中村正直の「頑張れプロ野球」

ベテラン野球記者の本音ブログです。

ある寿司屋にて

2008-01-09 18:52:49 | Weblog
 「灯台もと暗し」という言葉がある。子供の頃は「“東大モトクラシー”って東京大学に関係ある何かだろう」と勝手に解釈していたが、全く違っていた。ひっとして、あなたもそうじゃないですか?身に覚えがあるでしょう。広辞苑には「台(燭台)の直下はあかりが暗いように、 手近の事情はかえってわかりにくいものである」と記載れている。本当の意味を知ったのは、高校になったころ。言葉を生業(なりわい)にする者にとって少々情けないが、真実だからしょうがない。

 自宅近くの駅前にあるお寿司屋さん。大学の頃、2、3度訪れたことがあった程度で、この前までさっぱり足が遠ざかっていた。久々にのれんをぐぐり、たらふく極上のにぎりをメタボな腹に放り込んだわけだが、店主との会話の中で、何人かよく知るプロ野球選手の名前が出てきた。中日からFAし、巨額の契約金でカブスに入団した福留や、去年の日本シリーズ最終戦で歴史的な快投を見せた山井、そして
阪神の渡辺。プロ野球に精通しているファンなら、彼らの共通項はすぐにピンとくるはず。そして、このお寿司屋さんも…。

 彼らがこの店の常連客だったとは、全く知らなかった。よく考えてみれば「なるほど」となるのだが、すぐには結びつかない。目と鼻の先で、彼らがうまそうに寿司をほうばっていたとは…。これがタイトルの「灯台もと暗し」というヤツだが、それはそれとして、大将の話の中でおもしろかったのを、一つだけこっそりと紹介する。虎もふられた福留のことだ。

 カブスと4年50億以上という契約を結び、勇躍、海を渡る福留だが、それを何ら鼻にかけるわけでもなく、謙虚な男だという。大将は「社会人を経験しているから人間的に練れていますよね」と賞賛の言葉を並べ、一つのエピソードを教えてくれた。結婚する彼女とのメールを見て「どういう内容ですの?」と聞いてみたら、
こんな答えが。「『冷凍庫に入っているアイスクリーム、食べないでよね』て」。庶民的なやりとりをしている福留を見て、人間味を感じたらしい。阪神ファンにすれば、憎たらしい選手だったが、一旦ユニホームを脱げば普通の青年ということ。共通項を得たことで、一気に親しみを感じた。

 「灯台もと暗し」は、まだまだ至るところに存在する。我が会社のこと、そして家族のこと。身近で知らないことなども山ほどあるに違いない。そう言えば、あの金どないしたやろ。うっ、へそくられたかもしれん…。