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コロナ検証 長島誠一⑥新興国・発展途上国への影響 中国のゼロコロナ政策

2025年03月31日 09時12分07秒 | コロナ検証

新しい社会経済システムとしての21世紀社会主義 現代資本主義シリーズ;5(1)

長島誠一(東京経済大学名誉教授) 2024年 東京経済大学学術機関リポジトリ より

 

(🍓ゼロコロナ政策は、本来は感染防御の方法だが、中国のロックダウン政策に誤用されている)

Ⅱ 新興国・発展途上国への影響

新型コロナは世界的パンデミックと呼ばれるように、先進国はもとより新興国や発展途上国にも大々的な衝撃を与えた。

中国経済の停滞

新型コロナは武漢市から全世界へと広まっていったが、中国では都市封鎖や厳しい一連の行動制限政策が共産党一党独裁政権下で実施された(🍓「ゼロコロナ政策」)。新型コロナ対策は感染症の予防・治療・撲滅の医学的措置と共に、経済活動を維持し人々の日常生活を保証するという「二律背反」的な全世界的に共通の課題を背負っていた。

ゼロコロナ政策と2020・21年経済成長  中国ではコロナが発生した2020年第1四半期にはGDP成長率がマイナス 6.8%と低下したが、それ以降は上昇に転じ、2020 年全体では主要国で唯一プラス成長した(年間 2.2%成長)。引き続く 2021年にも 8.1%成長し、世界経済の落ち込みを下支えした。しかしマクロ的な経済成長にもかかわらず若者の失業率は 20%に達し、過度のゼロ・コロナ政策は企業と消費者の行動を委縮させてしまっていた。

ゼロコロナ政策の行き過ぎ(2022 年) ゼロコロナ政策は最初の 2 年間はプラスの経済成長を達成して成功したが、企業や消費者に極端な行動制限を強制していたために生活が大攪乱され、消費者の消費行動を極端に減少させてしまった472。そのために企業活動を制限し、不動産バブルを崩壊させる危険が生じてしまった。しかし中国政府は4~6月の成長率がプラス0.4%でありコロナそのものの影響だと主張したが、現場では強制的な隔離政策によって旅行が萎縮し旅行業に大打撃を与えたり、消費者一般の節約志向と貯蓄率上昇をもたらした。都市外への外出制限や原材料の輸入コスト増が地方の日系部品メーカーを操業停止に追い込んだりして、製造業の購買担当者景況感指数(PMS)を 49.0 に押し下げていた(2022年 7月)。

このようにコロナ禍と「ゼロコロナ政策」で悪化する中国経済に対して、共産党中央の「ゼロコロナ政策」と国務院の「目標経済成長」達成との水面下の政治駆け引きが始まった。地方政府は、共産党中央の政策徹底指令と国務院からの経済成長維持要請の板挟み所帯のおかれていた。

ゼロコロナ政策の緩和  習近平国家主席は「ゼロコロナ政策の堅持こそ勝利」と号令して膨大な予算が投じられてきたが、そのために全土の疲弊を招いていた。地方政府の負債総額はコロナ以前のGDP20%前後から 2022年には 29%と急上昇し、地方政府の歳入に対して 100%以上になった。そのために人々の生活も打撃を受け、武漢市では医療補助減額に対する高齢者の大規模な抗議デモが起こった。河南省商丘市では財政難の影響で路線バスが運行を停止してしまった。「ゼロコロナ政策」に協力してきた人々にも影響し、隔離施設に指定された広州市内のホテルでは 2023 年 2 月になっても、部屋代や食事代の大半が政府から支払われていなかった。

中国では2022年に61年ぶりに人口が減り少子高齢化は加速すると予想され、医療費や社会保障費はさらに膨らみ、経済刺激のための財政出動などと重なって財政難が鮮明になった。2023 年 3 月に開催された全国人民代表大会では習近平政権が強化され、習側近の李強が新首相に選出され、経済成長率の目標値は最近では最低の7.0%と抑えられたが、新首相は7.0%達成も難しいと発言している。ゼロコロナ緩和政策はそのまま継続し、コロナ対策と絡んだ経済政策はほとんど取り上げられなかったようである。

発展途上国への打撃

新型コロナは中国から欧米の先進国に瞬く間に広まっていったが、やがて全世界的なパンデミックとなり新興国と発展途上国を巻き込み、世界的な経済停滞をもたらした。特に発展途上国の多くは資源と観光に依存し、さらにドル債務を抱えているから、経済的リスクが集中していた。ワクチン薬・検査薬の分配や発展途上諸国の保健システムの整備のためにWHOが提唱したパンデミック条約は、先進国と途上国の対立によって2024年5月末に採択が断念されてしまった。

コロナ・パンデミックにより途上国への資本緊急資金は、支援国100カ国におよび、そのうちサハラ砂漠以南にあるサブサハラ諸国が 39 カ国も資本の流出が起こり、ドルへの集中のリスクが顕在化した。

しかし中国は「ゼロコロナ政策」が成功して 2020 年に実質 GDPが 8.4%成長し、世界経済を牽引した。ASEAN 諸国はデジタル技術を活用し、コロナ感染経路追跡アプリの開発が加速化し、デジタル化が一足飛びで進んだ。ASEAN 諸国の多くは着実に経済が発展してきたが、都市と地方との経済格差の拡大に苦慮している。アフリカや中南米諸国は経済の回復が遅れた。

新興国・発展途上国はすでにグローバル・サプライチェーンに組み込まれているから先進国の製造業不振が伝播し、中位所得国を中心として工業部門の雇用を押し下げた可能性がある。2022 年にロシアのウクライナ侵略戦争が勃発したが、2020 年の世界の小麦輸出はロシアが 17.7%(第 1 位)ウクライナは8.0%(第5位)、トウモロコシ輸出はウクライナ13.3%(第4位)・ロシア1.1%(第11位)であった(2019 年)。中東やアフリカ諸国を中心として発展途上国はウクライナとロシアへの食糧輸入依存度が極めて高く、深刻な食糧危機に直面した。

ウクライナ戦争以前から世界の食糧危機は発展途上国を中心としてはじまっているが、コロナ禍によってさらに促進されている。異常気象の影響か東アフリカのケニアでバッタの大群が襲い、またたくまに東アフリカから南アジアの農作地帯の食料生産に大打撃を与えた。東南アジアではコメの輸出規制が始まった。多くの発展途上国では国内での「農村部での過剰」と「都市部での不足」が併存し、「国産高級食材の過剰」と「輸入に依存した業務用の安価な食材の不足」が起こっている。特に危険が高い国はイエメン、コンゴ民主共和国、アフガニスタン、ベネズエラ、エチオピア、南スーダン、シリア、ナイジェリア、ハイチの10カ国である。貧困ライン以下で暮らす世界の子供たちは6億7200万人になる可能性があり、その3分の2はハラ以南のアフリカと南アジアに集中しており、食糧危機の集中地帯と重なっているといえる。

 



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