豪として知られる細川大市郎氏が考案した角換わり右玉。
3手目に角交換を行う(▲7六歩△3四歩▲2二角成)のが特徴で、「ゲリラ戦法」との異名を持つとか。
角を手持ちにすることにより、相手の駒組みを制限させる利点があります。


一手損角換わり右玉としましたが、角換わりでも出現します。
(1)は村山慈明六段が穴熊で対抗する順を指したのに加え、羽生三冠が穴熊+△6三角と自陣角を打つ順を指し、プロの間では殆ど指されなくなりました。
(2)は6六歩・6七銀・7六歩・7七銀の形が多いかもしれません。
一手損角換わりでは、四間に振ってから右玉に組む順も見られます。


アマチュアの西川某氏が考案した、対振り飛車用の右玉。バランスが良く、四間飛車と相性がいいです。


牧野光則四段の奨励会時代の得意戦法(糸谷六段によると、牧野流は防御主体の戦法とのこと)を、糸谷哲郎六段がアレンジした対振り飛車用の右玉。
(1)は牧野流に近い防御重視の右玉、(2)はカウンター重視で攻め合う右玉です。

右玉三大バイブル

2012年10月16日 | 右玉
今回は右玉関連書を紹介。

■三大バイブル

1.毎日コミュニケーションズ編『右玉伝説』[絶版]
 毎日コミュニケーションズ編となっていますが、著者は故新井田基信氏。
 1991年に刊行された『秘法巻之四 右玉伝説』に書き下ろしを追加。
 新風車、矢倉右玉の定跡の解説が中心の名著。

2.細川大市郎『とっておきの右玉』
 著者は元奨のアマ強豪として知られる細川大市郎氏。
 細川流と呼ばれる角交換型右玉&左玉を解説した定跡書。
 地下鉄飛車や銀冠対策、△5四角の攻防、相右玉など右玉党にとって見逃せない解説があります。

3.伊藤果(著)/週刊将棋(編)『風車の美学』[絶版]
 風車戦法の育ての親である伊藤果七段による指南書。
 風車、新風車を伊藤七段の実戦を題材に解説。

3冊中2冊が絶版なので古本屋かネットオークションで手に入れるしかありません。
バイブル3冊を紹介しましたが、右玉の基本を学べる『右玉伝説』は絶対に入手すべし。

■三大バイブル以外で右玉について書いている棋書

 4.佐藤康光『康光流原題矢倉III』[絶版]
  第3章「原始棒銀編」になぜか右玉を収録。実戦を元にした解説が2例。

 5.【編著】島朗/【講師】佐藤康光・羽生善治・森内俊之『読みの技法』
  第13番「仕掛けの構図」で、トッププロ3人が右玉側を持ってどう指すのか、それぞれの読みを披露。

 6.所司和晴『中飛車道場 第四巻 6四銀・ツノ銀』[絶版]
  メインは矢倉流中飛車。第4章で風車を解説。

 7.週刊将棋編『手筋の裏ワザ』[絶版]
  右玉棒銀という変態戦法を紹介。

 8.週刊将棋編『裏定跡に決め手』[絶版]
  第2章「囲いと堅さの裏知識」で右玉の早逃げを紹介。

 9.村山慈明『アマの知らない最新定跡』
  第3章「一手損角換わり対右玉」で定跡を解説。

 10.阿久津主税『必ず役立つプロの常識』
  第1章「これがプロの常識」で3項目(玉の堅さと玉の広さ/右玉にはミレニアム囲いが有力/香を残し端攻めを逆用)に亘って右玉の将棋を解説。

 11.週刊将棋編『手筋の隠れ家』
  「右玉には強く攻め合う」「中段飛車で攻めをけん制」で右玉への逆襲を、「相手の絶好打を消す」で右玉の勝ち方を解説。

 12.佐藤康光『佐藤康光の一手損角換わり』
  第3章と第4章で一手損角換わり対右玉の定跡と実戦を解説。

 13.西尾明『よくわかる角換わり』
  角換わりでの右玉と、一手損角換わりでの右玉の定跡を解説。

 14.南芳一『南の右玉』
  南九段が得意としている後手番の戦術「南流」の指南書であり、右玉本ではありません。
  第1章「右玉対矢倉模様」で実戦を元にした解説が7例。

 15.橋本崇載『橋本流 中終盤急所の一手』
  第1章「中盤の分かりやすい戦い方」で右玉との戦い方を解説((7)相手の理想形を許さない)。

 16.佐藤康光『佐藤康光の実戦で使える囲いの急所』
  第6章「囲い崩しアラカルト」で右玉の急所・崩し方を解説。

■雑誌

 17.『将棋世界』2006年11月号・12月号
  糸谷哲郎六段による特別講座『糸谷流対振り飛車右玉戦法』(全2回)を掲載。
  糸谷流の定跡を学べるのはこの2冊だけなので、糸谷流を指したい人は絶対に入手すべし。

 18.『将棋世界』2010年8月号
  勝又清和六段の連載『突き抜ける!現代将棋』第11回「ブレークスルーは「桂」が担う」でミレニアム・菊水矢倉対右玉の将棋も紹介。右玉の失敗例として知っておくべき将棋が2局紹介されています。

 19.『将棋世界』2011年2月号
  勝又清和六段の連載『突き抜ける!現代将棋』第17回「一手損のパラレルワールド」で木村―羽生戦(羽生の△6三角)が紹介されています。

 20.『将棋世界』2012年1月号
  勝又清和六段の連載『突き抜ける!現代将棋』第28回「定跡の中の自陣角」で一手損角換わりの△6三角を2局(木村―羽生、佐藤康―羽生)紹介しています。

■サイト
 21.右玉最前線
  level.8が閉鎖された今、右玉の情報が充実しているのはこのサイト。

 22.雨玉物語
 23.花鳥風月
 24.風車の軌跡
  当ブログに時々コメントを書き込んでくださる鬼さんのサイト&ブログ。右玉の自戦譜が多数掲載されています。

 25.戦術と局面の検証室
  主にマイナー戦法を研究しているサイト。

 26.だっちゃんの右玉ワールド
  「将棋倶楽部24」伝説の対振り右玉使い・異邦人さんの棋譜があります。

南の右玉(2)

2012年05月19日 | 右玉
第20期銀河戦Eブロック8回戦(2012年2月28日放送)。
対戦相手の金井五段は、連勝賞を受賞したことのある若手実力者。

第1図は△4五歩に▲3七桂とした局面。

金井五段は対右玉のセオリー(「右玉にはミレニアム」)に則った駒組み。
ここから南九段が動きます。

△5五歩▲4五桂△4四角▲5七銀△5六歩▲4六銀△5一飛▲5三歩△5四銀左▲2四歩△同歩▲同飛△3三桂▲同桂成△同角▲3四飛(第2図)

△5一飛と転回させるタイミングが悩ましいですが、△5六歩と取り込んでから回りました。
お互いに駒の損得がない第2図の局面。ここで南流右玉らしい一手が出ます。

△9五歩▲同歩△9七歩▲8八銀△4五歩▲3五銀△4三金▲3三飛成△同金▲9七香△2一飛▲2四歩△2九飛▲9八玉△8五桂打(第3図)

△9五歩と仕掛けるのが南流の一手。『南の右玉』でも端攻めから相手陣を崩す順の解説がありました。
すぐに△4三金とするよりも攻めの足がかりを作る意味でも得です。
飛車角交換に成功し、狙いの継ぎ桂(△8五桂打)を実現させた第3図以降も端を重点的に攻め、108手で南九段が勝ちました。

振り飛車から右玉へ

2012年05月18日 | 右玉
個人的に好きな指し方ではないのですが、振り飛車から右玉に組み替える手法があります。

1.四間飛車編
▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲6八玉△3二銀▲7八銀△7二銀▲5八金右△4三銀▲9六歩△9四歩▲2五歩△3三角▲7九玉△6四歩▲7七角△7四歩▲8六歩△6三銀▲5九銀△7三桂▲6八銀△6二玉▲6六歩△7二玉▲8八玉△6二金▲6七金△3二金▲8七銀△4一飛(第1図)

四間飛車からの組み換えを得意としている方の将棋から取材。
急戦を相手にすることは稀で、大抵は穴熊か銀冠を相手にすることになります。
藤井システムの手順でいくと急戦でこられる場合があるので、右玉にしたいのなら振った直後に玉を上がるのが確実です。

2.中飛車編
▲7六歩△3四歩▲6六歩△4二銀▲4八銀△3二金▲6八銀△4四歩▲5八金右△5二飛▲7八金△4三銀▲6七金右△6二玉▲4六歩△7二玉▲4七銀△6二銀▲6九玉△6四歩▲7九角△7四歩▲5六歩△8四歩▲7七銀△9四歩▲9六歩△7三桂▲6八角△6三銀▲7九玉△6二金▲3六歩△5一飛(第2図)

自分の将棋から。
この記事のために無理矢理飛車を振ったのでイレギュラーな駒組みになりましたが、通常は穴熊を相手にすることになります。

通常の駒組みに飽きた方、ブラフとして使いたい方は試してみては如何。
普通に指すのがベストだと思いますが(笑)。