霧雨の芽吹く空気。混じる匂いは郷愁か、邪悪か。尾瀬の道に残された祠の前に立つ少女は目を閉じ、長柄を肩に担ぐ。蛍火が彼女の目蓋を照らし出し、村雲が月を遮る。光が一瞬消えた。
少女は目を開き、薙刀の刃を翻す。
月光が沼地を照らし出し、少女は薙刀を再び担いだ。
足元の、暗闇の水に彼女の顔が浮かんだ。感情を無くしたような青の表情。ぼんやりとしているのは下弦の月。
「どうか安らかに」
少女は一言残し、その場を後にした。
茶屋には客は四人しかいなかった。少なくとも人間は。
「すみません。見ての通りでして」
見ての通りとは、万客万来の店。普通の人間にはそう見えるのだろう。少女は、立ったままで構わないと答えた。客の応対をしてきた娘は、笑顔のまま腰を曲げる。そして、茶を取りに奥へ戻ろうとする。
通せんぼをしたのは、三つの木机を占領していた一団だった。浪人党だろうか、八人いたがその全員が笠で顔を隠していた。腰には脇差と刀の二本差し。しかし、着衣は襤褸切れも同然だ。
「おい、足をかけておいて、謝りもなしか」
「……す、すみません」
娘は浪人党の不躾な言いがかりに圧倒され、恐怖していた。そばにいた客はこぞって駄賃を置き、去っていく。
「おい、お前達、足をかけたのは貴様らの方だろ」
未だ残っていた一人の侍が歯向かった。その瞬間、せせら笑っていたその一団は沈黙し、刀に手をかける。侍も戦いを覚悟したのか、半身を取り柄を取る。
浪人党の先頭が刀を抜き放った。侍も抜き、一閃。それの脇を斬る。
だが、血飛沫が出ない。
「な、何者」
にやりと嫌味に笑い、慄いた侍を袈裟に斬る。侍は目をひん剥いたまま、土に落ちた。
「おい、おやじ、金を出せ。それから、お前ももらうぜ。おい、誰か連れてけ」
へいと返事をした一団の一人の男は奉公していた娘の手を掴む。
「……いや、いやあああああ」
叫び声が響いたと同時、娘は手を離される。娘が、えっ、と見上げると男は真っ二つに割れ、音も無く転げ。その向こうにいたのは、あの薙刀の少女だった。
「私の視界に入ったのが、お前達の天命の尽きだよ」
「なんだ、このアマ」
六人、少女は刀を振り回す大男達の間を疾風の如く駆け、刃にかける。しかし誰一人として血は出ない。六人目を蹴り飛ばし、最後の一人に飛び掛る。が、僅かに刀身を逸らし、薙刀の間合いに入り込み少女を蹴り飛ばす。
少女は夕闇の外へと弾き出され、飛び起きる。何事も無かったように薙刀を構えた。
「そうか、貴様、『鬼』だな」
浪人党の最後の一人の男が刀を片手で振りながら、少女の前に立つ。
「お前は亡霊か」
「ご名答。鬼の刃じゃ、俺たちが斬られるのも分かる」
男は駆け出し、無流の刀を振るう。少女はその刀を弾き飛ばし、斬ろうと迫った直後、男に間合いに入り込まれ襟首を掴まれる。豪腕で真上に投げられ、投げた男は脇差を取り出した。 斬られる。
その瞬間、少女の目は赤く染まり、空は闇に覆われる。
ばたり。倒れたのは男だった。脇差が乾いた音を立て転がった。
「安らかに」
少女は一言呟くと、薙刀を担ぎなおし、道に足を踏み出す。
「あの、ありがとうございました。……またいつか、いつか、いらして下さい」
茶屋の娘は我に返ったばかりの足取りで、少女に見送りの言葉をかける。腰を曲げ、板についたお辞儀と共に。
少女は振り返りもせず、しかしその足取りはどことなく軽かった。
ニコニコ見てたら、日本鬼子ってなんか擬人化されてました。日本って凄いね^^
まぁ、モチーフはそれなんですが、文化祭どうでしたか。台風が来て大変でしたね。
僕は病院があって、なかなか手伝いにも行けなかったんですが。
それから、書き終わって思ったんですが、少女お茶飲んでないよ。のど渇いてないかな。飲ませればよかった。でも、千字には間に合わそうと思ったし、書く時間が一時間も無かったから。でも、またどこかに茶店あるよ。たぶん。
あ、誰か、日本鬼子書く予定ありますか?
少女は目を開き、薙刀の刃を翻す。
月光が沼地を照らし出し、少女は薙刀を再び担いだ。
足元の、暗闇の水に彼女の顔が浮かんだ。感情を無くしたような青の表情。ぼんやりとしているのは下弦の月。
「どうか安らかに」
少女は一言残し、その場を後にした。
茶屋には客は四人しかいなかった。少なくとも人間は。
「すみません。見ての通りでして」
見ての通りとは、万客万来の店。普通の人間にはそう見えるのだろう。少女は、立ったままで構わないと答えた。客の応対をしてきた娘は、笑顔のまま腰を曲げる。そして、茶を取りに奥へ戻ろうとする。
通せんぼをしたのは、三つの木机を占領していた一団だった。浪人党だろうか、八人いたがその全員が笠で顔を隠していた。腰には脇差と刀の二本差し。しかし、着衣は襤褸切れも同然だ。
「おい、足をかけておいて、謝りもなしか」
「……す、すみません」
娘は浪人党の不躾な言いがかりに圧倒され、恐怖していた。そばにいた客はこぞって駄賃を置き、去っていく。
「おい、お前達、足をかけたのは貴様らの方だろ」
未だ残っていた一人の侍が歯向かった。その瞬間、せせら笑っていたその一団は沈黙し、刀に手をかける。侍も戦いを覚悟したのか、半身を取り柄を取る。
浪人党の先頭が刀を抜き放った。侍も抜き、一閃。それの脇を斬る。
だが、血飛沫が出ない。
「な、何者」
にやりと嫌味に笑い、慄いた侍を袈裟に斬る。侍は目をひん剥いたまま、土に落ちた。
「おい、おやじ、金を出せ。それから、お前ももらうぜ。おい、誰か連れてけ」
へいと返事をした一団の一人の男は奉公していた娘の手を掴む。
「……いや、いやあああああ」
叫び声が響いたと同時、娘は手を離される。娘が、えっ、と見上げると男は真っ二つに割れ、音も無く転げ。その向こうにいたのは、あの薙刀の少女だった。
「私の視界に入ったのが、お前達の天命の尽きだよ」
「なんだ、このアマ」
六人、少女は刀を振り回す大男達の間を疾風の如く駆け、刃にかける。しかし誰一人として血は出ない。六人目を蹴り飛ばし、最後の一人に飛び掛る。が、僅かに刀身を逸らし、薙刀の間合いに入り込み少女を蹴り飛ばす。
少女は夕闇の外へと弾き出され、飛び起きる。何事も無かったように薙刀を構えた。
「そうか、貴様、『鬼』だな」
浪人党の最後の一人の男が刀を片手で振りながら、少女の前に立つ。
「お前は亡霊か」
「ご名答。鬼の刃じゃ、俺たちが斬られるのも分かる」
男は駆け出し、無流の刀を振るう。少女はその刀を弾き飛ばし、斬ろうと迫った直後、男に間合いに入り込まれ襟首を掴まれる。豪腕で真上に投げられ、投げた男は脇差を取り出した。 斬られる。
その瞬間、少女の目は赤く染まり、空は闇に覆われる。
ばたり。倒れたのは男だった。脇差が乾いた音を立て転がった。
「安らかに」
少女は一言呟くと、薙刀を担ぎなおし、道に足を踏み出す。
「あの、ありがとうございました。……またいつか、いつか、いらして下さい」
茶屋の娘は我に返ったばかりの足取りで、少女に見送りの言葉をかける。腰を曲げ、板についたお辞儀と共に。
少女は振り返りもせず、しかしその足取りはどことなく軽かった。
ニコニコ見てたら、日本鬼子ってなんか擬人化されてました。日本って凄いね^^
まぁ、モチーフはそれなんですが、文化祭どうでしたか。台風が来て大変でしたね。
僕は病院があって、なかなか手伝いにも行けなかったんですが。
それから、書き終わって思ったんですが、少女お茶飲んでないよ。のど渇いてないかな。飲ませればよかった。でも、千字には間に合わそうと思ったし、書く時間が一時間も無かったから。でも、またどこかに茶店あるよ。たぶん。
あ、誰か、日本鬼子書く予定ありますか?