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コロナ検証 長島誠一⑧日本社会への影響 デジタル化社会の課題

2025年04月02日 09時24分26秒 | コロナ検証

新しい社会経済システムとしての21世紀社会主義 現代資本主義シリーズ;5(1)

長島誠一(東京経済大学名誉教授) 2024年 東京経済大学学術機関リポジトリ より

 

Ⅳ 日本社会への影響

コロナ・パンデミックによって人々の生活行動や企業活動や労働そのものが変わり、社会構造も変化してきている。コロナ感染症は従来の社会構造の歪み(矛盾)を白日のもとに暴露した。

社会的弱者の生活困窮化と億万長者の資産増加  日本経済がさまざまな経済危機に直面するたびにその打撃は必ず「社会的弱者」に集中的に襲いかかってきた。この間のコロナ・パンデミックにおいて、生活困窮者は民間のボランティア活動による支援に殺到してきた。逆にコロナ・パンデミックによって貧富の格差は一層拡大し、利益を受けた人たちも存在するが、アメリカでは2020年3月以降の11週間米国の富裕層の資産は62兆円も増えた。

外国人労働者・留学生の困窮化  コロナ禍による渡航制限によって外国人労働者は帰国したくともできない。現在約 40 万人の外国人技能実習生が日本に滞在しているが、コロナ禍でアルバイトが大幅に減り、留学生は学費が払えず「留学ビザ」が失効し、帰国するにも航空機の燃油高で切符が買えなような生活上の困窮に陥っている。日本政府は技能実習生や就職活動中の留学生などに対しては在留期間を延長する処置をとっているが、日本語学校の留学生はケアしていない。

貧富の格差拡大  日本の医療制度そのものの問題としては、コロナ感染症対策をする行政側と医療現場との情報共有体制の不十分性が露呈された。また、従来からある親の学歴・世帯収入・職業などによる社会的・経済的・文化的な「社会経済的地位」による格差が拡大した。さらにコロナ禍によって2020年~2022年の3年間に結婚は 15万件減少し、将来出生が 24万人マイナスになるとの推計も出された。

介護危機  介護(ケア)労働はますます重要性を増しているが、コロナ救済のために社会保障給付費が急増することが予想され(いわゆる「2025 年問題」)、介護の現場では介護をする人材が不足しかつ現場の労働負担が増加しているのに職員の年収は減少し、介護の危機が起こっている。こうした危機は医療現場の看護師たちにも起こっているが、介護・医療の労働者のさまざまな労働条件を改善して人材を確保するとともに、介護現場の業務を効率化しICTなどの技術を活用する必要がある。

消費行動の変化 人為的な人々の移動や交流の制限や個々人自身の外出自粛などにより、消費意欲が大幅に減少して個人消費は大きく減少した。貯蓄率は 2020年に急上昇し、21年にも前年よりは低下したがかなり高くなった。選択的支出への影響が大きく、人為的経済活動抑制によってとくに対人サービスは低水準を続けた。そのかわりにインターネットによる通信販売が増加し、ライフスタイルの変化が起こり、個々人の消費支出の中身が変化した。そしてキャッシュレス決済が増加した。

企業活動の変化

製造業の生産はサプライチェーンの分断による供給制約によって停滞し、世界経済の停滞によって輸出が急落した。その後在庫調整の進展から持ち直し、設備投資は下振れした。企業収益は感染症の影響によって大幅に減少したが、年初来の原油安は押し上げた。人為的移動制限と企業活動そのものの縮小によってテレワークが増加し、しかも在宅勤務や地方移住によるテレワークが増大した。

コロナ禍によって日本の国内企業の大半がマイナスの影響を受けたが、デジタル関連企業は投資とテレワークが継続し、新たなビジネスモデルが模索された。そしてコロナ禍における地方公共団体の官民連携の取組もみられ、サービス開発のための支援金(神戸市・Urban Innovation Kobe) 、感染症がもたらす社会課題の解決を目指すプロジェクトの支援(福岡市の福岡実証実験フルサポート)、ピッチイベントの開催(東京都の Upgade with Tokyo)などが注目された。多くの外資系企業が日本でのビジネスの継続や拡大をする予定もある。

デジタル社会の課題

コロナ・パンデミックによって世界的に経済活動は低下し、支払い手段のキャシュレス化が進展し、中央銀行デジタル通貨が検討され始めた。企業活動においても個人の消費生活においてもデジタル活用が一層進展し、本格的なデジタル社会の諸問題に直面した。

コロナ禍でデジタル活用が拡大

(1)消費者行動  消費者行動の変化は経済動向の変化につながり、対面型の業種は低迷が続いている。その一方でインターネット・ショッピングや動画配信などが伸び、在宅時間の増加などによって、インターネット・トラフィック(転送されるデータ量)は急増を示した。

(2)社会的分野  デジタル技術を活用した市民への迅速な経済的支援の実施や、地域での感染状況やそのリスクの把握といった取り組みをおこなった。しかしその過程で市民生活上の自由やプライバシーなどのさまざまなデジタル社会の課題が顕在化した。海外では、給付金の支給・マスクの需給対策・感染状況の把握と通知などで、デジタル技術が積極的に活用された。また教育・医療等の分野では、感染拡大防止の観点から遠隔教育・オンライン診療が実施されてきた。

(3) 企業活動  コロナ禍で落ち込んだ業績の回復が進む米国では、デジタル化の追い風を受けたTECH企業が経済を牽引している。テレワークの実施率は緊急事態宣言中は上昇したが、宣言解除後は実施率が低下した。しかし感染症や自然災害等への強靭性(レジリエンス)を確保する観点からも、テレワーク等のデジタル活用を定着させる必要がある。

デジタル化社会の課題  コロナ禍を受けて、生産性の向上や付加価値の創出だけではなく、感染症や自然災害に対応できる強靭性(レジリエンス)を確保し、持続可能な社会の実現のためにデジタル化の推進が重要になった。

しかし、自由で民主的な社会を前提としたデータ活用でなければならない。今後、国民のデジタル活用を促進し、民間企業・公的分野におけるで自宅化を戦略的かつ一体的に進めることが必要である。その際、5G 等の情報通信インフラの整備、ベース・レジストリ(基本データ)の整備、サイバーセキュリティや個人情報の保護といった安全・安心の確保、公共デジタル・プラットフォーム(ID、認証、クラウド等)の整備などにより、デジタル社会の共通基盤を構築することが重要である。

 



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