備忘録

舞台の感想を書いています。(ネタばれ有り)Twitterはdacho115。

『国民の映画』初演

2011-04-06 01:44:22 | 国内ストプレ
一幕はゲッペルスの客が集まるまで終了。(出演者の紹介)
二幕。エルザの浮気が問題になり、一時的に距離を置こうとするゲッペルス。しかし、それに納得のいかないエルザ。それをなだめ"国民の映画"の制作・キャストを客の前で発表するゲッペルス。その作品とは『ウィリアムテル』だった。しかし、その作品を制作する上で、問題になるのが、グリュンドゲンスが同性愛者であること。同性愛者であることを否定することを求めるゲッペルスだが、その主義だけは曲げないといい、去ろうとするグリュンドゲンス。そこに自暴自棄になったエルザが乱入し、発砲騒ぎに。その流れ玉を受けたグリュンドゲンスだが、衛生兵でもあったフリッツが応急処置に当たる。そこで、レアンダーがヒムラーの前で、フリッツがユダヤ人であることを口を滑らしてしまう。執事として、ゲッペルスのことを庇うフリッツだが、翌日出頭することに。そして、ユダヤ人の収容・虐殺の概要を聞き、ヤニングスを始め、リーフェンシュタール以外は去る。そんな自分の理想の映画制作に同調しない面々に落ち込むゲッペルスに、リーフェンシュタールが『自分が何とかする』と訴えるものの、『お前一人ではどうにも出来ない』と突き放す。また、
最後に残ったケストナーはユダヤの血をひいていることから、協力を申し出る。
最後、執事の衣装を置き、出頭するフリッツに映写を頼むが、断れ、自分で映そうとするがやり方が分からないゲッペルス。そこに戻ってくるフリッツだが、フリッツ自身が楽しむために、映写機を回し、登場人物のその後を語り、暗転。


小日向。結構、クールな役かと思ったら、飄々系な一幕。足を引き摺る役だが、その階段の降り方が凄く、最初はその仕草に笑いが。二幕は流石に冷徹路線だが、『上海バンスキング』の政府上官(広田?)を彷彿。一つの作品でその二面性が観れるとはお得な舞台だった。

段田。声が潰れている。また、影の薄さ加減があまりにもハマる。三谷作品には初登場だが、基本的に三谷のイメージ宛て書き?

白井。初登場時に場をもっていく破壊力。男性陣で"歌える人"は居なかったのか?と。……、居ないか。また、かなり巨漢な設定なため、観ていて違和感が。

石田。結構、個性的な声質な女優だが、新妻の特異な発声(印象)に負けている。二幕でケストナーとの関係が出てくるが、それでもゲッペルスの嫉妬が表面上に出てこないので、そのエピソードの必要性が薄いし。もちろん、過去のケストナーからの手紙をラブレターと勘違いする夫婦という笑いは面白かったが。その時に倒れ具合が凄かった。まるでドラマの様な倒れ方。

シルビア。噂好きの女性。これまた異質な発声・キャラ(良い意味で)。キャラ的には宮地雅子系なのだが、あれよりもオーバーアクション。それでいてそのオーバーアクションに違和感ないのはハーフたから?また、最後、あれほど自分を売っていたが、俳優仲間の自殺の真相を知り、その奥さんが絡むエピソードで、ゲッペルスから離れるが、ちょっと弱いような。勿論、その奥さんのえくぼについても話してはいるし、ユダヤ人問題が急に身近になったことも言及はしているけど。そして、見せ場の一つ"ツクツク"。あそこまで歌わせるとは。イキナリ感はあるけど、あのドイツ民謡チックな曲は妙にハマっていた。

新妻。他二人とは違う意味で浮く発声。元々、高音質な声だが、より際立つ。新進気鋭な助監督だが、働く女性なイメージで宛て書き?(書いてて古臭い表現だな)最終的にゲッペルスはその才能でなく、知名度の面でスタッフに登用しているから、間違ってはいないような。こちらも歌うシーンがあるが、不協和音要因。シルビアと白井氏とのデュエットに入るがその耳をつんざくような高音は流石。二幕の"演技論"シーンで、江戸弁を話すがこれは千秋楽仕様だったらしい。

今井。ワガママな天才肌の作家。その傍若無人ぶりに違和感なし。基本、こういう役を宛てるのか。最後にゲッペルスからの要請を受けた理由を話すが、その理由も納得出来るし。ただ、その作品に関する自身の評価は何処にも話していないという史実が、また納得出来る今井@ケストナー。

小林隆。執事がハマり役。『古畑任三郎』のイチローがゲストの回以上に小林氏をクローズアップ。翻訳モノや井上作品、戦前脚本モノの舞台を観てきたが、これほど小林氏にクローズアップした作品はないかと。三谷作品だと『恐れを知らぬ~』も結構、美味しい役だったが、今回はメインストーリーに絡むし。最後、ずっと主人に仕えていたフリッツが感情を見せるシーンは小林氏ならでは見せ場。(基本、温厚なイメージなので)惜しむらくは、二幕冒頭で三谷氏と絡むシーンが見れなかったことか。また、三点倒立が得意というシーンがあり、ヒムラーに披露しようとするシーンがあるが、これも千秋楽仕様?

平。顔のみで売る役。流石にこの人数だと、コチラの見せ場は少ない。観ていて藤本隆宏(元四季のエルマー役者)を彷彿。

吉田。他の女優三人が余りに個性派なので、地味に見えるが、実は結構濃いキャラ。若いのかベテランなのか実年齢が分からない辺りが演技派?

小林勝也。前回(『12人の怒れる男』)と全く違う。つーか、白髪姿を初めて観た。多分、台詞廻し等は変わらないが(若干、作ってはいるが)、こういう温厚な役が意外すぎる。普段観ているのが、口が悪いジイさん役なので余計に。また、劇中劇の様なシーンがあるが結構、貴重なシーンかも。と、ここまで書いて梅野氏とイメージが混ざっているかも。

風間。ベテラン俳優で久々に滑舌の悪い方を観たような…。ま、何時も通りなので、自分の好みな発声ではないだけだが。三谷作品では日和見主義な役が一人は出てくるが、今回は風間氏。一番のツボはビスマルクを演じるシーンだが、一体どんなエピソードなんだか。つーか、この箇所は創作なのかが気になる。


一度目のカテコで、"山の音楽家"シーンを再現。二度目のカテコで三谷氏登場で、ブログに載っている口上。節電ネタはなかったが、"この脚本がある限り上演する"という箇所が追加されていたような。その口上途中で、白井氏があの歌を口ずさみ登場し、『帰れ!』(はっきり聞き取れず)と恫喝し幕。


二幕冒頭からフリッツがユダヤ人ということを匂わす台詞が多かったので、最後は連行シーンで終わるのかと思ったら、ゲッペルスに言い寄っていた者全てが去っていくというオチ。それでも、"ユダヤ人"と"ヒトラー"という単語は最小限に抑えられており、それが余計にオモい。
ましてや、最後、マグダに『ユダヤ人にしてはカンジが良かったのにな~』と言わせるが、これは所詮フリッツは使用人認識?それとも、彼女なりの強がり?結構、冷めた言い方なので、実は使用人以上の感情は持ってないともとれる台詞。
ここ最近、ナチスサイド(『我が友ヒットラー』)、ユダヤサイド(『コラボレーション』)という舞台を観てきたが、今回は両サイドの話か?基本的にユダヤ人の虐殺という歴史が前提にあるため、登場人物にユダヤ人が出てくる段階で、絶望的な最後になるのだが(『SOM』は若干特殊か?)、ゲッペルス家のある一夜の出来事ということで、コメディ要素が発生。

また、最近の新作では『ろくでなし啄木』よりも当たり感が強い。久々に上演時間の長さを感じなかった作品。勿論、出演者数が結構いるので、削れるのでは?というシーンも幾つか。勿論、"国民の映画"を制作する上では必要な人達なのだが、それでも、人がウジャウジャいるので、もっとスッキリと減らせるのでは?と思ってしまう。
過去の作品の焼き直し感がなかった。検閲ということで『笑いの大学』系かと思ったら、全然違う方向性。
ユダヤ人エピソードがある段階で感動的な話にはなるのだが、それを小林隆氏にやらせるあたりが良かったと思わせる理由か?

戦時中という非日常的な時に、『映画(芸術)は必要か?』というテーマもあるが、これが現在の"震災後における舞台のあり方"と重なる。


ゲッペルスが"かぜとも"と略すのを聞いて、東宝ファンは"かぜとも"宝塚ファンは"かぜさり"と略すという話を思い出した。(逆かも)

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4 コメント

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Unknown (うらら)
2011-04-07 10:30:50
詳細で読みごたえがあります。今後も頑張って更新してください。
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コメントありがとうございます (dacho)
2011-04-07 12:43:57
うらら 様

こんな偏った観劇傾向と役者感想のブログに
いらして、ありがとうございます。

何で検索されたのかが気になりますが(笑)、
また、よろしければいらして下さい。
返信する
☆参考とさせて頂きました☆ (TiM3)
2011-04-17 14:22:47
初めまして。

大阪で『国民の映画』を鑑賞しましたので、
その感想を拙ブログにまとめる際、参考とさせて頂きました。

通常は「ゲッペルス」じゃなく「ゲッベルス」と表記される
事が多いようですが、どちらが正んでしょうね(⌒~⌒ι)

日本語とは発音が違うでしょうし、そのどちらも
「正しい読み方」とは違うのかも知れませんね。。

ではでは。
返信する
ゲッべルス! (dacho)
2011-04-17 16:04:16
コメントありがとうございます。また、こんなテキトーな感想なので、参考になるのやら。


そして、今、パンフレットで確認したのですが、ゲッべルスでした。Wikipediaでも、ゲッペルスの表記は正しくないと載っていたり。

どうも、横文字の名前が苦手でして、カナ名前は直されることがしばしばあります。

でも、ブログ検索をかけると、ゲッペルスの方が沢山ヒットするので、勘違いしている方が多いのかも。
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