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<「ニホンのクルマのカタチの話」中村史郎著>
◆書評「ニホンのクルマのカタチの話」中村史郎著
1009:【書評100連発】第9発
こんにちは!
デザインコンサルタントの木全(キマタ)です。一般の方に向けて工業デザインのエッセンスについて書いたり、デザイナーとの付合い方などについて書いています。御相談がありましたら、コメントをくださいね。コメントによるご質問には基本的に無料でお答えいたします。
株式会社ビートップツー (木全が取締役を勤めています)
木全の自己紹介
★デザインセミナー講師も承ります。「講演.com」
「デザイン相談室」の目次【2010.12更新】
「デザインのコツ・ツボ100」の目次【2010.12更新】
★横浜市「無料デザイン相談」 ※横浜市に事業所のある方限定。
★墨田区「無料商工業アドバイザー派遣」 ※墨田区に事業所のある方限定。
今回は旧友である日産自動車デザインセンターの池山悦朗氏からお贈りいただいた「ニホンのクルマのカタチの話」(中村史郎著)の書評です。
基本的には、いままで読んできたデザイン関連書籍の書評をしていますが、献本していただければ、書評を書かせていただきます。献本お待ちいたします(笑)。
■読みやすいけど、奥が深い
「ニホンのクルマのカタチの話」は、日産自動車のデザインセクションのトップ、チーフクリエイティブオフィサー(CCO)であり、常務執行役員である中村史郎氏が初めて書き下ろした「クルマ」のデザインの本です。
日産自動車のデザインセクションのことや、マーチ、Z、GT-R、キューブ、ジューク、リーフなどの開発経緯など、身近で気になるクルマのデザインについて、かなり突っ込んだ内容が書かれている、とても興味深い本です。
そして、クルマのデザインという、身近だけど、ある意味マニアックな世界のデザインの話にも拘らず、専門用語がほとんどなく、とてもわかりやすくて、読みやすく、真面目で信頼できる、このような本を書かれる方がデザインマネージメントしているクルマなら、安心して乗り回せると思える、そんな本です。
掲載されている写真もきれいですし、一気に読めてしまうため、「ああ、面白かった」という感想で終わってしまいそうですが、じっくり読むと「正しいデザインマネージメント」とは何か、考えさせられることの多い本です。
日本の基幹産業である自動車産業のトップマネージャーが、日々考えていることを、まとめているのですから、奥の深い話であるのは当然のことでしょう。
■正しいデザインマネージメント
中村氏が目指すのは、世界に対して「ニホンのクルマのカタチ」を常に発信し続ける仕組み、デザインマネージメントシステムを、ニホンらしいカタチで、ニホンの中に構築すること。
日産自動車は、軽自動車からトラックまで、60車種のラインナップを持ち、11年間で100モデル以上リリースしているそうです。その多様性を「動物園」に例え、それでありながら、全車種が奏でる音色にオーケストラのような一貫性がなければならない、と中村氏は書いています。
そして、その音色に「日産らしさ」「ニホンらしさ」が感じられたとき、ユーザーの共感や感動を呼ぶことができるはずだと言います。
そのようなことは、決して一人のデザイナーにできるはずがなく、多くの人たちを巻き込むことで実現できる。そのために、「デザインマネージメント」が重要になってくる。
日産デザインセンターの16カ国800名の人材登用、厚木・原宿・サンディエゴ・ロンドン・北京の5箇所のデザインセンターの環境整備、デザイン戦略立案から各デザインセンターのオープンコンペ、製品化に向けたブラッシュアップなど、社員のモチベーションを上げ、アイデアの「原石」を見つけ、それを「玉成(ぎょくせい)」(日産用語/ブラッシュアップの意)させ、製品化していく。そのための組織作りや運営について、この本にはそのエッセンスが詰め込まれています。
■違和感を受け入れる
そして、そのデザインマネージメントの成果も、書かれています。
3代目「マーチ」の「かわいい目」、通算180万台販売された量産スポーツカー「Z」の開発精神というヘリテージ(遺産)、4人乗りセダンから派生したボクシーで男性的でガンダム風の「GT-R」、速さを否定した平面的でアシンメトリーな2代目「キューブ」、「ロボ+バイオ」がコンセプトの「ジューク」などのデザインについて、チーフクリエイティブオフィサーだからこそ、言い切ることができる各商品の魅力、それが、デザインマネージメントの成果です。
そして、ガンダム風の「GT-R」や「ジューク」、ヘタウマな「キューブ」には「違和感」があり、自分がデザインしていたら、それらのクルマは絶対に生まれなかっただろうと、中村氏は正直に書いています。
でも、中村氏は、そのような「違和感」を感情的に排除するのではなく、受け入れるチャレンジ精神が、これからのマネージャーに求められているものであり、「違和感」を論理的に理解させることができるデザインマネージメントシステムが、世界に対して「ニホンのクルマのカタチ」を常に発信し続ける仕組みなのだと書いています。
とても気持ちのいい本です。中村氏のような方が国の基幹産業企業の常務執行役員でいられる日本という国は、いい国だと、改めて思いました。
ゴールデンウィークですので、来週はお休みします。
★デザインセミナー講師も承ります。「講演.com」
新書「デザインにひそむ<美しさ>の法則」(第4版)好評発売中
「売れる商品デザインの法則」(第2版)好評発売中
新書「中小企業のデザイン戦略 」(PHPビジネス新書) 好評発売中
新書「売れるデザインの発想法」(ソフトバンククリエイティブ新書)好評発売中
新書「マインドマップ デザイン思考の仕事術」(PHP新書)好評発売中
■株式会社ビートップ・ツー 工業デザイナーの転職アドバイザー
◆書評「ニホンのクルマのカタチの話」中村史郎著
1009:【書評100連発】第9発
こんにちは!
デザインコンサルタントの木全(キマタ)です。一般の方に向けて工業デザインのエッセンスについて書いたり、デザイナーとの付合い方などについて書いています。御相談がありましたら、コメントをくださいね。コメントによるご質問には基本的に無料でお答えいたします。
株式会社ビートップツー (木全が取締役を勤めています)
木全の自己紹介
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「デザイン相談室」の目次【2010.12更新】
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★横浜市「無料デザイン相談」 ※横浜市に事業所のある方限定。
★墨田区「無料商工業アドバイザー派遣」 ※墨田区に事業所のある方限定。
今回は旧友である日産自動車デザインセンターの池山悦朗氏からお贈りいただいた「ニホンのクルマのカタチの話」(中村史郎著)の書評です。
基本的には、いままで読んできたデザイン関連書籍の書評をしていますが、献本していただければ、書評を書かせていただきます。献本お待ちいたします(笑)。
■読みやすいけど、奥が深い
「ニホンのクルマのカタチの話」は、日産自動車のデザインセクションのトップ、チーフクリエイティブオフィサー(CCO)であり、常務執行役員である中村史郎氏が初めて書き下ろした「クルマ」のデザインの本です。
日産自動車のデザインセクションのことや、マーチ、Z、GT-R、キューブ、ジューク、リーフなどの開発経緯など、身近で気になるクルマのデザインについて、かなり突っ込んだ内容が書かれている、とても興味深い本です。
そして、クルマのデザインという、身近だけど、ある意味マニアックな世界のデザインの話にも拘らず、専門用語がほとんどなく、とてもわかりやすくて、読みやすく、真面目で信頼できる、このような本を書かれる方がデザインマネージメントしているクルマなら、安心して乗り回せると思える、そんな本です。
掲載されている写真もきれいですし、一気に読めてしまうため、「ああ、面白かった」という感想で終わってしまいそうですが、じっくり読むと「正しいデザインマネージメント」とは何か、考えさせられることの多い本です。
日本の基幹産業である自動車産業のトップマネージャーが、日々考えていることを、まとめているのですから、奥の深い話であるのは当然のことでしょう。
■正しいデザインマネージメント
中村氏が目指すのは、世界に対して「ニホンのクルマのカタチ」を常に発信し続ける仕組み、デザインマネージメントシステムを、ニホンらしいカタチで、ニホンの中に構築すること。
日産自動車は、軽自動車からトラックまで、60車種のラインナップを持ち、11年間で100モデル以上リリースしているそうです。その多様性を「動物園」に例え、それでありながら、全車種が奏でる音色にオーケストラのような一貫性がなければならない、と中村氏は書いています。
そして、その音色に「日産らしさ」「ニホンらしさ」が感じられたとき、ユーザーの共感や感動を呼ぶことができるはずだと言います。
そのようなことは、決して一人のデザイナーにできるはずがなく、多くの人たちを巻き込むことで実現できる。そのために、「デザインマネージメント」が重要になってくる。
日産デザインセンターの16カ国800名の人材登用、厚木・原宿・サンディエゴ・ロンドン・北京の5箇所のデザインセンターの環境整備、デザイン戦略立案から各デザインセンターのオープンコンペ、製品化に向けたブラッシュアップなど、社員のモチベーションを上げ、アイデアの「原石」を見つけ、それを「玉成(ぎょくせい)」(日産用語/ブラッシュアップの意)させ、製品化していく。そのための組織作りや運営について、この本にはそのエッセンスが詰め込まれています。
■違和感を受け入れる
そして、そのデザインマネージメントの成果も、書かれています。
3代目「マーチ」の「かわいい目」、通算180万台販売された量産スポーツカー「Z」の開発精神というヘリテージ(遺産)、4人乗りセダンから派生したボクシーで男性的でガンダム風の「GT-R」、速さを否定した平面的でアシンメトリーな2代目「キューブ」、「ロボ+バイオ」がコンセプトの「ジューク」などのデザインについて、チーフクリエイティブオフィサーだからこそ、言い切ることができる各商品の魅力、それが、デザインマネージメントの成果です。
そして、ガンダム風の「GT-R」や「ジューク」、ヘタウマな「キューブ」には「違和感」があり、自分がデザインしていたら、それらのクルマは絶対に生まれなかっただろうと、中村氏は正直に書いています。
でも、中村氏は、そのような「違和感」を感情的に排除するのではなく、受け入れるチャレンジ精神が、これからのマネージャーに求められているものであり、「違和感」を論理的に理解させることができるデザインマネージメントシステムが、世界に対して「ニホンのクルマのカタチ」を常に発信し続ける仕組みなのだと書いています。
とても気持ちのいい本です。中村氏のような方が国の基幹産業企業の常務執行役員でいられる日本という国は、いい国だと、改めて思いました。
ゴールデンウィークですので、来週はお休みします。
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■株式会社ビートップ・ツー 工業デザイナーの転職アドバイザー