木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

中小企業のデザインのお悩み、なんでもご相談ください!!

使いやすさという性能

2009年01月27日 | 人間工学と認知科学(コツツボ)
<戦闘機の計器の読みやすさの検討>


◆使いやすさという性能
286:【デザインのコツ・デザインのツボ 100連発!】第86発 デザインワーク


  こんにちは!
 「工業デザイン相談室」木全(キマタ)です。一般の方に向けて工業デザインのエッセンスについて書いたり、デザイナーとの付合い方などについて書いています。御相談がありましたら、コメントをくださいね。コメントによるご質問には基本的に無料でお答えいたします。

 木全の自己紹介

 ★「工業デザイナー応援ブログ」★


 新書「デザインにひそむ<美しさ>の法則」(第3版)好評発売中

 「売れる商品デザインの法則」(第2版)好評発売中

 【御礼】アマゾンで1・2フィニッシュ更新中!163日目

 記事の目次
 デザイン相談室の目次    デザインの考え方と運用について
 デザインのコツ・ツボの目次 商品企画とデザインワークについて

 人気blogランキングへ


使いやすさという性能

 以前、美的・ユーザビリティ効果によってデザインがいいだけで、愛着を持ち、使いやすく感じてもらうこともできるという話をしましたが、より積極的に、デザインで使いやすさや性能を向上させることができます。

 工業デザインが使いやすさで性能に寄与できるのは、人と商品が直接係る使いやすさ=人間工学(マン=マシンインターフェイス)に関する部分です。

 運転席に座って、シートが座りやすく調節でき、長時間座っても疲れないか、ハンドルやアクセルやブレーキが使いやすい位置にあるか、操作感は良好か、インパネの表示は見やすいか、各種の操作は運転をしながらでも、安全に間違いなく操作できるか。そういう「使いやすさ」の要素、人と機械が接する部分での誤認や誤操作防止・確実な操作・疲労の軽減・快適性などが工業デザインの領分です。

 自動車は、安全に走って止まる性能・外観の美しさ・室内の快適さ・運転のしやすさなど、すべての要素で総合的に評価されます。

 そして、基本性能の向上には多くの場合、コストがかかりますが、使いやすさや快適さや美しさはコストのかからない範囲で向上させることも可能です。コストをかけず、スイッチの位置を少しずらすだけで操作性がよくなったり、見た目のバランスがよくなったり、シリーズ商品の統一感を演出することも可能です。


戦争で生まれた人間工学

 上の図は第二次世界大戦中の戦闘機の計器の使いやすさを検討したものです。

 使いやすさの法則は、第二次世界大戦以降に誕生した人間工学がベースになっています。

 小原二郎の「暮らしの中の人間工学」に人間工学の誕生の経緯がわかりやすく書かれています。

 大戦が長引くにつれ、戦死や戦傷によるパイロット不足や新米パイロットの事故の増加に直面した米空軍は、実験心理学者に事故原因の解析を依頼しました。

 その結果、高度計や燃料計の誤読や、操作レバーの不適当な位置や形状による誤操作などが事故の原因になっていることが明らかになりました。

 そして、三針式であった高度計を一針式やデジタル表示にし、ガロン表示であった燃料計をFULL(満タン)とEMPTY(から)だけの表示に変え、三つ並んで全く同じ形をしていた翼のフラップと車輪とエンジン出力の操作レバーの位置を少しずらして、レバー形状を触っただけで違いが分かる形に変更しただけで、事故がてきめんに減少することが分かってきました。

 戦後六十年経ち、人間工学が生活に根付いている現在の感覚で、そのような話を聞くと、そんな基本的なことも知らなかったのかと驚いてしまいますが、戦闘機に限らず、戦前の製品は、マン・マシンインターフェイスが考慮されず、使いやすさよりも作りやすさ優先で作られていました。

 当時は、工業化の急速な発展に目を奪われ、航空機や自動車など目新しい製品の性能向上に忙しくて、ユーザのことが忘れられていたようです。

 もしかすると、ユーザのほうでも、製品の進化に合わせて人の能力も進化していくという錯覚があったのかも知れません。しかし、人の能力はほんの数十年で進化するはずもありません。

 戦争は極限状況の中で人も機械も最大の性能を発揮しなければなりません。そのような状況での誤読や誤操作は命に係ります。複雑な装置やスピードに対する人の適応は限界に達し、その限界を克服するために、人が機械に合わせるのではなく、機械を人に近づける工夫を始めた。それが「人間工学」です。

 人間工学は、軍事技術からスタートしましたが、戦後あっという間に民生品に応用されるようになりました。「暮らしの中の人間工学」が出版された一九七一年は戦後二十六年しか経っていませんが、既に人間工学は日本において十数年の歴史を持ち、生活に定着していると書かれています。人間工学は当時の工業製品に欠けていたものとして急速に研究され、普及していきました。


 これからしばらくの間、人間工学や認知科学に基づいた「使いやすさの法則」について書いていこうと思います。


 ★「工業デザイナー応援ブログ」★

 新書「デザインにひそむ<美しさ>の法則」 好評発売中 

 「売れる商品デザインの法則」 好評発売中!

 【御礼】アマゾンで1・2フィニッシュ更新中!163日目

 デザイン相談室の目次    デザインの考え方と運用について
 デザインのコツ・ツボの目次 商品企画とデザインワークについて

 人気blogランキングへ



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。