いつも母に叱られていた父だった。俺はそんな父が何となく好きだった。そうそう。好きだったのだ。そりゃ、母が怒るのも無理はないわなぁ。仕事をやっているとき、ちょっと目を離せば、近所に出かけていって、話し込んでなかなか帰ってこないわけだから、仕事が捗らない。父は母に叱られても、反撃したりすることはほとんどなかった。本当にだめ亭主、母の言いなりで、威厳なんてあったもんじゃない。だから、けんかなどはほとんど見たことがなかった。
父母がけんかしたのを見たのは、唯一、選挙のときだった。父は、「が推薦する候補に入れろ!」と母に迫った。母はきっぱりと、「誰に入れるか入れないかは私が自分で決める!」ときっぱり言い張り、一歩も譲らない。そりゃ、父は怒るは怒る、ただ手を挙げることはなかったように思うが、実際はどうだったのだろう。母の言うことに利があるのは当然だが、一方、父の気持ちも分からないではなかった。母も相当の頑固で、いったん言い出したことは絶対に曲げない人だった。そんな母を見て、俺は「こんな人は絶対に嫁にはしないぞ!」と内心思っていた。
しかし、現実は?何としたことか、母の性格は、妻にそっくりだ。妻からがみがみ言われたとき、ふと、父母のかつての姿を思い出してしまう。そして、俺もやっぱり父と同じだ。ところで、息子たちには、俺はどう映っているのだろうか。まあ、嫌われてはいないと思うのだが・・・・・・・・、そう思うのは私だけかも・・・・・・・・。