ドゥフィネのTTでの走りから、今年のヴィンゲゴーは一味違うのではと思っていたのですが、ポガチャルとの登坂力の差は如何ともし難かったようです。わずか7.5㎞の登りで1分というタイム差は決定的なものでした。

この結果を目にすると第4ステージのTTの結果は一体何だったのだろうと感じてしまいます。レース後のインタビューでTTに関しては今後のチームの課題だと答えていたので、やはりTTバイクの重量が問題になりそうです。この日はこれまで使用していたY1RsではなくV5Rsを使用していましたから、登りでは軽量バイクを使う方が良いとポガチャルは考えているようです。S5を使用していたヴィンゲゴーは今後バイクをどうするのが気になります。

落車の影響もあったのかもしれませんが、エヴェネプールには精彩がありませんでした。レッドブルのリポヴィッツにも交わされマイヨジョーヌは勿論、新人賞ジャージも失う結果になってしまいました。TTでは圧倒的な強さを見せるエヴェネプールですが、登坂力ではやはりかなり劣るようです。パワーより美しいエアロフォームで高速域では圧倒的に速いのですが、スピードが落ちる登りではパワーの差が出てしまうようです。

今夜のステージは超級山岳が3つ登場し、獲得標高も5000mに迫る超難関ステージです。嘗て高度の高い山岳に弱さを見せていたポガチャルですが、今はそれも克服し、昨年はヴィンゲゴーを退け3度目のマイヨジョーヌを獲得しているのです。ヴィンゲゴーにとって唯一の救いはチーム力の高さでしょう。この日のステージでは仕掛け処を間違ったのは明白でした。1級山岳で攻撃し、UAEのアシストをウェレンス1枚にまで削ったものの、その後の下りでナルバエスとシバコフまで追いついてしまい、最後の2級でナルバエスの牽きから、ウェレンスに変わった直後のポガチャル発射という流れになってしまっていたからです。

個人的にはヴィスマは守りに徹すると見ていたのですが、攻撃が裏目に出てしまったようでした。ただ、UAEもアシストの調子がイマイチのようなので、3つの超級山岳でUAEのアシストを徐々に削って行けば、ヴィンゲゴーの再逆転も不可能ではないかもしれません。また、逃げにアシストを乗せて前待ちするという作戦もあるでしょう。

ヴィスマの作戦能力の高さは今年のジロでも証明されています。ただ、それがポガチャル相手に通用するかは分かりません。今のポガチャルはひとりだけ異次元にいる感じがしているからです。今のポガチャルに常識は通用しないかもしれません。今夜のステージでも圧勝するようならツールとブエルタのWツールが見えて来ると見ています。