羊蹄学園大学社会学部講義集

北の大地に突如としてできた架空の大学。
かつてないテーマで綴る社会学とは?

佐山武雄の塾戦争第16回~影のプロローグ(1)~

2006-01-04 10:28:25 | 塾戦争影のプロローグ
(1、白石区闊歩)
あけましておめでとうございます。

沖縄論の番外でこの講義集の2006年は幕を明けましたが、塾戦争はここからが新年のスタートです。
昨年以上に、この塾戦争はパワフルに展開させていきます。
どうかよろしく。

えー・・・
正月というのは塾業界にとっては「正月特訓」などと銘打って、一年で最も頑張る時期にさしかかります。
「塾戦争」でこれまで取り上げた塾のいくつかもそのような状態です。

この「塾戦争」は前回までは「光」の部分をやってきました。
年が明けた今回からは「影」の部分をやっていこうと思います。

今日はまず、私の小さな珍道中にお付き合いいただき、更にもう1コマ…要するに新年から2コマ講義します。

私は昨夏、そして正月直前と2回、札幌市白石区を歩きました。
そう…進学会の本拠地であり、秀英の北海道での本拠地があるところです。

まず、白石区役所から数百メートルほど進んだ、国道12号線沿いに、秀英の北海道での拠点「札幌白石本部」があります。
私はその本部の前にまずはたどりつきました。
目的はただひとつ、秀英の活況ぶりを校舎の外観を眺め、そこから何かを感じ取るためです。
校舎はこんな感じです。



私は辺りを見渡してみました。
札幌の、というよりは北海道の大動脈とも言うべき札幌と旭川を結ぶ片側二車線の国道12号線が目の前にあり、ひっきりなしに車が走っています。
このことから一見、交通の便がよさそうに見えます。

ところが、ここは別に交通の便はよくありません。
JRや地下鉄の駅があまりに遠く、公共の交通機関はバスしかないからです。
たとえば「説明会」を開催するにしても、近所に手頃な駐車場はありませんから公共の交通機関で…と言ったところで、その交通機関があまり存在しない地域なのです。
そんなところに本部教室を置いてよかったのか?と私は疑問を呈してしまいます。
500メートル圏内には進学会(北海道では北大学力増進会)の白石中央会場があります。



市内の中堅学習塾である、ニスコ進学教室の白石教室だってあります(下の写真の2階部分)。



近くの歩道橋からすべてが見渡せます(極めて下の写真だと見えにくいが、右手前が前述の増進会の白石中央会場、その横の白い看板の隣が前述のニスコの教室。更に2軒先に秀英の白石本部がある)。



それらは本部教室ではなく、ただの分校教室…すなわち徒歩・自転車で通う、、近所に住む生徒のための教室です。
しかしこの白石本部は違います。
拠点教室なだけに結果として、遠方の生徒を抱えることとて十分あります。
その時、この立地は塾という教育施設にとってよいと言えるのかどうか。

ましてその国道12号線をはさんだ向かいは、エロビデオ販売店ですし、周辺地域は古くから開けた地域で、このような歓楽街となっています。



更に秀英のこの本部教室の場所は、一見区役所にも近く、札幌東部の中心と見られやすいでしょうが、実際には幹線通りに面しているだけで交差点にあるわけでないため、素通りされやすいとも言えるでしょうし、何より周りの建物に隠れて、5階建てと言っても意外と目立ちません。

立地に難があるのでは…。
中部ではいざ知らず北海道での知名度では皆無に等しいというのに、この立地では…と思いながらも、視線を変えてみることにしました。

本部校舎の、国道側の壁は全面がガラス張りで、入り口のガラスには講習会のことや実績のことが書かれた紙がベタベタと貼ってあります(どこの校舎でもそうですが)。
要するにウリ文句が書いてあるわけです。
それを見て私はあることを思い出し、そして非常に秀英にとって北海道進出は明るいものに思えてきました。

確かにこの本部の立地だけ見れば難がある。
また、校舎前に止めてある、通塾生徒の自転車で生徒の多い少ないを瞬時に判断するのは困難です。
でも…それでもなお、北海道で進学会や練成会の二大勢力に割って入って、三強などという扱いにまで、たどりつくくらいの、秀英の北海道の塾業界における「躍動」を私は予感するようになりました。

そして…秀英の白石本部を仰ぎ見た私は、この塾業界の見聞の記録が新たな段階に入ったことを予感しました。

それはこの講義の新展開を意味します。

…といったところでもう1コマ。
それでは、また。
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特別企画:喜茂具理佐、「沖縄」に会う(4)

2006-01-02 12:10:52 | 沖縄論
(つづき)
9時半近くなり、私が店を出ることを意識したころ、娘さんが手作りの「よもぎクッキー」を「よかったらどうぞ」と差し出してくれた。
思いもかけないことで驚いてしまった。
食すと、あまり「よもぎ」の味はしないが、しかし悪くない。

9時半で食事はラストオーダーというのに9時半過ぎに若者2人組がやってきた。
娘さんがどういう対応をとるかと見ていたが、娘さんはいやな顔せず応対し、注文を迷う若者のために待っていた。
陳腐な言い方だがいい娘さんである。
服装は独特だが、しかし物事に対するセンスも悪くなさそうだ。

娘さんが私のところに来て、やはりラストオーダーであることを告げた。
帰る気だったので、それを流し、私はクッキーのお礼を言った。
差し出されたクッキーは小さな小皿に乗っていたのだが、その皿には「石垣島」の文字と美しいハイビスカスの花の絵が描かれていた。

この美しさをきちんと見る日は来るのだろうか。

そんなことを想い、私は店を出ることにした。
お会計は高くもなく安くもなく。
というより相場がわからないのでなんとも判断できず。
そう…結局、常にここで口にしたものは「意外」とか「驚き」がまずあって、旨い不味いの判断がつかないままであった。
娘さんに金を支払うと、「また来てくださいね」
「うん。北海道なんでなかなか難しいけど、是非」
そんなことを言って店を出て、代田橋の駅に向かった。

再び足を運ぶのはいつの日か…

それにしても…
飲み食いしただけと言えばそれまでだが、非常に私の中には充実感があった。
無論、娘さんの存在があったからこそと言えよう。
しかし、それだけではない。
舌で初めての沖縄のものを「体感」したからこそ、である。

と同時にそれは私の「沖縄論」の最大の弱点である。
「体感」が少ないのである。

だがここは難しいところで「体感」が少なくても、あの「沖縄論」は、今までにない視点論点だったという「自負」もある。

今日の「体感」と今までの「自負」の狭間で今後どうあるべきか。
難しいところである。
単に「好き」だからと沖縄というブランドに飛びつく輩とスタンスは明らかに違う分、尚更。
しかしまぁ、本当のところ答えは簡単だったりするのだが…

真っ暗闇の商店街を抜け、歩道橋を渡り、代田橋の駅に出た私は、10時近くの闇の中を京王線で、新宿に向かった。
今後、私の沖縄への向き合い方はどうなるかはわからない。
「沖縄論2」をやるにしてもどういう内容かはわからない。
だがひとつ、はっきりしていることがある。
それは、もう1度あの店「たきどぅん」に足を運びたい、と強く思ったことである。
しかしそれは単純に「いい店」と思えたからであって…

「沖縄」との小さな出会い。
たったこれだけのことではあるが、しかし私にとって大きなことであった。

…数日後、「たきどぅん」の箸袋とオリオンの缶は我が家に飾られた。

私の思いはますます強くなった。

(おわり)

特別企画:喜茂具理佐、「沖縄」に会う(3)

2006-01-02 12:10:27 | 沖縄論
(つづき)
私が最初店に入った時には、客はカップル1組だったがいつの間にか客は増えていた。
「ものすごい常連」らしき人はいなかったが、何度か足を運んでそれなりに手慣れている者、そうかと思えばあまり「沖縄家庭料理」という看板を意識せずわけもわからず食べている者がいた。
私はそういう光景は健全だと思う。

実のところ私はこの店、というよりは「沖縄タウン」そのものが在京の沖縄出身者と沖縄マニアやファンと世間では言われる、私に言わせれば何の知識も無くイメージで飛びついた「沖縄狂」的なる連中で埋め尽くされているのではと考えていた。
様々な人がいる、という点ではそのような人々の存在を否定する気は無い。
しかし客層のバランスが悪くなるのはいただけない。
開かれた、みんなの店であるべきだ。
そもそも知識や旅行の経験がなくても、熱狂的に「沖縄好き」でない人間が足を運んだって本来、悪い事では無いのだ。
…と考える私にとってこの客層は誠に心地よかった。

そう…私だって「沖縄に思いをいたす者」ではあるが、「沖縄ファン」でも「沖縄狂」でもない。
だからこそ、あのような講義ができたのだ。

ではなぜ沖縄タウンに来たかと聞かれれば、それは「確認」である。
私の沖縄へのスタンスや考え方は本当に間違っていないのか。
「体験」や「実地調査」が全てを凌駕するほど正しいことなのか。
ただそれだけである。
そしてそれは…前述の新聞記事の一件である程度、答えが出たような気に、私はこの時なっていた。

それにしても…店に入った時に棚を整理していた店員であるが、娘さんは客が多くなったにも関わらずスキを見て店のレイアウトをいじっている。
「たんかん、って知ってます?」
「いや知らない」
「沖縄のみかんなんですけど、甘いんですよ。その100パーセントジュース、飲めるんですよ。そのレイアウト…宣伝ですけどね」
「ふぅん…」
といったところで言葉に詰まった。

なぜなら、「本土のみかんとどう違うの?」と聞こうと、「ほ…」が出掛かったとき、瞬間言うのをやめたからである。
私は「そこら辺のみかんとどう違うの?」と聞きなおした。
「甘くって、大きさも違って…」と娘さんは壁に張るジュースの宣伝レイアウトを持ちながら説明してくれた。

私はその説明を聞きながら、ひとつ骨身に染みて感じることがあった。
それは自分の無知。

たとえば「本土」という言葉。
これは私は思わず使いそうになったが、本来その「本土」と呼ばれる地域に住む人間は使ってはいけないのではないかという躊躇いがあって、結局使わなかったが、それは果たして正解だったのかどうか。

また、店に入ったときから他の会話に関しては堂々と店員と交わすものの、メニューを見て注文する際、自分のイントネーションがきちんとしていないのであろうという恥じらいもある。
顔を上げて相手の目を見てメニューを言えないのだ(情けない)。

うまく言えないが、微妙な点で、向き合い方が難しいのである、わからないのである。
考えすぎといわれればそれまでなのかもしれないが…。

娘さんの奔放さ、店のマイペースさ、それだって、個性なのか俗に言われている細かいことにこだわらない「沖縄らしさ」というやつなのか…どう評してよいかわからない。
出されたものの相場も味もこれがよいのか悪いのかわからない。

沖縄論で述べたように足を運ぶことが絶対的な善とは思わない。
今もそれは変わらない。
しかしだからと言って足を運ばないことが絶対的な善とも言えない。
ならばいかにすべきか。
酔えば陽気になるはずの私、しかしオリオン2本で酔えないのは…。

そして、この店での飲み食いでこんなに考えさせられることがあるとは…

結局、私は「たんかんジュース」を注文した。
北海道出身の私だが、静岡との縁も深く「みかん」にはうるさい。
で、一口。
甘い!
なんだこれ、100パーセントみかんジュースにありがちな微妙な酸っぱさがまるでない。
「こんなに甘いの!?」
「そうなんですよぉ!」と得意げに言う娘。
そりゃ得意げにもなるだろう、宣伝もするだろう、こんなに甘いのだから。
しかもこの甘さはしつこさやくどさがない。
喉をすーっと通る甘さだ。
何というのか清々しい。
また新たな「出会い」である。

…ふと気がつけば、時間は8時前に入店したのにすでに9時過ぎである。
店の人間が減っているようだ(閉店は10時半)。

客も退店しだす。
娘が会計時に客を想いしきりに外の寒さを強調している。
そろそろか私も、か。

特別企画:喜茂具理佐、「沖縄」に会う(2)

2006-01-02 12:10:15 | 沖縄論
(つづき)
壁には沖縄関連のものが多く掲示されていた。
店内では三線のコンサートなどもするらしく、その方面のものが多い。
…といったところで、ある映画の宣伝ポスターが目に付く。

「ニライカナイからの手紙」

映画のタイトルを耳にした事があるだけで、内容も評判も知らなかったのだが、その壁に貼られたポスターの出演者のところに北海道・札幌を拠点に活動している役者の名を見つけた。
彼の舞台作品は見た事があったからこそ、名前を覚えていて気が付いたのだが…しかしなぜこの映画のポスターを貼ることを選んだのだろうか。
…ということで、この映画とこの店の関係について看板娘に聞いてみた。

「この店の名前の竹富島で、撮ったんですよ…沖縄の映画は竹富で撮ったのが多いんですよ」
と教えてくれた。
なぁるほど…「たきどぅん」という店名は「竹富島」という意味だしなぁ。

で、「この映画は見たの?」と聞いてみた。
「それがねぇ…見てないんですよ。見てないのに貼るなってねぇ。キャハハハ」
「そうだよねぇ…貼ったからって見ているとは限んないよねぇ」
と他愛も無い展開。
ここで断っておくが、「キャハハハ」と屈託なく娘さんは笑ったのだが下品な笑いではなかった。
むしろ屈託の無さがすがすがしく感じた。
それは彼女の人柄によるものか、それとも…。

私はこの映画の出演者の中に見覚えのある札幌の役者がいることを話した。
そして「まぁ、同じ日本だからね…」とまとめ、娘さんも笑った。
他愛も無い話とは言え、安易なまとめだったか。

店には「八重山毎日新聞」が置いてあった。
しかし4日前のもの。
仕方ないとは言え、距離を感じるが、とにかく広げてみる。
何の事は無いローカル地方新聞。
2面なのに芸能人の結婚の記事が書いてあるというアンバランスさはあるが、これもまたよし。

気になる記事を見つけた。

【那覇】総務省が12月1日公表した地上デジタル放送の中継局ロードマップによると、沖縄ではNHK以外の民放が先島地区と大東島での中継局の開設時期について「検討中」とし、まだ放送時期が確定してないことが分かった。2011年7月24日で現在のアナログ放送は停止され、デジタル放送に全面移行されるが、先島がデジタル放送でも再び遅れが出ないか懸念される。

結局、こういうことなのだ。
私は「沖縄論」で訴えた事の一つに「沖縄は基地や歴史、風土や観光のみではない」という点がある。
すなわち、そのような枠組みの中に直接いない現地の人間がいるはずだと。
そして別の問題で四苦八苦したり考えたりしている人間がいるはずだと。
だからこそ創価学会やらを取り上げたし、基地や歴史に触れるにしても別視点から抉ったのだ。

この記事ははっきり言って私の考えが「それなりに」正しかった事の一つの証明ではないか。
これも十分な「沖縄の問題」であろう。
沖縄の人々はこういうことにも声高に言及しなければならないのではないのか。
少なくとも一ローカル地方紙で終わらせるわけにはいかないだろう。

私は酔いを楽しみたかったが、疲れたこの体に「泡盛」はきついと判断、2缶目のオリオンに口をつけた。
八重山かまぼことスクガラスも頼んだ。
1缶目のオリオンは記念に持ち帰る事にした。
娘さんに頼んで了解をもらい、しかも洗ってくれた。

かまぼこは…特に言う事は無いのだが、スクガラスは驚いた。
塩辛という話だったが、塩の部分のみが強調される。
一言でいえばしょっぱい。

あぁ…そういえば一度「スクガラス」を頼んだ際、直後に店の兄ちゃんが「スクガラス豆腐ではないんですね」と確認してたっけ。
そのときは「いいえ」ときっぱり言ったし、何より「豆腐と厚揚げを食べておいてまた豆腐なんて…」と心の中では思っていたのだけれど…なるほど、豆腐あるといいかもね。
少なくともこれだけではしょっぱい。
いくらスクガラスが珍しくてもキツイ。

思えば厚揚げが出されたときに、しょうゆがついてきて、厚揚げに何気なくかけたのだけど、そのときそのしょうゆが「石垣」と書いてあるのに気が付いた。
私は手に一滴落としてみて、試しになめてみた。
塩の部分が強く、ひたすらしょっぱい。

…ということを鑑みると、沖縄の食文化は「塩」がひとつのキーワードなのだろう。
ということを娘に話してみると「それに揚げ物がおおいかもしれませんね」とのこと。
なるほど、メニューは揚げ物が多い。
まぁ北海道の場合、「温くなる」ために鍋などを食し、塩辛も辛味をつけるが、沖縄はそういう必要性がないからなぁ…と勝手に解釈する。

「食」ついての知識が疎い私にとって、様々勉強になる事が転がっている中、気が付くと時間は着実に流れていた。

特別企画:喜茂具理佐、「沖縄」に会う(1)

2006-01-02 12:10:04 | 沖縄論
明けましておめでとうございます。

新年第1回目の当講義集は、沖縄論番外編ということで喜茂具理佐氏による、特別企画(全4回)をお送りします。
なお、次回より佐山武雄氏による塾戦争の講義に戻りますので、ご了承ください。
(事務局長・どーくん)

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沖縄論(未受講の人は左のカテゴリーから沖縄論第1章から順々に参照のこと)の講義が終わり、数日。
塾戦争の講義が始まり、私はここにかかわる必要がなくなった。
ぽっかり開いた空白を、私は旅…北海道からの南下で埋めようと思った。

だからと言って沖縄を目指したわけではない。
少しだけの南下である。
東北、北関東、そして東京への周遊。
私にとっては大きなことであるが、まぁこの広い世界では小さなことではある。
しかして私にとっては大きな出来事。

東北では「あなご」
北関東では「あんこう」
…とまぁそれぞれの地域で旬のものを食べ、よき思い出を作った一方で、強行軍の日程で東京に向かう頃になると私はくたくたになっていた。

寝たい…

しかし東京に降り立った私はそのまま向かおうと決めていた場所があった。
たとえ疲れていようとも。

新宿から西へ京王線で2駅。
代田橋の駅から徒歩10分ほどのところに「和泉明店街」というのがある。
さびれかかった商店街だが起死回生の策として平成17年に講じたのが、商店街内に沖縄に関する店を数店立ち上げたこと。
その店の連なりのことを「沖縄タウン」いう。
私の東京での目的地である。

場所はわかりにくい、ということはない。
ただ…それなりに広域な商店街なのにも関わらず、「沖縄タウン」「沖縄関連」の店は7店ほど。
これでは、ものの何秒かで「沖縄タウン」を通り過ぎてしまう。

うーん…
あとで調べてみたのだが、この「沖縄タウン」は地元の自民党女性区議の強力な肝いりで始めたらしく、どうもきな臭い。
というより、この「沖縄タウン」は結局、何かに利用し利用されたのだけなのではないか、そう考えるとこの「沖縄タウン」自体の中途半端さとあいまって憂鬱になる(ちなみにこの区議は昨年の都議選で落選するが直後の総選挙で大阪から立候補し当選する。いわゆる小泉チルドレンである。ますます胡散臭い)。
しかしここに息づく人々に罪はない。
少なくともそう信じたい。

それにしても…
日曜の夜7時過ぎである。
「沖縄タウン」というより、商店街自体すでに閉店している店が多く、何より暗い。
私の脳裏に暗雲が立ち込める。
足を運んで正解だったのか…。

意を決して肉屋の脇の細道を歩いてみる。
店が数軒。
しかしシャッターが閉まっている店が多い。
あげく開いている店も帰り支度を始めている。
それでも店先をのぞく。
「ちゅら館」という店。
何やら沖縄の食べ物が並んでいる…が、無知な私には何がなんだか。
あげく私の背後で「どうやって帰るか」の話を店の人間がしている。

…なんだろう、この状況。
とても、いずらい。

三線を練習している人がいた。
それを見て、顔を先に向けると「たきどぅん」という呑み屋らしき店。
南国ムードをつくっているようで、しかしあまりその雰囲気はないが…。

店先にあったメニューを眺める。
無知な私には何がなんだか。
えぇい…店の扉を開ける。

目に飛び込んだのは数人の店員。
何やら棚を整理している。
客は若いカップルのみ。
私は奥の席を陣取った。

お通しがくる。
持ってきたのは若い娘さん。
古い言い方で看板娘というやつか(ホントに古い表現だな)。
メニューを眺める。
やっぱり無知な私には何がなんだか。
「…」無言のまましばし硬直。
さすがに娘さんは「決まってからお願いしますね」と愛想良く言って去る。
私は「すいません」と頭を下げる。
娘さんはそんな私に非常に恐縮したようだった。

思えば直前に新宿のマックで食事をしたのだった。
だからこそ決まらないというのもあるのだが、やはり何より何の知識もないというのがメニュー決定に際しての私の思考を停止させたのだろう。

あとは疲れだろう。
「島らっきょ」と「島豆腐」を注文しようとしたが、なぜか「島豆腐」と「厚揚げ」を注文している始末。
何で似たようなものを…。
自分が恨めしくなってくる。

それにしても…その疲れのせいだろうか。
はじめてオリオンビールを飲んだが、ものすごくストンと喉を通るし、クセがない。
飲みやすさを重視する私には非常に合う。
否、一番合うといっても過言ではなかろう。
もっとも疲れのせいでなければの話であるが。

目を向けると娘さんがカップルと私の2組しかいないのに、ゴーヤチャンプルを間違えて私の方へ持っていこうとする始末。
思わず苦笑。
すると娘さんは私に笑顔で愛想良く言った。
「今日は日曜だし外は寒いんで、お客さんが来ないかと思って、さっきも泡盛の棚の整理をしてたもんだからバタバタしちゃって…」
あぁなるほど、だから店に入ったときに棚を整理していたのか…でも間違えそうになったこととの関連としてはどうなんだろ。

私はここで「あぁそうだよねぇ…僕は北海道から来たんでこの寒さは…」と自分の身の上を語った。
娘さんは驚いたようなリアクションで「この寒いのに随分冷たいもの注文するなぁ、って思ったんですよ。」
どこまで本気で聞いたかわからないが、とりあえず北海道の寒さについて娘に語った。
でもこれは、本州の人間などにもよくする話で、別に沖縄だからどうのこうのというわけではない。
むしろこちらとしては語りなれたことなので少し辟易する。
ちなみにこの店の人間はみな、沖縄出身のようだ。

豆腐と厚揚げとお通しをつつき、オリオンを飲みながら、店を見渡す。
案の定であるが、沖縄のものばかり。
そしてあるものに気がつく。
(つづく)