中村正直の「頑張れプロ野球」

ベテラン野球記者の本音ブログです。

金本の後継者は?

2008-01-23 18:45:00 | Weblog
 22日夜の話をあえてしたい。仕事を終えて帰宅、風呂に入る前にテレビをつけると、某国営放送に「偉大なるイチロー」が出ていた。番組名は書かないが、多くの野球ファンが見たのではないか。昨シーズンのこと、自分にアジャストしたバットとの出会い、今季に賭ける決意…。イチローらしい言い回しで、自分の思いをきっちりと語っていた。風呂に入るため脱ぎかけていたシャツをもう一度着直し、テレビに前に座った。「これは見逃せないぞ」という気持ちにさせられる番組は、最近では珍しい。

 イチローの言葉には重みがあった。そして、意外な新鮮さを感じた。野球を理詰めでしてきたように見えた男が、フィーリング、つまり感性を口にした。言い方は違ったかもしれないが、言わんとしていることはそうだ。そして、自分が出したいい結果に「僕は満足する。当たり前でしょう。思い切り満足すればいい」と言った。意外だった。それだけに面白かった。「50歳で4割打って引退する」というのもあながちジョークではない。この男なら、それもやってしまうのではないか。そう思わせる、番組だった。

 海の向こうで「神話」を築くイチローと、我々の目の前で「伝説」を創る虎のアニキ・金本。この2人に優劣をつけるのはナンセンスなだろう。ともに、野球人ならリスペクト、いや、尊敬しなければいけない存在だ。彼らが話す言葉はもとより、動きの1つ1つが後進には参考になる。阪神を取材しているとき、いつも思うのは、この金本からエキスを搾り取る男は出てこないのか、ということ。現時点では、どうも見当たらない。

 その金本と“弟分”新井の自主トレが公開された。都合で見にいけなかったが、取材してきたカメラマンの田中記者によると「手術した右ヒザをやはり気にしていましたね」とのこと。開幕まで間に合うか心配になるが、伝説を成す男は必ず逆境から立ち上がってくる。問題は新井の方。“金本イズム”を最も体内に宿すこの大砲が、本当に期待通りやれるのか。“外野席”が賑やかな阪神で、実力のすべてを出し切るのは骨だ。昨年末の北京五輪予選を思えば、そこそこにはやってくれるだろうが、今年に限れば少し割り引いて考える必要がある。

 表題で書いた「金本の後継者は?」の答えは、現時点では間違いなく新井だ。阪神の生え抜きにはいない。ただ、その新井とて、金本の足下までたどりつくのがやっとだと思う。これから何をするか。何を成すか。誰に影響を与えるか。アニキに肩を並べ、越せるようになるかかどうかは、まず今年の戦いぶりを見てからだ。
 
 かのジャッキー・ロビンソンはこう言っている。「他人の生き方に影響を与えてこそ、人生に意味がある」。