ポートランド日記

米オレゴン州ポートランドでの生活模様

ハッピー・イースター!

2009年04月13日 | イベント
多くのアメリカ人にとってもっとも重要な日は感謝祭(サンクス・ギビング)だという。宗教的な意味合いを超え、うまし糧とその糧を手に入れるための職、そしてそれを分かち合う家族や友人・知人がいることを感謝する機会だからだ。

では、キリスト教という宗教で一番大切なイベントは何かと問われれば、クリスマスよりイースター、と答える人が圧倒的に多い。もとより、クリスマスが12月25日というのは何の根拠もなく、サンタ・クルーズにちなむ北欧の民話や祭事とつながって普及しただけ、と考える人がいるだけでなく、キリストが誕生した日よりも、彼が万人の罪を背負って死に、その後蘇ったことの方がよほど宗教的意義がある、と考える人が少なくないからだ。

なお、イースターもキリストの死とそれに続く復活が、長い冬から生物が目覚め春が訪れることと、当時の民間伝承と結びついてその教義の普及に貢献したことはクリスマスの起源と同様であるが、なんとイースターは前後90日間を指すとされる長期的な宗教行事。東方教会など、宗派によっても差異はあるが、アメリカでメジャーなプロテスタントでは、イースターの週から47日前からイベントがある。

まずは、レントと呼ばれる、キリストが荒野を40日間断食しながら彷徨った苦行に倣い、肉食や贅沢を控え、あるいは自分の悪習(喫煙や飲酒など)や自分の好きなことを予めあげつらって、その期間は我慢する期間で、人によっては大好きな食後のデザートを諦めたり、TVドラマを見ない、といった誓いを立てる人もいる一方、中には断食をする人も。

そして、レントの前日から数日前は、その苦行(?)に備え、大騒ぎしてお祝いをする。欧米では特に前日を“Fat Tuesday(肥ゆる火曜日)”あるいは“パンケーキの日”と言い、いつものパンケーキに様々豪華な中身を加えて焼いて食べたことに由来していて、人々は豪勢な食事を楽しむ。また、世界的に有名なリオのカーニバルも、このレントの直前に行われ、禁欲の日々を目前に大騒ぎする。(ちなみに“カーニバル”は謝肉祭という意味で、肉食を語源とする)

たらふく食べて遊んだ翌日は、“Ash Wednesday(灰の水曜日)”と呼ばれ、いよいよ46日間のレントに突入(キリストの苦行は40日だが、日曜日はキリストを称える休日としてカウントしないため46日となる)。その間人々は禁欲の日々を送り、教会や自宅で祈りを捧げる。

次なる宗教的クライマックスは受難習慣と呼ばれるイースターまでの1週間で、日曜日はガレリア地方に住んでいたキリストがエルサレムに召還され、入城を果たした“Palm Sunday”と呼ばれる日で、キリストがロバに乗り、人々が棕櫚(=椰子)の葉を敷いて歓迎したことにちなみに、椰子の葉を用意し、ロバまで農場から借りてきてその場面を再現する教会も。

翌日の月曜から水曜までも当時のキリストの故事にちなんだ行事があるが、私が参加したのは、“Maundy Thurday”と呼ばれる、キリストが12人の弟子達とユダヤの祭り過越を祝うため最後の晩餐を開いたことにちな夜から行われる行事。前述の“教会に行こう!①”の教会に、友人が招いてくれたもので、“パンは私の身、ワインは私の血と思いなさい”というキリストの有名なフレーズに倣い、信者達が中央の牧師が持つパンを契り、ぶどうジュースの入った盃に浸して口に入れる儀式を行う。中央に12本とそれより長い1本の蝋燭が灯され、信者が一人ひとり故事にちなんだ説教をしながら、蝋燭を消していき、最後にイチバン長いキリストを表す蝋燭を消す。パイプオルガンの音色が響き、なかなか厳かな雰囲気だった。

翌日は、“Good Friday”と呼ばれるキリストが十字に掛けられ死んだ日であり、正午12時から、近所の7つの教会が集まっての合同Serviceが行われた。信心深い人がいる一方、多くは日中は働いていて、さすがに宗教行事のために休暇をとってまで参加する人は多くないためか、合同で開催しないとなかなか信者が集まらないのかもしれない。なお、キリストの死亡日をなぜ“Good”というかと言うと、彼の死により彼の愛と許しが万人の下へ光臨した記念日であるから、とのこと。キリストが磔になってから最後に述べたといわれる7つの句を追悼するもので、それに従い灯された7つの蝋燭も順々に消され、最後は真っ暗になる。この教会もキリスト像はなかったが、壇上向かって左に置かれた木製の十字架には黒い喪布が掛けられていた。平日の正午、それでも100人前後の信者が集まった。

キリストが死んで3日後である日曜日に彼の復活を祝うのがイースター。クリスマスとこの日だけは教会に行く、というアメリカ人も多く、中には家族連れで、または正装した人々もいて、各々の教会の周りには多くの人々が集まっていた。私が朝から行われるイースター礼拝に参加した“First Immanuel Lutheran Church”では、信者の子供たちにはエッグハントと呼ばれるゲームが開催され、固ゆでしたゆで卵や中身を抜いた殻に絵を描いた卵を隠し、バスケットを持った子供たちに探させるもの。その後、満席の教会に、聖歌隊と共に牧師さんが入場し、ハレルヤ・コーラスなどの賛美歌をみんなで歌い、牧師さんの読むイースターに関連する章句をみんなで唱え、牧師さんの説教を聴く。この教会は夫婦で牧師を務め、説教は奥さんである牧師さんが。最後はお決まりの“パンとワイン(ぶどうジュース)”を信者が食べてキリストへの信仰を確かにする儀式を行い、その後キリストがもたらした平和を享受すべく、みんなで握手をし合う。列席した私もパンをぶどうジュースに浸して食べ、みんなに握手を求められる。

これで一通りのイースターの礼拝が終了。その後、この教会に誘ってくれた友人が夜に自宅で開くイースター・ディナーにも誘ってくれた。市の北側にある見晴らしの良い高級住宅街にある彼女の家は築100年以上という古いものだが、窓が多く、造りもしっかりしている上、キレイに改築されてなかなかステキ。肉等を絶っていたことから、今日は七面鳥やローストビーフが供され、また参加者は大人だけなのに、ゆで卵をみんなで着色して遊んだり、彼女が部屋のあちこちにゲスト用にイースター・バスケットを用意してくれ、我々もかわいいウサギのチョコレートなどが入ったバスケットをもらう(写真)。彼女の家族や友人など12人が集まり、内輪ながら盛大なパーティーになって、持参した抹茶シフォンの評判も上々。楽しいイースターの一日が終わった。

なおイースター自体は前述の通り前後90日で、イースターの日曜日の後40日はキリストが昇天したことを祝う日、また50日後は精霊がキリストの弟子たちに光臨したことを記念する日だという。まだまだ行ったことのない教会がたくさんあるから、ボチボチ日曜礼拝に参加して、色々な教会の特徴を知りたいと思う。


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