<Mより発信>
現政権は、デジタル化推進を政策の目玉にしている。行政手続きのITでの申告ができるようにするのは利便性を高めることは評価できる。しかしながら、利便性の向上やコストカット効果を最大限に享受できるのは行政側と思われ、そのためにITを利用していない人や不慣れなIT弱者を含む全ての人にIT利用を義務化して強要することは反対せざるを得ない。いろいろなトラブルで遅れなかったパブリックコメント(一部割愛あり)の後編をご紹介したい。前編はこちら。
【「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」に対する意見】(後編)
P8 第6 新たな訴訟手続き
民事裁判手続のIT化を契機として、裁判が公正かつ適正で充実した手続の下でより迅速に行われるようにするため、訴訟手続の特則として新たな訴訟手続きの規律を設けることについて、新たな訴訟手続きの規律を設けるものとする甲案若しくは乙案(ただし、甲案及び乙案はいずれも排斥し合うのではなく、例えば、甲案及び乙案を併存させ、又はいずれか一方の規律に他方の一部を導入することもあり得る。)又は規律を設けないものとする丙案のいずれの案によるものとする。
【甲案】*第1回の口頭弁論期日から6ヶ月以内に審理を終結。即時に取り調べることができる証拠に限る。控訴できない。
【乙案】*当事者双方が共同で審理及び裁判を求める。当事者双方が6ヶ月以内で終結する審理の計画を立てる。
【丙案】新たな訴訟手続きに関する規律を設けない。
(意見)新たな訴訟手続きに関する規律を設けない「丙案」に賛成。
(理由)IT化を契機として裁判期間を6ヶ月以内に短縮を図ることに重点が置かれていることが強くうかがわれます。裁判が迅速化されることも大事ですが、丁寧な審理が保障されることも国民の権利であり、「甲案」や「乙案」のような手続き方法を設けることは公正な裁判手続のもとで平等に裁判を受ける権利が阻害されます。
P20 第11 訴訟の終了 1 判決 (2)電子判決書の送達
(意見)「通知アドレスの届出をしたものに対する電子判決書の送達はシステム送達とする」とあるが、みなし送達には反対。
(理由)当事者が確実に判決書の内容を確認する方法をとるべきです。
P20 第11 訴訟の終了 2 和解 (3)新たな和解に代わる決定
新たな和解に代わる決定について、次のいずれかの案によるものとする。
【甲案】
ア 裁判所は、和解を試みたが和解が調わない場合において、審理及び和解に関する手続の現状、当事者の和解に関する手続の追行の状況を考慮し、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のための必要な和解条項を定める判決(以下本項において「和解に代わる決定」という。)をすることができる。
イ 和解に代わる決定に対しては、当事者は、その決定の告知を受けた日から2週間の不変期間内に、受訴裁判所に異議を申し立てることができる。
ウ イの期間内に異議の申立てがあったときは、和解に代わる決定は、その効力を失う。
エ 裁判所は、イの異議の申立てが不適法であると認めるときは、これを却下しなければならない。
オ イの期間内に異議の申立てがないときは、和解に代わる決定は裁判上の和解と同一の効力を有する。
【乙案】新たな和解に代わる決定の規律を設けない。
(意見)「甲案」に反対し、「乙案」新たな和解に代わる決定の規律を設けないことに賛成。
(理由)「新たな和解に代わる決定」の規律が設けられると、それを用いて安易な事件処理や粗雑な判断を招く恐れがあります。裁判期間の短縮とセットの提案であり、裁判所がコストカットを推進している姿勢がうかがえます。2週間以内なら異議申立てができるとはいえ、その判断も難しく、また言い出しにくいことも十分に想定され、公正な裁判手続のもとで裁判を受ける権利が阻害されます。