さなえのうた

歌いながらあちこちに出没します♪

StaatsのFigaro

2012-10-24 | 鑑賞日記

ウィーン国立歌劇場日本公演『フィガロの結婚』を観てきましたー。

いやー、勉強になったー

  横も天井も四角く囲って、
(床も八百屋舞台かも?)
音響効果バッチリの舞台。

子音しか発音していないようなささやき声ですら
バッチリ聞こえます。

歌い手にやさしいアナログな拡声器です♪

 

 

先日見たピーターグライムスもパルシファルもそうでしたが、
舞台セットが反響板になってくれると、
歌がちゃんと聞こえてくるんですよね~。

予算がないからと、セットを組まず、
舞台奥のホリゾント(照明が当たる布)がむき出しで、
アクトゾーンに机や椅子や、申し訳程度の柱があるだけだと、
小さい会場であったとしても、オーケストラやエレクトーンに消されてしまって、
人の歌声が聞こえないことがよくあります。

 

ちゃんと壁が囲ってくれていると、その壁に反射して、
声が客席に飛んできます・・・厚いオケも電気のエレクトーンも越えて。

歌い手が嬉しい舞台セット♪

 

 

八百屋舞台も、実は反響板の役割をしてくれるんですよね。

 

 

日本のお寺の床が木だったり、歌舞伎の舞台の床が木だったりするのも
たぶん反響を考えてのこと。
しかも、反響させやすいように、読経をするお坊さんも謡い手さんも
床に近い場所で発声するために座ってますもんねぇ。。。

 

 

 

さて本題。

やっぱりオーケストラが素敵でした!

細かい音符が続く序曲も、トップからバスまで弦がそろっていて、
ティンパニーとかが突出する訳でもなく、
誰も目立たないけどすべてが揃っている・・・

洗練された、繊細な演奏で、これぞモーツァルト!って感じでした

 

 

どの音もキラッキラしてるけど、派手じゃなく目立ってる訳じゃない・・・
これって、とっても重要!

 

 

 

序曲の間に演者に何かをさせるパターンではなくて、
ちゃんとオーケストラを聴かせるパターン。
でもアタッカなので、序曲終わりの頃にはカーテンが開き・・・

一番好きなパターンです♪

 

フィガロのテーマ、スザンナのテーマ・・・
会うとすぐにイチャイチャしていて、
あー、今日は結婚式なのねん♪と、見ていてこっちも楽しくなる感じ。

スザンナの花嫁衣装が、マネキンに着せられて飾ってありますが、
伝統的な民族衣装って感じのデザインで・・・
そういえば、花嫁衣装が白と決められたのは、
結構近年になってからなんだよねー、誰が最初だっけ?と、
・・・考えても思い出せず

 

1番が終わるとベッドに転がりこんで、シーツを被って
被ったままレチタティーヴォが始まります。 
イチャイチャ感がMAXでめっちゃかわゆい

で、「ちょっと待った」って感じでシーツを跳ね除けて起き上がるスザンナ。
“E in questa stanza?この部屋?”

で、説明を始めるフィガロ(2番)

らせん階段を上ると通路があり、下手が夫人、上手が伯爵の部屋。
上で歌うと、天井が頭上近くなるので、声がさらに大きくなります・・・。

 

 

たぶん、指揮を見て歌っていないので、
タイミングがかなり遅かったなー。

 

 

“Susannna, pian pian,”とフィガロが歌っている間に、
伯爵の絵に八つ当たりしているのが、めっちゃかわいかったなー

レチタティーヴォでは、同じセリフを繰り返したり、
「でもー」って感じに語尾を伸ばしてみたり、
“Taci.黙って”って本当に小声で(子音しか聞こえないくらい)歌ってみたり、
“初夜権”という単語を言う前に、Figaroに思い出させようとするアクション、
指を鳴らすなどしてみたり。
別れのチュッチュをしているので“Fi...Fi...Figaro”になっていたり、
面白かったなー。

あんなにうまくできないー。

 

3番アリアの最高音Fは、テヌートしていましたねぇ。
伴奏がないところだし、テヌートさせているんですねぇ。

 

 

その後のバルトロとマルチェリーナの登場は、
初めて合点がいった!

フィガロとスザンナの部屋に、
どうして他人がズカズカと入り込んでくるんだろーって演出が多いのですが、
ああ、フィガロを探してきたんだなーってよくわかりましたし。

しかも、「こーんな部屋もらっちゃって!」とか「この花嫁衣裳着るのね」みたいな
イヤミつき!

バルトロとマルチェリーナが協力関係にあるのも
(後でその理由は明白になりますが)
すっごくよくわかるし。

 

 

喧嘩の2重唱の前に会った時、明らかに目があっているのに、
無視しているお互いが面白かったなー。
この二人の喧嘩は、今に始まったことではなくて、
ずーっと前から続いていたんだなーって感じられるし。

 

 

ケルビーノの登場は窓から。
誰かに追いかけられて・・・つまり、
たぶん、女の子のところに潜り込んでいたのを見つかってしまって
追いかけられて逃げ込んできたところにたまたまスザンナがいたって感じ。

で、伯爵夫人のことを話しながらスザンナのスカートに
手を入れようとしたりするもんだから・・・
相手が違うでしょっとたしなめられる。

10代の男の子って、こんな感じの子、いるよねー。

 

 

経験はないけど。

 

 

で、スザンナ的にいえば「からかっているうちに」リボンを取られてしまう。

 

 

動きの全てが、納得のできるものなので、
見ていてとっても自然です。

歌うために舞台に出てきたのではなく、
舞台に出てきたので歌が聞こえている・・・みたいな。

つまり、舞台の上に出てきていなくても、
たぶん何かを喋っているし、
それぞれのキャラクターは、それぞれ何かをしていると
納得させる演出。

 

 

これって、めっちゃ大事。

これができる演出家って、日本にはまだまだ少ないですよね。
・・・いない訳ではありません。います、何人も。

 

 

 

9番アリアの前、スザンナを抱いてやれと伯爵から言われ、
ケルビーノが両手を広げてスザンナに近づくと・・・
その手をフィガロに捕まえられて、スザンナとハグができない!
&フィガロから耳打ちされる。。。なんてシーンも、
よくできているなーと思いました。

 

 

 

2幕が始まって幕が開くと、窓のそばに立つ伯爵夫人。
部屋の中央にスザンナが立っていて、何かを報告している様子。

やわらかな光に照らされた部屋着姿のロジーナが、
この上もなく美しくて、感動的でした。

 

映像じゃこんなにきれいに描けないと思う。。。

 

 

しかもsempre pianoでの演奏が、涙を誘います。

 

 

ロジーナって、重いイメージがあったけど、
実はレッジェーロでいいのかもね、と思った瞬間でした。

勉強してみよっ。

 

 

フリットリのレパートリーはミミとかリューとかだから、
私の声とは違うはずですが・・・
初演キャストはLaschi

 

 

 

11番アリアのvoiが、前半では不特定の誰かだったのに、
後半ではしっかりとロジーナになっていて、
彼女にささげるラブソングになっていました・・・
それをロジーナも感じていて、スザンナもわかっていて見守っていて、
ロマンティックなシーンでしたねぇ。

 

あやうくキスしそうになる二人を邪魔するタイミングもばっちり

 

 

 

12番の中で、観客には見えないけれど、
おそらくケルビーノの半裸を目にしたであろうロジーナがとったリアクションも
見事でした。

 

それを行う人も大事ですが、それを目撃する人の芝居も大事ですねぇ。

 

 

 

13番はベーレンライター版でしたが、
最初のハイCを失敗したら次をオプションにする、
その判断と即時に対応できるのがすごいです。

 

 

フィギュアスケートで言ったら、4回転を失敗したので、
2回目は回避して3回転に修正する、みたいな。

なかなかすぐに対応できることではないですよ。
走り込むスピードが、変わってきますから。

 

 

 

フリットリの声は重いのに、あんなにピアニッシモを聞かせているんだなーと
感動しました。

素晴らしいテクニックです。

 

 

14番、前奏で、
伯爵達がさっていったドアを気にしながらケルビーノの隠れているドアに近づく時、
そのスピードがaccel.していったのがかわいかったー。

真似したいっ!

 

 

ついでに、最後のセリフのfermateが、彼が別れ際のハグを
「必要以上にするので」思わず手を放したら、
その隙に飛び降りていった・・・なのが、Good!

それまで必死に捕まえていたのに、どうして手を放しちゃったんだか、
明白にわかりますもの。

 

 

観客にも、演者にも。

 

 

 

15番、ロジーナの“Susan・・・na!”の言い方が良かったなー。

真似したいっ!

 

 

アントニオが入室してきた時に、靴を脱いでいたのも笑いました。
あー、たぶん泥だらけなのねー。

 

 

15番後奏で、やっぱりスザンナとマルチェリーナが争っていたのも
面白かったなー。

 

 

17番アリアの最高音FisはDに変更していましたねー。
オペラハウスのレパートリーオペラには、ありがちなパターン。

 

 

 

順番入替をしないパターン。

クルツィオが、6重唱の中でもどもっていて、
めっちゃおかしかったー。
しかも、どもらずに言う練習をしていて、
成功してストレートに言えたら喜んでいる!みたいな!
細かすぎて伝わらないかもしれない小ネタ。

結構好きです♪ よく見つけちゃう♪

 

 

 

19番アリアは素敵すぎて涙が出たー。

悲しんでいるというより、絵になっている。
それが、ロジーナの高貴さでもあり、
人々が涙する結果にもなっていて・・・

うーん、真似したいっ!

 

 

 

21番コーラスで、ケルビーノの存在に気付いているのに、
わざと「誰かに似てない?」っていうのもナイスでした。
もちろん、その前にケルビーノと気づく芝居もありましたし♪

 

 

22番フィナーレのコーラスの中で、伯爵がバルバリーナを捕まえて
何かを指示しているシーンがありました。
よくやりがちだけど、これは絶対やってほしいと思っていることの一つ。

 

 

で、舞台転換があるのですが、
幕前に伯爵夫妻が座っていた椅子が置きっぱなし。

その椅子のあたりでバルバリーナがカヴァティーナを歌うので、
なんだか妙に納得しました。

 

 

24番と25番はカットされてて残念。

聴きたかったなー。

 

 

 

 

でも、長いしね・・・。

 

 

 

 

27番アリア、花の冠をかぶせたいと、ちゃんとフィガロに向かって歌っていて、
しかも後奏で、フィガロの背中に投げキッスをしていて・・・

すっげーいいなーと思った!!!

 

 

このバラのアリアは、フィガロへの真実の愛を歌ったアリアだと思う。

 

 

 

フィナーレで、“Contessa, perdono”を聴きたいのに、
字幕を見た観客から笑いが起こるのは、
いつも残念なんですよね・・・。

字幕のタイミングをずらして欲しい。。。

 

 

 

 

Siと言いましょう、のSiを強調していたのは・・・真似したいっ!

 

 

 

 

最後にやっぱりロジーナとケルビーノの関係をにおわすのは、
お決まりのパターン。

3作目への序章ですしね~。

 

 

幕が閉まると・・・幕前にフィガロとスザンナが取り残されていて、
抱き合っている・・・と、観客に気付いて、
慌てて引っ込む!

 

 

これ、めっちゃかわいいー。

 

 

 

 

 

 

って、覚書的に書き出してみましたが、
ほとんどネタばれですね。

すみません。

 

 

 

 

カーテンコールで、マエストロが登場した瞬間に、
100数十名の観客(特にS席)が、一斉に立ち上がって
スタンディングオベーションをしていたのは、嬉しかったです。

そう。この公演の最大の功労者はマエストロです。
彼なくして、この感動は味わえませんでした。

 

 

 

 

 

 

神奈川県民ホールからの帰り道・・・

夜の街の風景、タクシーを拾う人々、
足早に駅へと向かう人々、
オレンジ色の街頭に照らされたビル、
明る過ぎない街並みと、星空。
公園・・・。

 

 

どうしても、ニューヨークを思い出します。

 

 

もう一回、行きたいなー。


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