冬の寒さなんてミカンの皮をつけとけばいいんだよ――。
「そんな傷口に塩塗りこんどけみたいな」
「それ、痛そぅ」
ニス塗りの机にピンポイントで反射する午後11時の太陽は西とも東とも着かずに揺れている。その傍らに映ったのは、西野由紀のハバネロ増量激辛スープに舌をつけたような、どうしようもなく崩れた顔だった。
「民間療法だからな、こんど試してみろよ」
「あたし痛いのイヤだよ」
冬休み中にクリーニングにでも出したのか、ピンと張った冬服の黒いセーラー服に、年が明けたからってわざわざ新調したわけではないだろうが真新しく見える赤いリボンを結ってある――こいつはそこまで年明け信仰がある奴じゃないから、面倒くさがり屋だし。
教室はがらんと静寂していた。
「みんな遅いね」
「年明け初登校だってのにな」
「もう、最後なんだね」
「ああ、あと3ヶ月もないか」
「小中高って一緒だったのに、なんだか変な気分」
西野は机の上に腰を乗っける。スカートの裾がヒラリと揺れてさらりと落ちた。
「別に死に別れってわけじゃないんだからさ。家だって近いし」
「でも、会う時間は圧倒的に少なくなっちゃうよ」
「圧倒的にか?」
「うん。圧倒的に」
キラメイテなんて降り積もった雪のようで、そんな表現を使いたくなかった――いつかは熔けてしまうから。熔けて消えてしまうから――俺の前から消えてしまう。
しかし由紀の潤んだ瞳は綺麗で儚くてキラメイテ。
「……それはイヤかもな」
由紀は唐突に背を向けると腕を顔にこすり付ける。
「なーにがイヤかもよ、湿っぽいよ。まだ三学期は始まったばかりなのに」
ガタン。
机が呻き、由紀は教室の床に着地する。
「由紀」
「え?」
俺はどこかへ歩き出そうとする由紀の手を捕まえた。
「卒業したって、どうしたって、ずっと一緒だ。これからもずっと」
由紀はしばらく不思議な顔をして俺の顔を見つめていた。
時が止まる――。
それは物理的にオカシな現象。そんなことありえないなんて言えないけど、きっとアインシュタインが宇宙項をつけてしまうくらいアリエナイ出来事だったんだ。
だから、俺は西野の手を離せなかったんだろう。
「うん。ずっと!」
動き出した時の中で西野は、バカバカしいくらい、その一瞬を愛しむかのように笑った。
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雪が解けたら春になるんです、なんセリフを思い出しながら書いた今年、初掌編です。
なんだかみんな忙しいようでブログには足を運ぶことが出来ないようですが、ボクは大丈夫。だって今年大学辞めて、来年受験しようと思っているので\(^▽^)/
今、フリーです。今年は勉強しながらラノベを書きまくるぞ。
今年受験しようと思ってたんですけど、12月まで入院してたのはキツカッタ。なんか一年に二回も長期入院したなんて運が無さ過ぎた。今年は了法寺にでも行って来ようかな……。
しかし青少年健全育成条例ってなんなんすかね。健全ってなにさ。そんな人が考えた枠に当てはめて育成なんて言われても、そんな生きにくい世界は笑顔を殺すだけですよ。マンガやアニメに救われたという経験がある人はボクだけじゃないはず。
アニメ見た人が全員犯罪者になるわけじゃないですし、それなら小説や映画、ドラマの模倣犯等なんかだって同じく規制対象になるでしょう。芸術を一つの視点だけで危ない物なんて決め付けるのは良くないデス。
規制は規制を生むだけですしね。
それにしても、VitsのCMのアリエルちゃんかわいかったなぁ。
まだ六歳だって。天才子役の芦田愛菜ちゃんと同じくらいかなぁ。
あれ、説得力無くなった?