その日、白い雪が降った。商店街も、公園も、駅前の広場も示し合わしたようにひっそりと静まりかえり、ひしめき合うのは敷き詰められた白い雪だけ。
校庭もそうだった。
「海底にいるみたいだ」
誰もいない。それが海の底を思わせた。沈められた数多の難破船はこんな光景を目の当たりにしたのだろうか。暗くて、孤独な、闇の中で。
「そうね」
振り向くと、ポケットに両手を突っ込んだ少女が校舎を背に立っていた。首に巻かれた水色のマフラーは彼女の物静かな表情をとらえているようで。その霜焼け気味の頬はどこかせつない。
「こんな場所になんのようさ。朝っぱらから」
彼女は答えるまで一拍間を置いた。そして、誰に向けるでもなく口を開く。
「私、明日、引っ越すの」「…知ってる」
彼女は一度ちらりと見ると、元に戻って続けた。
「あと何年、何十年経っても覚えてるかしら」
眼前に広がる色のない海。何もない、誰もいない校庭。
「私は…、私はきっと覚えてる」
彼女の顔には決意と不安。それから、僅かな希望が一面の雪に照り返っている。
足跡もない雪。きっと忘れないだろう。この日のことは。その横顔と共に。
~~~~~~~~~~
寒いなぁ
本当は恋愛模様を強く書きたかった今作。1000字て足りるはずもなく。
次回作に期待
校庭もそうだった。
「海底にいるみたいだ」
誰もいない。それが海の底を思わせた。沈められた数多の難破船はこんな光景を目の当たりにしたのだろうか。暗くて、孤独な、闇の中で。
「そうね」
振り向くと、ポケットに両手を突っ込んだ少女が校舎を背に立っていた。首に巻かれた水色のマフラーは彼女の物静かな表情をとらえているようで。その霜焼け気味の頬はどこかせつない。
「こんな場所になんのようさ。朝っぱらから」
彼女は答えるまで一拍間を置いた。そして、誰に向けるでもなく口を開く。
「私、明日、引っ越すの」「…知ってる」
彼女は一度ちらりと見ると、元に戻って続けた。
「あと何年、何十年経っても覚えてるかしら」
眼前に広がる色のない海。何もない、誰もいない校庭。
「私は…、私はきっと覚えてる」
彼女の顔には決意と不安。それから、僅かな希望が一面の雪に照り返っている。
足跡もない雪。きっと忘れないだろう。この日のことは。その横顔と共に。
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寒いなぁ
本当は恋愛模様を強く書きたかった今作。1000字て足りるはずもなく。
次回作に期待