「生協だれでも9条ネットワーク」

日本国憲法と平和主義、民主主義を守る活動を進める生協関係者のネットワークのブログです

【参加報告】6/6前川喜平さん講演会「憲法と私~国民の権利を守るためにこそ政府がある~」その2(寄稿)

2018-07-02 23:59:00 | 参加報告

【参加報告】6/6前川喜平さん講演会「憲法と私~国民の権利を守るためにこそ政府がある~」その2
(その1は→こちら
 この間、独立性を持っていた行政組織が内閣府の人事権で独立性を失ってきて、会計検査院へも影響力が及んでいることが明らかになった。カケ問題も不公正・不公平・不透明なプロセスで行政が歪められたできごとだったが、愛媛県の文書で辻褄があっていることがよくわかった。誰が見てもウソだとわかるウソをついている政権なのに、3割の人が支持をしている。
 これはすでにファシズムの段階に入っていると言える。自ら考えられる国民が増えればこういうことを許さない国民が増える。安倍政権は既に「ファシズムの初期段階における危険な兆候14項目」があてはまっていると言われている。
※米ホロコースト記念博物館にある「ファシズムの初期段階における危険な兆候14項目」
●強情なナショナリズム、●人権の軽視、●団結のための敵国づくり、●軍事の優先、●性差別の横行、●マスメディアのコントロール、●国家の治安に対する執着、●宗教と政治の癒着、●企業の保護、●労働者の抑圧、●学問と芸術の軽視、●犯罪の厳罰化への執着、●身びいきの横行と腐敗、●不正な選挙


 お友達優遇しかり軍事強化しかり。国家予算の第2グループだった文科省と国交省を防衛省が抜いてしまった(厚労省が一番多い)。科学研究費という補助金もあらゆる分野に防衛予算の比重が高まっている。「団結のためのスケープゴートづくり」では、日教組は文科省と和解した(前川さん現職中に)はずなのに安倍氏自らヤジっている。北朝鮮に対しても拉致問題はあるが、圧力をかけるだけでは解決しない。

 メディアについては「従わせ使って叩く」という支配が既に進んでいるし、教育に対しても政治が介入し、国家の教育権を強める方向性が強まり、まず教育基本法が改正され、権力に従順な人間をつくった反省から「修身」が廃されたのに「道徳」の教科化も決まってしまった。
 歯止めとして、受験科目にしないこと、評価は個人の成長の中で比べる個人内評価にすることというのを設けることはできた。内容が心配な教科書が多い。自由・人権よりも公共の精神、日本人としての自覚を養うことを重視している。個の大切さや地球レベルの視点(グローバルシップエデュケーションやESD=Education for Sustainable Development)が欠如して、特定の価値観をおしつけて型にはまった人間をつくるものになっている。

 たとえば「星野くんの二塁打」というような話ではバントにしろという監督の指示を絶対守るべきだったとしている。日大アメフト部のような話で日本の運動部にファシズムの芽があり民主化が必要だと思っている。
 それでもこういう教材も使いようで、子どもどうしのディスカッションの素材にして自分で考えて見つけ出すようにして答えは一つではないと指導できればよい。文科省がつくった道徳の「学習指導要領解説」では「画一的な人間をつくるのではなく、自分で考えて議論でする場を設ける授業にする」ということを書き込んでいる。教科書会社が作る教師用指導書の方が危ない。「学習指導要領解説」を活用してください。

【質疑応答】
(Q1)自主夜間中学でのボランティアや援助交際だと誹謗中傷された若者貧困調査で出会った若い娘さんに学ぶ意欲を取り戻してもらったようなやりとりなど、弱者に寄り添うことの原点は?
→(A)弱者に共感するメンタリティは自分の母親に育まれたように思う。何不自由なく育ったが戦後の財閥解体で母の父が失業して若い頃相当苦労した。結婚して奈良県御所市に来たが宣言の発祥地であり、差別に満ちた地域で私は育ったのにそういう意識から遮断されていた。

(Q2)新しく導入される「歴史総合」をどう思うか?
→(A)16世紀以降の世界史・日本史を学ぶことは現代につながってくるので期待しているが、日本の栄光の歴史をたどる歴史観だと『坂の上の雲』みたいになってしまう。ワイマール共和国以降のドイツの歴史から学ぶ必要がある。

(Q3)実際に子どもの学校で道徳の授業が不安だが。
→(A)授業内容に関心を持っておかしいと思ったら文科省がつくった「学習指導要領解説」ではこう書いてありますよと声をあげてください。

(Q4)自衛隊は違憲だと思いますか?必要だと思うのですが。
→(A)自衛隊はやはり軍隊で普通に考えると違憲状態だが、個別的自衛権のための実力という大人の判断がされてきていた。それが安保関連法制改訂の中で違憲とされてきた集団的自衛権を認めてお友達の国と一緒であれば戦えるとしてしまった。もっとお友達を増やした方がいいのでは?世の中は欺瞞に満ち溢れている。どんな法律でも文字通り読むと違憲ということがある。このくらいはいいんじゃないかという制限速度内の運用があり、時速70kmのところ90kmくらいの感じで自衛隊を認めてきたが、集団的自衛権は制限そのものを変えてしまうもの。日本国民は集団的自衛権について結論を出さないといけなくなっている。
(概要は以上)

 前川さんの講演はよどみなく、あっという間に1時間半をオーバーしたが、会場は真剣に聞き入り、冗談にはどっと沸き、熱気にあふれていた。質疑応答も5人に絞られたが20分延長になったが、大満足の内容だった。
 会場で販売された前川さんと寺脇研さんの共著『これからの日本、これからの教育』(ちくま新書)を買った参加者が前川さんにご挨拶していただく行列もできていた。私もしっかりサインしていただいた後で、「生協だれでも9条ネットワーク」についてリーフレットをお渡ししてご説明させていただいた。
 主婦連スタッフと一緒にお見送りした際に、城南信用金庫の前理事長の吉原毅さんと麻布高校のラグビー部でご一緒されていたことを『AERA』で読みましたとお話ししたところ、「そうなんですよ。隣のポジションだったのでよくスクラムを組みました」とのこと。主婦連スタッフさんから、数年前に吉原さんにもご講演いただいたということで、御二人との御縁が頼もしく、励みになっていると思えた。


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