木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

中小企業のデザインのお悩み、なんでもご相談ください!!

多機能と使用性

2009年08月11日 | 人間工学と認知科学(コツツボ)
<いろいろなリモコン>


◆多機能と使用性
295:【デザインのコツ・デザインのツボ 100連発!】第95発 デザインワーク


  こんにちは!
 デザインコンサルタントの木全(キマタ)です。一般の方に向けて工業デザインのエッセンスについて書いたり、デザイナーとの付合い方などについて書いています。御相談がありましたら、コメントをくださいね。コメントによるご質問には基本的に無料でお答えいたします。

 木全の自己紹介

 ★デザインセミナー講師も承ります。「講演.com」


 ★横浜市「無料デザイン相談」 ※横浜市に事業所のある方限定。

 ★墨田区「無料商工業アドバイザー派遣」 ※墨田区に事業所のある方限定。


 8月18日火曜日は、夏休みで更新をお休みさせていただきます。

 次回更新は8月25日火曜日です。よろしくお願いします。



多機能と使用性

 「使いやすさ」の効率を追求していくときに、必ずぶつかる問題があります。

 それは、家電製品のリモコンに端的に現れます。リモコンは高級機種ほど、多機能で使いやすいはずなのに、多機能にするとそれだけで使いにくくなってしまいます。たくさんのボタンが並んだ多機能リモコンを見ただけでうんざりしてしまう人も多いと思います。

 しかし、ボタンが多いことが必ずしも使用性を悪くするわけではありません。例えば、自動車の運転席周りにはワイパーやウインカーや空調やオーディオやカーナビなど、一〇〇個以上の操作ボタンがありますが、ほとんどの機能を運転しながら、イライラすることなく誰もが使いこなせます。

 運転しながらの操作という厳しい状況の中で、自動車の操作系は研究し尽くされています。ボタンが運転席周りの前後左右に適度に配置され、機能とボタン操作がほぼ一対一の関係になっているなど、マンマシンインターフェイスが完成しています。

 では、家電製品のリモコンのマンマシンインターフェイスは完成していないから使いにくいのか、といえば、そうではありません。

 この多機能と使用性の二律背反には、ユーザーが製品に何を求めているかによって印象が変わってしまうという人間側の問題があります。

 たとえば、上の図のようなリモコンを例に挙げると、テレビだけ楽しんでいる人には、左のシンプルなリモコンを好ましく感じ、AV機器を使いこなしている人は、右の多機能リモコンが好ましく、シンプルなものは役に立たないように感じてしまいます。


 写真撮影が趣味の人にとってデジタルカメラの多機能はなくてはならないものです。

 夕日に映える湖の水面も、道端の可憐な花も、昼でも夜でも室内でも確実に思ったとおりの写真を撮るためにデジタルカメラに求める機能は多岐に渡ります。

 多機能でないと困るし、それを使いこなすのは喜びでこそあれ苦痛ではありません。でも、その同じ人が、電子レンジで日本酒を飲み頃に温めることに失敗したりします。

 製品の使いやすさは、その人の能力や趣味や経験により変化してしまうのです。

 自動車の運転という厳しい状況の中では、ボタン類に機械的に対応しているだけであり、カメラを扱うときのように余裕を持って多機能を楽しむ余地がないともいえます。高級機種だから下位機種や他社製品との差別化のために多機能にしなければならないという企業の差別化戦略に問題があるのかもしれません。

 なんにしろ、使う状況や企業の思惑を超えて、多機能と使用性の二律背反は、ユーザーが製品に期待している内容によって起こります。

 自動車の操作系は運転中の運転手の期待に答えているから、イライラしません。家電製品の多機能も、多機能を求めている人の期待に答えています。しかし、多機能を求めていない人にはイライラの種でしかありません。

 人間工学の法則は、人も機械だと考えて、人という機械と、製品という機械の関係を研究したものでしたが、多機能と使用性の二律背反のような問題には、人の心理的な特性を考えて、人と機械の関係を見直さないと解決しないものを抱えています。その問題に取り組んだのが認知科学といわれる学問です。


 ★デザインセミナー講師も承ります。「講演.com」

 新書「デザインにひそむ<美しさ>の法則」(第3版)好評発売中

 「売れる商品デザインの法則」(第2版)好評発売中



 ■ビートップ・ツー  工業デザイナーの転職アドバイザー

 ■グローバルテクノロジーデザイン  クリエーター・エンジニアの転職アドバイザー

 ■MATSUKATU dot com  元工業デザイナー松岡克政さんのマインドマップ基礎講座



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。