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Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

銹釉色絵 鶴首徳利

2021年07月30日 14時08分10秒 | 古伊万里

 今回は、「銹釉色絵 鶴首徳利」の紹介です。

 

立面

 

 

赤絵部分の拡大

赤の釉薬を掻き落として牡丹の花と葉を描いています。

 

 

底面

 

生 産  地: 肥前・有田

製作年代: 江戸時代前期

サ イ  ズ: 口径;2.1cm 高さ;22.8cm 底径;5.8cm

 

 

 この「銹釉色絵 鶴首徳利」につきましても、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で、既に紹介しているところです。

 次に、その時の紹介文を再度掲載いたしますので、補足としてお読みいただければ幸いです(^_^)

 

 

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        <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー162  伊万里銹釉色絵鶴首徳利          (平成23年9月1日登載)

 

   

 これはかなり珍しい。江戸初期に山小屋窯や百間窯で焼かれた「多彩釉」ともちがう。かといって普通一般の「色絵」ともちがう。

 と言うのも、赤と緑は、色絵用の赤と緑の色絵具を使っているので、「多彩釉」とは言えないだろうし、赤絵具の上に描かれている文様も絵筆で描かれているわけではないので、普通一般には「色絵」とは言えないだろうと思うからである。

 ところで、このような、めったにないような、これまでに目にしたこともないような物に遭遇した時、人は二手に分かれるようである。

① 一人目は、素晴らしい逸品と認める者
② 二人目は、「君子危うきに近寄らず」で、無視する者

 この鶴首徳利の赤絵具の部分には、牡丹の花と葉が描き落しで見事に描かれている。私は、その掻き落しで描いた牡丹の花と葉の素晴らしさと掻き落しで文様を描くという伊万里にしては珍しい技法を使用していることから、前者に属する者であることを自認するものである。

 

    江戸時代前期     口径:2.1cm  高さ:22.8cm  底径:5.8cm

 

 

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*古伊万里バカ日誌94  古伊万里との対話(色絵掻き落しの鶴首徳利)(平成23年9月1日登載)(平成23年8月筆)

登場人物
  主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  銹 彩 (伊万里銹釉色絵鶴首徳利)

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 節電が強く叫ばれた今夏も、どうやら峠を越えた感がある。
 主人は、夏を迎えるにあたり、ステテコ姿で家で引っくり返っていれば夏も過ぎ去ってくれるだろうなどとの甘い考えを抱いていたようであったが、現実にはそうもいかず、やはり厳しい夏を迎えたようである。
 主人は、その厳しい夏も峠を越え、ホット一息ついたところで、古伊万里と四方山話をしたくなったようで、押入れから古伊万里を引っ張り出してきて対話をはじめた。

 

 


 

主人: 今年の夏は暑かったな~。年々暑くなっているような気がするよ。地球がだんだん温暖化しているのかな~。特に、今年は、〝節電〝などがやかましく言われていたので、暑さに拍車がかかった。
 その点、お前達古伊万里はいいよな~、暑さ寒さは関係なしだものな~。

銹彩: そうですね~。暑さ寒さには関係ないですね。でも、冬はちょっと要注意ですよ。私なんか、液体を入れられて厳寒の中に放置されたら、その液体が凍結して膨張し、割れてしまいますから・・・・・。私のような鶴首形の徳利には、よく胴にヒビが入っているものが見られますね。多くは染付のものに多いようですが。  

主人: そうだね。お前のような鶴首形の徳利は、一対で、神前に御神酒徳利として供えられることが多いから、御神酒が入れられたままに厳冬の中に放置されると、それが凍結して胴にヒビが入っちゃうよね。
 その点、お前には胴にヒビもないし、染付でもないから、御神酒徳利として使用されたんではないようだね。

銹彩: そのようですね。私が御神酒徳利だったとしますと、落語の「御神酒徳利」に出てくるような面白いお話しの展開が期待出来たんですが・・・・・。残念です。

主人: まあな。でもね、落語の「御神酒徳利」に出てくるような多彩な話しの展開はないが、お前を手に入れるに当たっては多少の経緯はあったんだよ。 

銹彩: どんないきさつですか。

主人: お前のことは平成12年に或る地方都市のちっぽけな骨董市で買ったんだ。骨董市といっても、青空の下でのそれではなく、公共の建物の中の小さな会議室を2~3室借り切って行われたものだった。私だって、普通なら、そんな小さな骨董市などにわざわざ出かけて行くわけがないし、その地方都市だって我が家からはけっこうな距離にあるので行く気にもならないところだったが・・・・・。

銹彩: どうして行く気になったんですか?

主人: あっちこっちの骨董市に出展していた業者さんから、「今度、○○で新規に骨董市を開催しますので、是非お越し下さい。」という旨の案内状をいただいたんだ。その業者さんからは何点か購入していて顔馴染みになっていた。
 その案内状を見て、「そうか、あの業者さんは、今度は独立し、自分で骨董市を主催する立場になったんだ! 出世したんだ!」と思ったよ。 ただ、案内状をよく読んでみると、出展業者の数は少なく、かなり規模も小さいことがわかったが、一応、義理立てして、行くだけは行ってみるか、顔だけでも出しておくか、という気持ちで出かけたわけだ。

銹彩: そんな所に私は置かれていたんですか。

主人: そうなんだ。そんな所でお前と出会ってしまった(~_~;)  困ったよね~(>_<)  だって、義理で顔だけでも出して帰るつもりでいたから、全く古伊万里など買うつもりはなかったし、お金も少ししか持ってなかったのでね~。
 案外、新規に骨董市を開催するとなると、出展する業者さんも心機一転、張り切って、取って置きの物を提供することがあるんだね。
 ちなみに、その業者さんは、お前のことをずっと前に気に入って買ったんだそうだよ。商売をするようになって、だんだんと手持ちの商品も少なくなってきてしまって、今回、押入れの一番奥の方に仕舞い込んでおいたお前を目玉商品として出品することにしたんだそうだ。
 それはともかく、そんな時は困るよね~。「お金がない、でも欲しい!」ということで(~_~;)
 その業者さんとは顔馴染みではあるが、「お金なら何時でもいいよ! 気に入ったんなら持って行って!」というような会話が出来るほどの親密な間柄ではなかったんでね・・・・・。

銹彩: でも、なんとか工面がついたんでしょう?

主人: お金の工面がついたというよりは、私が、「欲しいんだけど、今、持ち合わせがないしな~」などとつぶやいていたら、先方が、「お金なら何時でもいいですよ。気に入ったのなら持って行かれても結構です。」と言ってくれたんだ。先方としては、せっかく新規に骨董市を開いてはみたものの、やはり規模が小さく知名度もないので、ほとんど来店者が無く、物は売れずで、困っていたんだね。それで、貸し倒れの危険を覚悟でそんな提案をしてきたんだと思う。
 それで、先方には、私の住所、氏名、電話番号を教え、先方からは代金支払のための銀行口座番号を教えてもらって、無事お前を連れ帰ることが出来たわけさ。

銹彩: めでたしめでたしでしたね。

主人: まあね。私にとってはめでたしめでたしだったけれど、先方にとってはそうでもなかったようだね。

銹彩: どうしてですか?

主人: 先方としては、見栄を張って、「お金なら何時でもいいよ!」なんて言っちゃったけど、本当に払ってくれるのだろうか、何時払ってくれるのだろうかと心配になったようだね。それから2週間ぐらいしてから、やんわりとした督促のようなお手紙が届いたから。
 私としては、「お金なら何時でもいいよ!」という言葉を真に受けて、「何時でもいいんなら、来月の給料をもらった時にでも支払えばいいか。それで十分早いほうだろう。誠意のある支払いだろう。」と思っていたんだ。
 ところが、そのような督促状のようなお手紙が届いたもんだから、「これは悪いことをしたな。迷惑をかけたな。」と思い、その翌日にはお金を工面し、銀行口座に振り込んであげたよ。

銹彩: それで先方も安心しましたね。やっと、双方、めでたしめでたしになりましたね。
 ところで、何故、私の名前は「銹彩」なんですか?

主人: ハハハ。「「銹釉」が特徴的だし、「銹釉」と「赤に緑」の釉薬の色彩が特徴的だ。特に、「赤」の釉薬に掻き落しで牡丹文が描かれているところなど、古伊万里の中では秀逸だね。古伊万里の中では秀才だ。そんなところをひっくるめ、「秀才」とのモジリで「銹彩」としたのさ。

銹彩: ありがとうございます(嬉しさのあまり感涙)。

主人: (豚もおだてりゃ木に登るってか、、、、、と独白) 

 

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