たまーに購入する新潮。今号は三島由紀夫特集ならば読まねばならぬ、と買いました。
表紙をみてわかるように、多彩な執筆陣。三島に縁がある人もない人も、三島を好きな人も嫌いな人も交じっていて、かなり読み応えがありました。
冒頭の平野啓一郎の[三島由紀夫の絶望の先へ]は、白百合大学での講演を文字起こししたもの。平野啓一郎の考え方がわかりやすく伝わって、これが一番面白かった。
井上隆文の[『金閣寺』担 . . . 本文を読む
未読の安部公房作品。と、読んでみたのですが、なぜいままでこの作品を読まなかったのだろう?これ、安部公房の最高傑作じゃないですか?いままでは「砂の女」か「他人の顔」か「箱男」が最高ね、と思ってたのですが、この作品はそれらを読んだときの感動を上回りましたよ。
本作の発表は1959年で、「砂の女」の前です。「けものたちは故郷をめざす」と「石の目」の間。
前半は電子計算機の小説かと思いました。本書 . . . 本文を読む
こんな面子での対談集が出版されたら、何を置いても読まねばならぬ、と発売直後に購入したのですが、他に読みかけの本が何冊かあったので、年明けから読み始めました。
三島、安部、大江の三人対談なんてあったの知らなかった。その他にも、三島-大江、安部-大江と、とても興味深い組み合わせですよ。
文学者とは 安部公房x三島由紀夫x大江健三郎 (群像1958年11月に掲載)
三島由紀夫はこのとき33 . . . 本文を読む
未読だった安部公房作品。最初に読んだ安部公房作品は『壁~Sカルマ氏の犯罪』で、それから初期の短篇を読みはじめ、不条理文学の面白さを学んだのですが、それから『砂の女』や『他人の顔』などの失踪文学(?)に触れ、それだが安部公房に対するだいたいのイメージとなっていました。
なので、『榎本武揚』を読んだときは、へえ、こういう小説を書くこともあるんだと意外に思ってました。しかし、その後『終りし道の標べに』 . . . 本文を読む
新潮文庫の『百年の孤独』では、筒井康隆が解説を書いています。その最後にこの『族長の秋』について触れられています。その箇所を引用します。
この「族長の秋」をラテン・アメリカ文学全集の第一回配本として出した集英社がこれを地方の特異な文学として宣伝していたのには腹が立った。本書「百年の孤独」を読まれたかたは引き続きこの「族長の秋」もお読みいただきたいものである。いや、読むべきである。読まねばならぬ。 . . . 本文を読む
『族長の秋』と『中短篇傑作選』の2冊を借りて読んでいたのですが、『族長の秋』を読むのに時間が掛かっていて図書館の貸し出し延長。『中短篇傑作選』は返却したのですが、そのときにもう一冊短編集を読もうと借りたのが、この一冊。
この短編集も『族長の秋』よりも先に読み終えてしまいました。
こちら内容紹介。
しょっぱなの『三度目の諦め』を読むと、こりゃちょっと手ごわい一冊かな?という印象を受けま . . . 本文を読む
『百年の孤独』を起点に、それにインスパイアされた作品を読み進めるうち、昔によく読んだ安部公房を再読するに至っているのですが、ここらへんで一度ガルシア=マルケスに戻ってみよう、と図書館で2冊借りてきました。
長編の『族長の秋』から読み始めたのですが、これがかなりの難書です。ガルシア=マルケス慣れしないと読みにくい一冊なので、『族長の秋』はのんびり読むことにして、並行してこちらの短編集を読むことにし . . . 本文を読む
未読の安部公房作品。
こちらが内容紹介。
読み進めていくと、安部公房作品にしては珍しく、登場人物が多い。途中から誰がなんだっけ?とこんがらがってしまったので、人物一覧を作りながら読みました。
☆登場人物・織木順一:花園町で育ち20年ぶりに戻る。服毒自殺を図る。人間計器となり地脈探索を行う。・花井太助:飢餓同盟のリーダー(社長)。花井キャラメル会社役員。・矢根善介:人形芝居師。廃バスに住ん . . . 本文を読む
この本は、十数年ぶりに読み直しました。安部公房の初期短編集です。安部公房のシュールリアリズム作品は、右脳で読まないといけないのだと認識したことが、十数年前と現在との違いです(^^)
安部公房作品を読むのは、「砂の女」や「箱男」など有名な作品から入るのも手筋ですが、やはり最初は「壁-Sカルマ氏の犯罪」から入り、この「水中都市・デンドロカカリヤ」と続くのが定跡といったところでしょうか。
・ . . . 本文を読む
「終わりし道の標べに」を図書館で借りるついでに、文庫化されていなかった安部公房の作品も借りておこうと、「闖入者」が収録されている本書も借りました。
ところが、「闖入者」は読んだことあったんですね。しかも、「水中都市・デンドロカカリヤ」の中に収録されていました。いやぁ、、アミロイドβに脳が侵され始めたか....
せっかく借りたことだし、他に読んだことのない作家の作品もあるので、読んでみ . . . 本文を読む
安部公房の未読作品を読もう月間が進行中ですが、「終りし道の標べに」は安部公房の初めての商業誌への発表になります。(詳細はWikipediaに)
これは読んでおかないと、と思ったのですが、新潮文庫版は廃刊になったようです。amazonで古本を探しても見つかりませんでした。
そんなわけで、図書館で借りてきました。
敗戦時の満州を舞台です。故郷(日本)を捨てた主人公Tの手記を通して、朝鮮人の陳 . . . 本文を読む
このところ再読が続いている安部公房、初期の戯曲を読み直しました。
「どれい狩り」が1955年、「幽霊はここにいる」が1959年で、小説で言うならば「壁」で芥川賞を受賞したが1951年、代表作と言われる「砂の女」が1962年なので、その間に書かれた戯曲です。「飢餓同盟」「けものたちは故郷を目指す」と同じ時期になります。
表題2篇の他、「制服」も収録。
三島由紀夫もそうですが、昭和30年 . . . 本文を読む
未読の安部公房の作品。
こちら内容紹介。
脚本家と火星人を名乗る男との問答形式で話は進みます。小説ではなく戯曲にもできそうな内容。火星人は人間そっくりで、地球人だと思い込む火星人(地球病)と火星人だと思い込む地球人(火星病)の間で論理的な問答を通して話は進みますが、最後はダイナミックな展開になります。
巻末の福島正美の解説が、日本のSF創世記に触れていて興味深い内容ですが、その中で紹介さ . . . 本文を読む
「方舟さくら丸」を読み返してみて、そういえばこの話の元になっている「ユープケッチャ」は読んでなかったと気づき、読んでみることに。
安部公房の代表的な長編作のベースとなっている作品を含む短編集です。
目次はこちら。
「ごろつき」は、『文學界』昭和30年12月号に掲載。戦後、まだGHQに占領されていた頃の混乱期、靴磨き少年とやくざの話。「壁」が芥川賞を取ったのが昭和26年。初期の短編です . . . 本文を読む
平野啓一郎の新刊が出たので読んでみました。
こちら内容紹介。
5篇からなる短編集です。うち、「富士山」は、新潮に掲載されたときに読んでいます。
「富士山」は、ひょんなことから誘拐されそうになった少女を助ける行動をとった女性が、その行動への協調を躊躇った男性に対して幻滅する心理状態が書かれていますが、その男性が後日に別の子供を救助した行動を通して、女性の男性に対する認識についての葛藤が . . . 本文を読む