草創期の広島カープでエースとして奮闘した故・長谷川良平氏(1930~2006)とファンの交歓を描いた紙芝居「長谷川良平物語」が完成した。市民団体「プロジェクトC」が制作したカープ紙芝居3部作の2作目で、3月から各地で上演していく予定。メンバーたちは「『市民球団』カープの原点となった物語を広く知ってほしい」と願う。
「物語」は全30枚。プロジェクトC副代表の倉本須美子さん(50)=東広島市=が主に文章を担当し、団体職員の福本英伸さん(54)=廿日市市=が作画した。
長谷川氏は愛知県出身で、球団発足後、最初のシーズンとなった50年に入団。167センチと小柄ながら、多彩な変化球を駆使し、1年目から15勝を挙げてエースに。63年に引退するまでに通算197勝し、「小さな大投手」とたたえられた。
「長谷川良平物語」の核は、51年のシーズンオフに起きた移籍騒動だ。
契約をめぐるごたごたに嫌気がさし、名古屋ドラゴンズ(現・中日ドラゴンズ)への移籍を決意して帰郷した長谷川氏は翌年春、カープ側の説得で翻意し、広島へ戻る。
「ファンは許してくれるのか」。不安を抱え、広島行きの列車でまんじりともせずに夜を明かした長谷川氏を広島駅で待っていたのは、無数の市民の歓迎だった。「帰ってきてくれてありがとう」「今年も頼むでぇ」の連呼に、長谷川氏は涙し、生涯カープに骨を埋める決意を固める――。
カープの本拠地・マツダスタジアムに近い愛友市場(広島市南区)を中心に、球団史を語り継ぐ活動に取り組むプロジェクトCは08年、資金難の球団のために奔走した初代監督の故・石本秀一氏を主人公にした紙芝居をつくった。
これまでに市内の公民館や福祉施設などで約100回上演。懐かしさで涙を流すお年寄りもいるなど好評だという。メンバーらは昨秋の集まりで、やはりカープの危機を救った長谷川氏の物語を続編にし、さらに広めていこうと決めた。
制作にあたり、メンバーらは改めて、長谷川氏とバッテリーを組んだ現カープOB会長の長谷部稔さん(79)や、長谷川氏の長男、潤さん(54)らに取材を重ねた。「父の背中は大きすぎて近寄りがたかった」と振り返る潤さんだが、「こういう形で父の功績が若い人たちに伝えてもらえるのはうれしい」と、上演を心待ちにしている。
長谷川良平物語は3月5日に愛友市場であるイベントで初披露される。今春以降に制作される第3作は、75年の初優勝をめぐる物語の予定だ。(加藤美帆)
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