中村正直の「頑張れプロ野球」

ベテラン野球記者の本音ブログです。

藪と野茂

2008-01-06 09:49:18 | Weblog
 正月に届いた年賀状を整理していて、元阪神・藪からの賀状が今年も届いたこ
とに、何だかホッとした気分になった。成長した子供さんたちが躍動する写真を
見ながら、海の向こうで頑張る彼の姿を頭に思い浮かべて「頑張れ!」という声
にならない声を出した。阪神からFA宣言して海を渡っていったのは、いつだった
か。確か、03年オフだったと思うが、もう記憶が風化してしまっている。今は
彼が阪神のエースとして奮闘していたシーンしか思い出せない。

 藪は記者より3歳下だから、今年で40歳になる。同じ県を故郷に持つだけに
担当記者時代から特に強い関心を持って取材していた。彼が先発の柱だった頃は
なにしろ「長期低迷時代」の真っ直中。6、7回まで完ぺきに抑えていても、必
ず1イニングだけ大崩れしてしまう「悪癖」があり、勝ち星を思うように積み重
ねることができなかった。打線も脆弱(ぜいじゃく)だったせいもあり、いつも
悲運を背負っていたように思う。ただ、そんなことはおくびにも出さなかったの
は、彼のプライドだったのだろう。

 今現在のチームならば、楽に2ケタは稼ぐだろうし、最多勝まで考えられる。
何せ、最後の3イニングは世界最強の抑え3人衆が鎮座し、先発陣を分厚く援護
するのだから…。5回まで1、2点に抑えればいいのなら、彼の力量だったら苦
もなくやってのけるに違いない。ひいき目かもしれないが、これが本心。今春、
サンフランシスコ・ジャイアンツのスプリングキャンプに招待選手として参加す
るというニュースを聞いた。「死んでももう1回メジャーのマウンドに立て!」
と声を大にして言ってやりたい。

 そしてもう1人。野茂だ。記者が新聞業界に飛び込んで、最初に担当した球団
のルーキーだったのがこの男だった。いろいろ、言い尽くせないほどの思いがあ
って、すべて書ききれないから省略する。紆余曲折を経て、最近ロイヤルズとマ
イナー契約を結んだようだが、彼のあくなきチャレンジ精神には本当に驚かされ
る。抱えきれないほどの栄光と名誉を得ていながら、もう1度あのマウンドに立
つことだけを目標に、コツコツと努力を積み重ねている。こんな事を書いている
のを彼が読んだら、どう思うだろう…。

 藪と野茂。昭和43年生まれの同級生。そうそう、桑田もこの年の生まれだっ
た。巨人担当時代、桑田に「競馬が趣味やねん」と言ったら「もっとまともな趣
味を持ったらどう?」って言われたっけ。そんなことはどうでもいい。とにかく
今年は彼ら3人の動向に目を配りつつ、トラを見ていこう。