友達が帰った後で、あまり物言わぬ母が、「あの子は良い子だ。きっと良い先生になるよ!」とべた褒めした友達がいた。「なぜ」と聞くと、母はただ一言、「食べっぷりが良い。」という。ただそれだけのことで、分かるもんかと反発も感じたものだった。また、あるとき、別の友達を連れてきたとき、母はただうかない顔をしていた。俺は、どうもその友達は歓迎されなかったようだと感じ取った。友達と2人でいるときに、何か嫌いなものあるか?と聞いてみたら、嫌いな食べ物は魚、でも、刺身は食べるという。当時の俺でも、「なんだこいつは、相当甘やかされて育ったな!」と思った。
後々に話し。前者は、後に、校長先生を歴任し、教師仲間からの信頼が厚かったようで、退職後は、請われて教育長の職についた。一方、後者は、大学院まで出て、地方公務員になったものの、仕事に身が入らなかったのかどうなのか、心的な病気を理由に長期にわたって働いたり、働かなかったりで、低調な生活を送っていたようで、ついに退職を勧告され、定年までもたずに、離職した。当時、メールで相談に乗っていたのだが、煮え切らないし、覇気が全くない。友達である私も、「だめだ、こりゃ、どうしようもない。」と放り出したくなることしきりだった。
食は基本中の基本だから、そこに、人の有り様を端的に現わすものなのかもしれないと改めて思う。