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コロナ検証 長島誠一⑭感染症対策の原則無視 院内集団感染 医療崩壊 自宅療養

2025年04月21日 09時15分48秒 | コロナ検証

新しい社会経済システムとしての21世紀社会主義 現代資本主義シリーズ;5(1)

長島誠一(東京経済大学名誉教授) 2024年 東京経済大学学術機関リポジトリ より

 

第6節 感染症に備えた医療制度の構築

本節では、コロナ危機で露呈した医療の弱点と、その克服を考えてみよう。

第1項 医療関係者の献身的な奮闘

コロナの夜明けの希望  岡田春恵教授は、官邸・厚労省・専門家会議のコロナ対策を批判する啓蒙活動の記録を『秘闘』として公表したが、その内容はすでに紹介した。ベトナムやミャンマーの医療支援に出かけて入国検査をしていた旧友から、検証本は歴史の貴重な検証史料にはなるが即効性のあるのは映像だと言われ、「パンデミック対策はこれからが正念場だぞ。・・・メセージを伝えたいなら、映像にしたかったら、まずは小説にするんだな。それこそが、コロナの夜明けになるんだ。コロナの闇の先に太陽が昇ってくるんだ。」と忠告され、ドキュメント『秘闘』を『コロナの夜明け』として小説化した。重複しないようにしながら、医療関係者たちの献身的な奮闘について紹介しておこう。

感染症対策の大原則の無視  武漢市での新型コロナの発生が正式に世界にが公表された初期段階においては、日本では危機管理体制構築は東日本大震災・福島第一原発事故以後ストップしてしまっていたが、武漢市では人口の約500万人が脱出していた。中国から感染者が入り込んでいたが、テレビや全国放送での解説は楽観的見通しが支配的で、SNS 上では岡田たちの批判は「政権批判!」というコメントが夥しく上がってきた。

しかしコロナ感染は点から線へ、線から面へと拡散し、お土産屋のバイト学生・タクシー運転手・屋形船での感染、カラオケボックスや居酒屋での感染などのニュースにあふれていた。専門家会議のメンバーは、「厚労省の政策を現場に納得させることで出世した」現場から遠い高齢の先生たちであった。新型コロナの正体がわかっていない時点では、最悪の事態を想定して有事に備えなければならず、特措法を動かし緊急対応できるようにしておくのが感染症対策の大原則であった。

院内集団感染  コロナは中国からヨーロッパそしてアメリカに拡がり、日本では和歌山県の済生会有田病院で院内感染が生じ、東京都でも台東区の永寿総合病院新宿区の慶応義塾大学病院港区の東京慈恵会医科大学病院・中野区の江古田病院・墨田区の都立墨東病院(第一種感染症指定医療機関)で集団院内感染が生じた。血液内科の患者は感染症で重症化しやすいが、看護師たちは感染危機対策ができていないことに激しく憤った。院内感染は病院の対応のせいにしてはならず、全患者・スタッフ・職員の PCR 検査を病院側が要望したのに、それに迅速に応じなかった東京都や保健所などの行政の検査体制に問題があった、と岡田は発言していた。しかも実際には保健所が検査を差配しており、国民皆保険制度は実質的には形骸化しているようなものだった。

医療崩壊の始まり  濃厚接触の疑いのある弁護士が検査ができず療養ホテルで待機させられていたが、ホテルには滞在する看護師が極端に少ないうえに、血中の酸素濃度が低下しないと医師に診断してもらえない状態だった。コロナ第3波がはじまり、ウィルスが流行しやすい冬になり自殺者も増加してきたが、ある開業医は政治家に訴えることはあきらめ自力で PCR 検査設備を購入した。クリニックに大晦日にも患者が殺到し、地域にウィルスが根を下ろしたと実感した。岡田は入院が必要な人が自宅待機なのは非常に危険であり、酸素が使える大規模な集団医療臨時病院の設置を訴え、一般病院がコロナ病床を捻出し始めた。

岡田教授は、変異ウィルスが海外から入る危険性のあるパンデミック時のオリンピック開催を否定し、田村厚労相の2期目に入りPCR検査は飛躍的に拡大したが、コロナ病床確保が増えず、「医療難民」の危険性が生じた。ウィルスは強いものが勝ち残り、五輪開催直前に第4波の英国型からインド型に変わっていた。岡田は、大規模医療施設を建設し、ワクチン接種で免疫を付けて、重症化と流行を阻止することを訴え続けた。世論調査では五輪開催の延期か中止が多数であったが、開催ありきの流れが決定的となり、さすがに尾身会長は「今の状況で五輪開催は普通ではない」と発言し(尾身の反乱)、「コロナ感染症有志の会」が提言を提出した。

2021年8月1日に東京都の自宅療養者が1万人超え、PCR検査の陽性率20%にもなっていたので、実際の感染者は非常に大きかったと想定された。田村厚労大臣の大規模集約医療施設・臨時医療施設の提案に専門家からの賛同はなかった。

政府は8月2日に「重症患者や重症化リスクが高い者以外は自宅療養」という新方針を出したが、医療崩壊を政府自身が認めたようなものであった。自宅で分娩した新生児や自宅療養の肺炎患者の死亡が報道されたが、人の痛みがわからないから先手の対応ができなかった。

コロナ第6波の中で高齢者福祉介護施設での集団感染が発生し、まるで地獄のような様相だったし、高齢者医療施設の死亡者の遺骨にしか近親者は会えないといった悲惨な状態だった。第7波が到来し変異株 BA5 が現われ、新規感染者は日本が世界一となった。医療機関で基本的薬剤が枯渇しはじめ、岡田はラジオ放送でインフルエンザとコロナのダブル流行の危険性を訴えた。

医療現場のクリニック院長は、「基礎疾患のない13歳から64歳は保険診断ができない」と激怒していた。2022年11月に寒冷地で感染が増加していたが、クリニックでの検査陽性率が約8割に急増し、第8波が到来し大きな集合病床が必要となった。このクリニック院長が困難と考えていた問題を「特措法」はすべてクリアしていたが、「特措法」が適用されることはなかった。その「特措法」制定時の感染症関係の委員は、現在の新型コロナ分科会の主要メンバーであった。

地方総合病院の苦闘  夏川草介『臨床の砦』(小学館文庫、2022 年 6 月)は小さな信州の総合病院でコロナ治療にあたったスタッフたちの記録小説であり、著者夏川は 2021 年の第 3 波のただ中で体力的・精神的に極限状態の中で書き綴っていた。この病院には感染症の専門家も呼吸器内科の医師もいなかったが、2020年2月3日に横浜にクルーズ船が入港してから、2週間後に感染者が当院に搬送されてきた(2月 16 日)。医療側の都合で治療を受けられず、代替案もないままに待機を命じられる状態としての「医療崩壊」が起こっていたが、ほとんどの医療者が医療活動を継続した。小説は実際に目にし経験した事実に基づいているが、現実は本書の内容より過酷だったと夏川は綴っている。その後、コロナ治療の環境は確実に改善されているし、ワクチン接種は感染者の症状を軽症化した。改善すべき点として夏川は、民間・公立・大学病院を統括する部門と医療機関のネットワーク・システムの創設を提起している。

 



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