CYCLINGFAN!!

自転車をこよなく愛し、自分の脚と熱いハートで幾つになっても、可能な限り、どこまでも走り続けます~♪

カーボンフレームを考える(3)

2024-04-21 09:45:18 | ロードバイクの科学
 カーボンフレームの名車を数多く送り出して来たLOOKのウェッブサイトには、バイクの種類によるカーボン素材の配合率が示されています。ここには引張弾性率が違う12tから60t迄の6種類のカーボン素材が示されています。
それは以下の通りです。

 1)SPECIFIC FIBERS 12t
 2)HR(HighRigidity)CARBON 24t
 3)IM(IntermidiateModulus)CARBON 30t
 4)HM(HightModulus)CARBON 46t
 5)VHM(Very HightModulus)CARBON 50t
 6)UHM(UltraHighModulus)CARBON 60t
 「引張弾性率」とはヤング率ともいわれ、単位断面積当りの引張応力と応力方向に生じる伸びとの比で表されます。 数値が大きい方が応力歪みが小さい樹脂製品です。 製品設計において引張りの強さはあまり参考になりませんが、引張弾性率は製品に掛かる応力の使用範囲の中での変位を算出出来る点で参考となる数値なのです。

 最高級カーボンフレームメーカーとして有名なLOOKのロードバイクフレームで最軽量の785 HUEZ RSでもUHMの比率はわずか10%、最新エアロロードの795 BLADE RSでも5%に過ぎません。その一方で最も引張弾性率が低い12tのSPECIFIC FIBERSが795 BLADE RS以外全てのモデルで使われているのは注目に値します。785 HUEZ RSでは12%、UHMが使用されていない785 HUEZ で11%、エンデュランス系のOPTIMUM+では15%と比率が高くなっているのです。これは同質の東レCPRFのみで作られているPINALERO等とはフレーム設計コンセプトが違うのです。
 「引張弾性率」の高いカーボン製品ほど軽くて硬い高級品になりますが、LOOKのフレーム設計に見るように、高級バイクに必ずしも高級のカーボンばかりが使われるとは限らないことが良く分かります。スパークライミングバイクの785 HUEZ RSでさえ半分はIM(IntermidiateModulus)CARBON 30tが使用されているのですから。LOOKの凄いとこころは、VHM(50t)以外の5素材を最高のバランスで使用していることでしょう。
 これはフレームをCFRPの質の違うシートを部署に応じて上手く組み合わせて作るか、同じ質のCFRPシートの向きや重ね方を工夫して作るかの違いだと思っています。この場合、LOOKの製法は手間がかかり特殊だといえるでしょう。

 
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カーボンフレームを考える(2)

2024-04-20 09:24:59 | ロードバイクの科学
 東レのウェッブサイトによると「CFRPとは、2つ以上の素材を組み合わせた複合材(コンポジット)の一種で、炭素繊維(カーボンファイバー)を強化材として加えたものをCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)「炭素繊維で補強・強化されたプラスチック」の頭文字をとった略語)と呼びます」ということです。さらに「CFRPの特徴は何と言っても『軽くて・強くて・腐食しない』ということです。その上、疲労強度に強い、耐薬品性に優れる、通常の熱的環境では安定といった様々な特性があり、スポーツ・レジャー用途や自動車・バイク、土木建築、産業機器などに採用されています。航空宇宙分野やレーシングカーといった厳しい条件下においても長年使用されている、信頼性の高い材料です」と記載されています。

 「CFRPの大きな特徴の一つに、CFRPが異方性材料である点が挙げられます。金属やプラスチックは等方性材料ですが、CFRPは繊維と樹脂という性質の異なる材料の組み合わせで、繊維の配向方向や材料種類を変えることで剛性や強度を変えることが出来るのです。従って、CFRPはアルミよりも軽く、また、方向によっては鉄以上の剛性を実現することが可能になり、金属では製作不可能な部品形状を実現したり、複数の金属部品を統合した形状にできる等、CFRPならではの設計が可能です。」ともあります。

 これはまさに軽くて剛性が高く特殊な形状を求められるバイクフレームには最適な素材だと誰もが認める事実です。しなりを重視してクロモリ、軽くて高剛性を求めてチタンという選択肢もありますが、加工のし易さは圧倒的にCFRPが優れているのは間違いありません。

 重量にしても鉄の1/4、アルミの1/2と軽く、引張強度は鉄の2.5倍、アルミの5倍、引張弾性率も鉄の2倍以上、アルミの5倍以上と破格なデータがあるのです。ここで注目したいのは引張弾性率の高さです。この引張弾性率が高いほど軽くて硬いCFRPになりますが、ロードバイクの場合、ただ軽くて硬ければ良いというものではありません。
 
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カーボンフレームを考える(1)

2024-04-13 10:15:24 | ロードバイクの科学
 今やロードバイクに限らず、MTBやグラベルバイクにも当たり前のように使用されているカーボンですが、ここで使用されているカーボンが鉄やアルミと同じ金属だと思っている自転車乗りが意外と多いのです。
 鉄やアルミは金属で炭素は非金属というのは学校の理科で習っているはずなのですが。自転車のフレームは鉄・クロモリ・アルミという金属で作られて来た歴史が長く、フレーム素材としては比較的新しいカーボンもフレーム素材に使われるのだから金属という誤解が生まれたのでしょう。

 カーボン(炭素)は元素記号“C”で元素番号は“6”です。CannondaleのSupersixの“6”はこのカーボンの元素番号に由来するものです。アルミの雄として名を馳せていたcannondaleが本格的にカーボンロードを作るぞという強い意志が込められているのでしょう。
 自転車等に使用されるアルミはその用途に応じてCu(銅)やMg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、Si(シリコン)。Zn(亜鉛)との合金です。ロードバイクやMTB等に使用されているのは、その中でも自転車に良く使われるのが6000系合金(Al-Mg-Si系)という熱処理型合金です。一時期軽さ重視で7000系合金(Al-Zn-Mg系)がもてはやされていたこともありましたが、軽いけど硬すぎて、今ではフレームに使用されるケースはほとんど無くなっています。

 このようにアルミ合金は純アルミニウム系の1000系から7000系と比較的素材の性能が分かり易いのですが、カーボンは少し複雑で分かり辛いのです。ロードバイクなどに使用されているカーボンは正確にはCFRP(炭素繊維強化プラスチック)のことをいい、金属ではなく、あくまでもプラスチックに分類されるのです。文字通り「炭素繊維で強化されたプラスチック」という訳です。
 




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ロードバイク選びのポイント(2)

2024-03-25 09:41:05 | ロードバイクの科学
 大賞のCANYON Grail CFRに次いで全員から満遍なく票を得たcannondaleのSuperSix Evo LAB71がベストコンペティティブロード賞を受賞しています。昨年秋に最下級グレードとはいえ、第4世代のSupersix EVOを選んだ身としては嬉しい限りです。

 それにしても、マチュー・ファン・デル・プールの活躍もあり、ここのところCANYONのバイクを目にすることが多くなりました。グランツールでの総合優勝こそありませんが、ロードレースでもシクロクロスでもアルカンシエル(世界選手権ジャージ)を獲得しているのです。

 私の世代ではTREK(ランス・アームストロング)やSPECIALIZED(アルベルト。コンタドール)やPINALLERO(クリス・フルーム)等が憧れのブランドでしたが、今はCOLNAGOやCERVELOやCANYONのバイクがグランツールを席捲している感じです。ライダーが変わればバイクメーカーも大きく変わるというのがトッププロの世界なのでしょう。

 ただ、トッププロ選手が使用するバイクが私たちホビーライダーに適しているかというと必ずしも必ずしもそうではないことも少なくありません。例えば、今回コンペティティブロード賞を受賞したSuperSix Evo LAB71はcannondaleがこれまで上級モデルだったHi-Modのさらに上のグレードとして開発した最上級モデルで、価格は180万円と超高額です。
大賞にノミネートされているSPECIALIZED S-Works Tarmac SL8も1,793,000円、BIANCHI Specialissima RCにいたっては1,947,000円です(価格は全て税込み)。
 こうした価格に見合うパフォーマンスが私のようなホビーライダーに出せるかどうかは言うまでもないでしょう。F1マシーンは手に入れられなくても、トッププロが使用しているのと同じバイクを手に入れることが不可能ではないので、無理をしてでも乗ってみたいと思わせてしまう魔力も持ち合わせているのがロードバイクなのですが…

 
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ロードバイク選びのポイント(1)

2024-03-24 07:38:18 | ロードバイクの科学
 先日Bicycle Clubから『日本バイシクル・オブ・ザ・イヤー2024』が発表されました。『日本バイシクル・オブ・ザ・イヤー』は日本バイシクル・オブ・ザ・イヤー実行委員会主催で、その年の自転車No.1を決めるアワードです。実行委員会は、自転車ジャーナリストや自転車メディアの代表者などの選考委員で構成され、スポーツバイクユーザーがよりスポーツバイクを楽しむための話題づくりを目的として、毎年本アワードを開催しています。
 実行委員の人数や持ち点は年度によって異なりますが、今年はメディアに属さないフリーランスの自転車ジャーナリストによる企画・運営体制へと変更して開催され、選考対象車種は、バイシクル・オブ・ザ・イヤー2023の発表以降に国内で発売された自転車の中から、選考委員が選んだ全66モデル。選出選考委員各人が10台を選び、投票の多かったバイク5台が、この1年のスポーツ自転車を代表する5ベストとして選考されていました。
 事前に選定されていたBEST5は以下の通りでした。

 1)BIANCHI Specialissima RC
 2)CANNONDALE SuperSix Evo LAB71
 3)CANYON Grail CFR
 4)MERIDA Silex 8000
 5)SPECIALIZED S-Works Tarmac SL8
 この中から選考委員5名が各持ち点5点で採点し、大賞がCANYON Grail CFRと発表されました。ここまで6度の大賞受賞バイクはオンロードのレースバイクでしたが、今回選ばれたCANYON Grail CFRはグラベルロードバイクでした。これまでは主要なメディアのジャーナリストによって構成されていた選考委員から、メディアに属さないフリーランスの自転車ジャーナリストによる企画・運営体制へと変更されたことが影響したようです。

 近年注目を集めているグラベルロードとはいえ、バイシクル・オブ・ザ・イヤーに選ばれたのには少し驚きました。少しというのは、事前に発表されていた5台のバイクの中の2台がグラベルロードだったので、主要メディアの枠から外れ、愛好家という目線で選ぶとこういうこともあるのかもとは感じていたのです。
 今回の選考委員は浅野真則、安井行生、橋本謙司、吉本 司、難波賢二の5人で、特に吉本 司、難波賢二の2氏がグラベルロードの2台に大きな点を入れた(5点中4点)こともありましたが、票が割れたMERIDA Silex 8000と異なり、CANYON Grail CFRは全員の票を得ての受賞でした。

 個人的な予想はSuperSix Evo LAB71かS-Works Tarmac SL8だったので、私の予想は外れはしましたが、グラベルロードも所有し、その面白さも知る身としては、こういう選択もありなのかもと思っています。速さという面ではエアロ系ロードバイクにはかないませんが、オンロードに限らずオフロードも自由自在に走ることの出来るグラベルロードの楽しさはさらに広がって行くでしょう。この大賞がその一助になってくれればと願っています。
 
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