CYCLINGFAN!!

自転車をこよなく愛し、自分の脚と熱いハートで幾つになっても、可能な限り、どこまでも走り続けます~♪

王者の風格(4)

2024-06-03 09:24:10 | プロ・ツール
  ポガチャルを王者たらしめているのはその強さでけではない。彼の立ち居振る舞いも王者然としているのだ。とにかく笑顔を絶やさない。言動にもファンや相手選手に対するリスペクトがある。日本人なら大谷翔平を思い浮かべてほしい。自転車競技の人気が高い欧州では当然大谷よりポガチャル人気が高いはずだ。
 大谷翔平は全国の子供たちにグローブを送ったことに注目が集まったが、ポガチャルのプレゼントは受け取ったばかりの自分のボトルだった。今年のジロ第20ステージは1級山岳モンテ・グラッパを二度登る難関ステージだった。2度目のモンテ・グラッパを単独で登り切ったポガチャルは、長い下りの先のゴールを単独で目指す。ラスト21kmの登り返しでアスタナのジャンパーを着た少年がポガチャルに駆け寄った。ヨーロッパらしい愛らしいシーンだ。

 登坂の途中で身体に触れた大人にはこぶしを掲げて抗議したポガチャルだが、この少年には、丁度チームスタッフから受け取ったばかりのボトルをそっと手渡したのだ。このボトルは受け取った少年にとっては野球のグローブ以上の価値があるものになったはずだ。こうして、ロードレースは子供たちの夢となって行くのだろう。日本では大谷翔平に憧れてプロ野球選手を目指すように、ヨーロッパではポガチャルに憧れてロードレーサーを目指す子供たちが増えることだろう。こうしたファンサービスが自然と出来るところにも真の王者の風格が見え隠れするのだ。

 真の王者とは威風堂々と君臨するものではなく、民心を掌握し、民の為に善政を敷く王のことだ。真の王者はは決して独裁者であってはならない。民に愛されない王は真の王とは呼べないのだ。且つてランス・アームストロングという王者がいたが、玉座を追われただけでなく、その歴史まで剥奪されてしまうのだ。
 



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チームスカイを撃破

2014-06-15 01:42:44 | プロ・ツール

 クリテリウム・ド・ドフィネのクイーンステージでアルベルト・コンタドールがクリス・フルームに20秒差を付ける快走で総合トップに立った。Cdd2014_st7_03
 個人的には最後の超級の登りまで勝負が持ち越されればフルーム有利と見ていたが、アシスト5名にしっかり守られていたフルームを、コンタドールが個の力でねじ伏せたのだ。
 TV中継が始まった段階でコンタドールのアシストはパウリーニョひとりだけだった。プロトンが最初の超級に差し掛かったばかりだというのに、このチーム力の差はあまりにも大きかったようだ。ここでの動きは無く、SKYコントロールで逃げ集団とのタイム差は6分を越える状況だった。
 勝負は下りと見ていたのだが、案の定コンタドールやニーバリが仕掛けに出るが、SKYのアシストがしっかりマークに入り、この仕掛けは不発に終わる。結局、勝負はフィノー・エモッソンの登りに持ち越されることになってしまったのだ。
 SKYのアシスト達の牽きでプロトンが徐々に絞り込まれて行く中で、コンタドールはアシストを全て失い早々と丸裸の状況になってしまった。しかし、ゴールまで残り2kmという地点でコンタドールが動く。軽快なダンシングでフルームを引き離しにかかる。この段階でSKYのアシストは2枚になっていた。ニエベが離れリッチー・ポートとフルームという昨年のツール・ド・フランスの最強コンビがプロトンを牽引するが、コンタドールとの差は詰まらない。
Cdd2014_st7_01  早々とポートを見切りフルームがスパートするが、ゴール前でアンドリュー・タランスキーやライダー・ヘシェダールというガーミン・シャープ勢にもかわされ、コンタドールから20秒遅れでゴール。その表情は精魂尽き果てたものだった。
 初日の個人TTを征し、続く第2ステージでも頂上ゴールも征し、圧倒的な強さを見せ付けたフルームだが、やはり前日の落車の影響はどうしようもなかったようだ。
 今夜の最終ステージも登りゴールだが、チーム力に不安のあるコンタドールがここで無理をするとは考えずらい。フルームの調子次第だが、SKYはコンタドールに対し攻撃を仕掛けて来ることが予想される。おそらくコンタドールにとっては最も厳しいステージになるだろう。Cdd2014_st7_02
 フルームとのタイム差はわずかに8秒なので、フルームが総合優勝するチャンスはまだまだ十分にある。個の力でトップに立ったコンタドールだが、個の力だけで守り切れるタイム差ではないからだ。ただ、コンタドールにとってこの大会で総合優勝することが目的ではないので、表彰台を逃さないような走りをするはずである。
 フルームも同じなので、今日の調子のままだと無理をすることはないかもしれない。ただ、表彰台争いでタランスキーやケルデルマンが動くと、フルームとしても動かざるを得ないだろう。
 復調気配濃厚のコンタドールだが、客観的に見ると個の力ではフルーム有利は動かない。ただ、ツール・ド・フランスの3週間の闘いで一度でも今回のような落車があれば、コンタドールが逆転できることを証明して見せたことは大きいと見ている。これでコンタドールはフルームに対し心理的なプレッシャーを与えたことになった。
Cdd2014_profil8  スポーツで勝利するためにはこのプレッシャーが重要な要素になる。特に能力的に大きな差が無い状況ならなおさらだ。後はほぼツールメンバーで臨んでいるフルーム対し、ほぼパウリーニョひとりで戦っているコンタドールが、ツール・ド・フランスではロマン・クロイティゲルやマイケル・ロジャース、ニコラス・ロッシュ、ラファル・マイカといったアシストが加わることが予想される。
 昨日、ツール・ド・スイスのスタートリストを見て驚いたのだが、ティンコフ・サクソはジロ・デ・イタリア組のマイケル・ロジャース、ニコラス・ロッシュ、ラファル・マイカを全て外して来たのだ。結局、ツール・ド・スイスでもクロティゲルは個の力で戦わなければならなくなるかもしれない。
 ただ、これでティンコフ・サクソは確実にツール・ド・フランスに照準を定めて来たことが明らかになった。対するSKYはエナオモントーヤがツール・ド・スイスで復帰したものの、リッチー・ポートに昨年の勢いがない。今年のツール・ド・フランスはチーム力ではティンコフ・サクソが上回ることになるかもしれない。
 今夜は守りの走りのシュミレーションになると思われるコンタドールだが、グランツールで5度総合優勝に輝いている経験があるとはいえ、アシストを全て失って8秒のタイム差を守りきることは容易なことではないはずだ。ここで、秒差でも総合首位を守りきることができれば、ツール・ド・フランスに向けての準備は万全と見るべきだろう。

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フルームに隙あり

2014-06-14 17:25:32 | プロ・ツール

 クリテリウム・ド・ドフィネの第6ステージでフルームが落車に見舞われた。プロトンがフルームの復帰を待ったため総合優勝争いに変動はなかったが、今夜のクイーンステージを前にフルームにとって大きな痛手となってしまった。Cdd2014_st6_01
 ゴールまで10kmを切った下りで落車したフルーム。単に不運といってしまうにはあまりにも大きな痛手となりそうだ。というのも、前日もコンタドールの下りでのアタックに反応できていなかったからだ。リッチー・ポートの献身的な牽きで事なきを得たが、今年のフルームには下りで隙が見え隠れしているような気がしている。コンタドールのアタックもその辺りの確認の意味があったのではなかろうか。
Cdd2014_st5_01  この隙をコンタドールが見逃すはずはない。大会前は総合優勝は狙っていないような口ぶりだったが、12秒差でフルームの落車と来れば、今夜のクイーンステージでは必ず仕掛けて来るに違いない。仕掛けどころは、ひとつ目の超級の上りか下りではないかと見ている。
 勝敗を決するのは最後の超級フィノー・エモッソンと見る向きもあるようだが、勝敗がここまで持ち越されればフルーム有利となる。チーム力ではSKYが圧倒しているからだ。従って、最初の超級でティンコフ・サクソとしては全ての力を結集して攻めに出る必要がある。ここでSKYのアシストを酷使して、下りでコンタドールがアタックする。フィノー・エモッソンはコンタドールの自力で粘り込むという作戦だ。Cdd2014_profil7
 いよいよ今年のマイヨジョーヌの行方を占うステージが始まる。フルームが真の王者に君臨するのか、はたまた、コンタドールが王者への復権を果すことになるのか。個人的には隙を見せたフルームが不利と見ているのだが・・・

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コンタドールの思惑

2014-06-10 18:17:51 | プロ・ツール

 ドフィネ第2ステージは予想通りマッチレースとなった。そして勝者はまたしてもクリス・フルームだった。ナンバーワンを誇示するかのように人差し指を天に向けて突き上げる。自ら仕掛けて勝ち取った山頂ゴールでフルーム強しの印象を与えたことは確かだろう。Cdd2014_profil2
 ただ、2着のコンタドールとのタイム差はゼロ。終始フルームのアタックに対応することが出来たのは唯一コンタドールだけだった。昨年のドフィネではフルームに対し個人TTで2分半、超級山岳2つで11秒の遅れをとっていたことを考えると、コンタドールの復活は間違いないだろう。
Cdd2014_st2_02  一度も自ら仕掛けることなくフルームの後塵を拝することになったコンタドール。そこに何かしらの思惑を感じてしまうのは私だけではないだろう。確かに苦しげな表情を見せてはいたが、それが果たして本当に苦しかったのか戦術なのかが第三者には分らないからだ。
 あんな走りを見せられるとフルームでなくとも「彼にはこれ以上の脚が無いと思いたいけれど・・・」という気にさせられてしまうものだ。フルームは確かに強いと私も思う。ただ、昨年の勢いはまだ感じられないとも感じている。加えてリッチー・ポートの不調はフルームにとって不安材料であることは間違いない。
 コンタドールはこのステージでは明らかにフルームの調子を観察していた。それも真後ろで。そして、ゴール前勝負ではフルームは勝てないことも分ったはずだ。フルームを負かすには早目の仕掛けが不可欠だということも。Cdd2014_st2_01
 対するフルームは、ライバル達の仕掛けでペースを乱されるよりは、自ら仕掛けてやろうという戦い方をしている。この大会はともかく、登坂力が互角のライバルに対し、3週間という長丁場では、この戦い方では多分持たないだろう。
 3週間という長丁場のツール・ド・フランスでは個人の力だけでは勝てないのだ。第2ステージでも早々に丸裸になってしまったコンタドールだが、ツール本番では強力なアシスト陣が彼の周りを囲んでいるに違いない。序盤に個人TTが無く、大きなタイム差が付かない状況なら、フルーム自ら動かざるを得ないシーンも多くなるはずである。
 個人的にはコンタドールのツール・ド・フランス3度目の総合優勝がかなり現実味を帯びて来たような気がしている。そして、第7ステージでコンタドールがフルームに対しどのような走りをしてくるかが今から楽しみで仕方が無い。

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10.4kmで8秒差の意味するものは?

2014-06-09 04:23:13 | プロ・ツール

 クリテリウム・ド・ドフィネの第1ステージがリヨンで行われた。10.4kmの個人TTである。昨年は第4ステージで32.5kmの距離で行われ、フルームは勝ったトニー・マルティンから53秒遅れでステージ3位。一方のコンタドールは3分29秒遅れの61位と大きく出遅れる結果になってしまった。
 だが、今年のコンタドールはやはり違っていた。コースプロフィールを見る限りではほぼフラットな印象だったが、実際の映像で見ると、中盤の下りはかなりリスキーで、さほど大きなタイム差はつかないことは十分に予想された。
 昨年のツール・ド・フランス第11ステージでは33kmの距離でフルームに2分以上の差を付けられていたコンタドール。フルームの平均速度が54.27km/hだったのに対し、コンタドールは51.16km/h。平均速度にして3kmもの差があったのである。昨年のドフィネは最悪の状態で、32.5kmでフルーム付けられたタイム差は何と2分37秒、速度差は3.5km/hであった。
 今年は去年の3分の1の距離なので、ここで大きなタイム差がつくことはないと見ていたがが、コンタドールがツール・ド・フランス本番でフルームを破るためには、このTTでのタイム差はできるだけ小さくしたかったはず。もし、このステージでコンタドールがフルームから30秒以上遅れるようだと、本番での逆転は難しいと考えざるを得なかったのである。
Cdd2014_st1_02  しかし、結果は『10.4kmで8秒差』であった。二人の速度差は時速1km以下に縮まった。勿論、かなりトリッキーなコースで平均速度が上がらなかったこともあるのだが、この結果はコンタドールにとって大きなモチベーションになるに違いない。
 身長186cm体重71kgのフルームに対し、身長176cm体重61kgのコンタドール。TTでのパワーウエイトレシオを考えるとコンタドールの不利は否めない。この体型で山も早く登れてしまうフルームがある意味特殊な存在かもしれないのだ。今のままの調子でも、平坦路で距離があればTTでの二人のタイム差は1分近くに開くことは十分に予測できる。
 今年のツール・ド・フランスは個人TTが1ステージしかないが、距離は54kmと長いので、下手をすると3分近い差がついてしまうことも十分にありうるのだ。今年のコンタドールは登坂力は復活傾向にあるので、ピレネーの山岳ステージ終了時にはマイヨジョーヌを獲得している可能性が高い。ただ、ここまでのフルームとのタイム差が3分以下では、マイヨジョーヌ争いは第20ステージの個人TTまで縺れる可能性があるのである。従って、この個人TTの結果に大いに注目していたのである。Cdd2014_st1_01
 ダンシングでグイグイ踏み込んで行くコンタドールに対しフルームは終始シッティングでのパワーペダリング。中間点でのタイムはニーバリがトップでフルームが2番手だったが、結局、ニーバリは終盤に失速し13秒差の8位に終わった。コンタドールにとっては大きく曲がりくねった道が多く、平均速度が上がらなかったことも幸いしたのだが、TTではフルームに勝てないことは明らかとなった。
Cdd2014_st1_03  従って、復調したコンタドールに対しフルームの登坂力がどこまで通用するかがこれからの見所となる。但し、ドフィネに関しては多分コンタドールはフルームには勝てない(勝たないだろう)と見ている。
 というのは、ティンコフ・サクソのメンバーがあまりに手薄だからである。クロイティゲルもマイケル・ロジャースもニコラス・ロッシュもラファル・マイカもサブ・エースクラスの選手が一人もいないからである。対するSKYにはリッチー・ポートとキリエンカがいるのである。
 ティンコフ・サクソとしてはジロ・デ・イタリアメンバーをツール・ド・スイスに回さざるを得なかったというチーム事情があるのだ。一方、SKYはポートがジロ・デ・イタリアを回避したことがここでは幸いするかもしれない。
 このメンバーを見た時、コンタドールはここで無理をするはずないと感じたものだ。目標はあくまで次なのだから。ティンコフ・サクソとしては、多分、クロイティゲルでツール・ド・スイスを勝ちに行くのだろう。ツール・ド・フランスで心置きなくコンタドールをサポートさせるために。
 クロイティゲルにロッシュ、それに今年のジロでステージ2勝を挙げたマイケル・ロジャース、それにマイカも加わればコンタドールにとって本番は万全のアシスト態勢が整えられることになる。Cdd2014_profil2
 さて、今夜はタラール~ペイ・ド・オリエルグからコル・デュ・ベアルの山頂までの156kmのステージとなる。2日目にして早くも山頂ゴールが待っている。今年のコンタドールの傾向としては序盤はライバル達の様子を観察し、隙ありと見れば早目の仕掛けで撃破するパターンが多いように感じている。おそらく、今夜のステージではフルームやポートの調子を見極める手にでると思われるので、大きなタイム差はつかないだろう。
 今年のドフィネの総合優勝の行方は超級山岳を越えて超級山岳でゴールする第7ステージで決まりそうだ。アシストメンバーの薄いティンコフ・サクソとしては、コンタドールが早目に総合首位になるのはあまり望ましとはいえない。 そもそも、総合優勝を狙っているかどうかさえ怪しい状況だと感じているのだが・・・できれば第6ステージまではSKYにリーダーでいてもらって、大いに仕事してもらうというのが理想だろう。そうすれば、フルームのアシスト達の調子が図れるからだ。
 コンタドールもチームもドフィネを勝つことより、フルームとSKYのチーム状況を見極めることに主眼を置いているような気がしてならない。コンタドールの調子は昨日のTTでおおよそ判断できるだろう。登坂力に関してはティレノ~アドレアティコやバスク1周で問題ないことを確認済みのはず。怖いのがケガだけといった状況ではないか。むしろ、ここを勝ってツール・ド・フランスの優勝候補筆頭に躍り出てしまうのは、コンタドールにとって決してプラスには働かないと考えている節があるのである。Vcc2014_7st_01
 今年のコンタドールはカタルーニャ一周でホアキン・ロドリゲスの4秒差の2位という結果がある。ずっとこの4秒差の意味を考えて来たのだが、無理に勝つことをしなかったと考えれば、妙に納得ができるのである。コンタドールがここもできれば秒差の2位表彰台と考えていても不思議ではない。とてももどかしい気がするが、逆転しようと思えば可能なタイム差のまま2位か3位で前哨戦を無事に終えることが出来れば、ツール・ド・フランスの優勝候補筆頭はフルームのままだろう。今、ツール・ド・フランスを勝つことの難しさと怖さを一番良く知っているのがコンタドールだろう。
 これまで優勝候補筆頭で臨みながら、ドーピングスキャンダルやランス・アームストロングとの確執など、メディアに叩かれまくってきた経験から導き出された結論かもしれない。チームもそれが良く分っていて、アシスト選手のローテーションを決めて来た感じがするのである。
 対するフルームは決して絶好調とはいえないものの、徐々に調子を取り戻しつつある。ただ、昨年の総合優勝の立役者リッチー・ポートの調子が戻っていない。コンタドールが勝つ気になれば勝てる状況ではあるのだが、勝つための駒が少な過ぎるのである。これもチーム戦略と考えれば、流石ビャルヌ・リースと云いたくなってしまうのだが・・・

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