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【参加報告】6/6前川喜平さん講演会「憲法と私~国民の権利を守るためにこそ政府がある~」その1(寄稿)

2018-07-01 23:58:48 | 参加報告

<管理人より>
 こちらでも情報提供していた6/6前川喜平さん講演会の参加報告を、K.Mさんからご寄稿いただきました。以下にご紹介いたします。
【参加報告】6/6前川喜平さん講演会「憲法と私~国民の権利を守るためにこそ政府がある~」その1
■日時:2018年6月6日(水)13:00~15:00
■場所:主婦会館プラザエフB2クラルテ
■講師:前川喜平さん(前文部科学省事務次官)
 昨年1月に文部科学省事務次官を退官した前川喜平さんは、同年5月に加計学園問題について「総理のご意向」と記された記録文書の存在を証言したことで注目され、全国各地の講演会にひっぱりだこだ。主婦連での企画情報をいただき、参加してきた。参加者136名とのことので盛会だった。以下、概要をご報告したい。(主婦連のHPの開催案内の記事は→こちら

 演題が「憲法と私~国民の権利を守るためにこそ政府がある~」だったためか、御自分の来歴から話し始められた。
 宇宙の真理について関心があり、宇宙物理学を学びたいと夢のようなことを考えて高校(麻布)時代は理系クラスにいたが、数Ⅲにどうしても歯が立たず夏から文系に転じた。周りの人が受けるからと東大文Ⅰを浪人もいいなと思いながら受験したら受かってなんとなく進学。法律の勉強は面白くなくて仏教青年会に入って仏教と仏教美術の勉強ばかりして留年もした。ずっと受動的に生きてきたので、いま英雄のように言われるのは困る。自ら告発したわけでなくあったものをなかったことにできないと証言しただけ。

 法律学の中でも憲法だけは学ぶに値するなと思い、東大では芦部信喜先生のアメリカ憲法学が緻密で合理的でわかりやすかった。自由権の中でも精神的自由権は絶対的に尊重されるべきだが経済的自由権は相対的でよいと基準が違ってよいという考え方。当時は東北大にいらしたフランス憲法学の樋口陽一先生(その後東大)のお二人から学んだことが大きい。
 「イン哲にいったら食えないだろうな」と転部はしなかったが、仏教と憲法の勉強は私の中ではつながっている。原始仏教はお釈迦様の教えを学ぶが「自帰依自灯明」として自分を拠り所にして自分でつかみとった真理=ダルマを信じなさいとし、主体性を重んじて人格的自立権=憲法に通じている。
 また、カースト制度など不平等を是としたバラモン教に批判的な教えで人間の平等を説いている。フランス革命以来の人権思想とつながっている。法・真理を体得した人間同士はつながることができる。「小我を捨てて大我に生きる」の大きい生命を共有化して一体化するという感覚で宮沢賢治の作品にも現れていてよく読んだ。

 周りの人も受ける国家公務員試験に通った時、人間の自由な活動を支援する文部省にした。在学中から家永裁判など教育権は国家がもち国民に押しつける流れが進行していたが、入ったら本当にひどい所で「面従腹背するしかないな」で38年間やってきた。
 在職中に教育行政官としての心構えを三つの標語にまとめた。●教育行政とは人間の、人間による、人間のための行政である、●教育行政は助け、励まし、支える行政である、●教育行政とは現場から出発し現場に帰着する行政である、というもの。

 現在の政権の腐敗と暴走は目に余る。名古屋の中学校で私が講演したことに対して文部省が口を出したことは教育行政が本来やってはいけないこと。自民党文部科学部会の議員(当該選挙区選出議員がいる)からの圧力がかかったようだ。官僚は不当な圧力を相手を怒らせないようにしながらかわすテクニック(Yes,but・・・とか大臣の耳に入れてかばってもらうとか)を持っているはずなのに、かわしきれずに従ってしまったいくじなし。こんなみっともないことをやるとは驚いた。まさに政府内でも与党内でも「一強体制」で、いじめ問題に似ている。いじめられていると言えない。官僚が自ら公文書の改竄に手を染めることは絶対ありえない。政治からの意向でやらざるを得ないし、そういう圧力をかけている人がいるのにそれを言えない。財務省も同じ。
 モリカケ問題のうち加計問題は現職中にある程度関わったが、私は職を賭して抵抗したわけではなく、褒めるべきは現職で外部に情報提供をしている名も顔もわからない人で私の100万倍勇気があると思う。総理一家に極めて近い元官邸秘書官から性被害を受けた伊藤詩織さんが実名を公表して告発した勇気に励まされて証言をした。身辺に気をつけろと忠告をいただくが中国・ロシアと違って命まではとられない。プーチンからの扱われ方を見ても外交の安倍はウソ。なりふりかまわず権力を維持するという際限のない権力行使、ほどほど感が全くない人。憲法15条の憲法遵守義務を一番守ってどうふるまうべきかよく考えているのは両陛下。安倍くんも見習いたまえと言いたい。

 演題の「国民の権利を守るためにこそ政府がある」というのは、まさに立憲主義の精神で、法律は国が作って国民が守るものだが、憲法は国民が作って国が守るべきもの。子どもにも今わかりやすい憲法の本は広島の若い弁護士の楾(はんどう)大樹さんの『檻の中のライオン』(※)で、国家権力を憲法という檻に入れて暴れ出さないようにしていると説明。権力集中を防ぐための三権分立という方法も日本においては議院内閣制をとっているために政府と与党が一体化しているため、議席数に応じた質問時間という馬鹿なことをすれば大政翼賛会のようになってしまう。国会に出す前の「与党審査」で官僚をさんざんにできるのだから必要ない。安倍一強体制で与党内の護憲派も影を潜めてしまった。2014年に閣議決定で集団的自衛権を認めるという解釈改憲をし、現在の自民党の改憲4項目のうち、緊急事態条項は檻に内側から開ける鍵を渡すようなものだ。
(その2に続く→こちら

※楾大樹著『檻の中のライオン』=2016年06月にかもがわ出版から発行。この本のタイトルで全国各地で公演中。
*「広島の弁護士 楾 大樹 のブログ」→こちら
*かもがわ出版のサイトの該当ページは→こちら


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