彼らアシストを纏めモチベーションを高めるのもエースの役割なのですが、それが出来す、ただ守られるエースというのも存在するのです。ユンボ・ヴィスマのように綿密に戦術を練り、チーム全員に浸透させるといったチームは少数派に入ります。UAEなどは基本的な戦略はあっても、最終的な判断はポガチャルに任されているのです。それでも、チーム内のポガチャルへの信頼感は抜群で、ポガチャルがいるレースとそうでないレースではアシストの動きが変わって見えるほどなのです。

アユソは非常に能力が高い選手ですが、エースとしての存在感は薄く見えてしまうのは私だけでしょうか?今年のジロ・デ・イタリア第1ステージでも早々に落車していますし、同じ年齢だったポガチャルとは大きく違うのです。大エースポガチャルの陰で大切に育てられてきたということもあるのですが、未だにどこかアユソがだめならアダム・イエーツでといった雰囲気を感じてしまうのです。このステージではジェイ・ヴァインも落車で遅れています。

それに対しログリッジはまさにチームの支柱といったエース感たっぷりでした。チーム力という面ではUAEの方が圧倒的に上のはずなのですが、どうにもそういう感じがしないのです。第2ステージの個人TTでもログリッジから16秒以上遅れて10位という結果だったのです。後半に重要な山岳ステージが詰まっているので、チーム戦略として若いアユソに無理をさせないというのも理解できますし、6ステージを終えてTOP10に3人が入っているので、表面的には問題はないように見えますが、果たしてアユソに落車の影響は無いのかどうか?TVで観ている限りアユソよりデルトロの方がエースらしく見えてしまっているのです。

まあ。クイックステップのように初日からエースを落車で失うことはありませんでしたが、UAEチームのバラバラ感が少し気になりました。チームの纏まりという点ではレッドブルの方が圧倒的に上のように見えます。ポガチャルがいる状況に慣れてしまっているのか、ポガチャル不在のUAEには常に一抹の不安を感じてしまうのです。それでもここまで30勝以上を挙げているので、それでも勝てるチームなのかもしれませんが、ポガチャル不在のチームには他チームが付け入る隙があるのもまた事実なのです。

本来ならセカンドエースのアダム・イエーツがチームを纏めなければいけないと思うのですが、ここのところのアダムの存在感が薄いのも気がかりです。今回のジロにはラファウ・マイカがいるので、彼がチームを纏める存在になっているようです。マイカにはアルベルト・コンタドールやポガチャルといったスパーエースをアシストして来た経験があるのですから。

ユンボ・ヴィスマの時代にはログリッジとファンアールトという最強の選手が二人もいて、ステージレースはログリッジが、クラシックレースはファンアールトが勝つというチームだったのです。2023年にはセップ・クスがブエルタを勝ち、ヴィンゲゴーがツールを、ジロはログリッジが征し、3大グランツールの完全制覇を成し遂げている世界最強のチームでした。

タディ・ポガチャルという怪物を擁するUAEチーム・エミュレーツがある中での結果ですから、この年のユンボ・ヴィスマはグランツールでは最強のチーム力だったのは間違いないでしょう。クラシックレースではポガチャルの勝利も多くあり、ポイントランクではUAEが1位になっていますが、グランツールでのユンボ・ヴィスマの強さは別格でした。

これはログリッジというベテランの支柱がしっかりしていたことが大きかったと思っています。2024年にログリッジがボーラ・ハンスグローエへ移籍してから、チームが低迷しているのがその証左です。逆にレッドブルはログリッジという支柱を得て、若手も奮起しています。昨年はツールを落車でリタイヤしたものの、ブエルタでは7分近い差を大逆転し、4度目の総合優勝を飾っているのです。正に「エースの鏡」ともいえる存在なのです。