CYCLINGFAN!!

自転車をこよなく愛し、自分の脚と熱いハートで幾つになっても、可能な限り、どこまでも走り続けます~♪

ポガチャルの強さの秘密(1)

2024-07-22 11:45:46 | ツール・ド・フランス
 今年のツール・ド・フランスの最終日はオリンピックの関係でパリ・シャンゼリゼのパレードランではなく、モナコからニースまでの33.7km個人タイムトライアルで幕を閉じることになりました。あのグレッグ・レモンが総合大逆転をして以来のことだそうです。

 そして、その主役も個人TTの世界チャンピオンのエヴェネプールでも、ツールを連覇中のヴィンゲゴーでもなく、今年のジロ・デ・イタリアの勝者タディ・ポガチャルでした。これで、今年のツールは6勝目となり、マリア・ローザに続きマイヨジョーヌも手にすることに成功したのです。

 昨年は個人TTでヴィンゲゴーに1分38秒という圧倒的な差を付けられたポガチャルでしたが、あれ以来TTに特化したトレーニングもしてきたのか、ジロのTTでも現アワーレコードホルダーのフィリッポ・ガンナと1勝1敗。最初のTTではエヴェネプールに敗れたものの、流石にグランツールの最終日のTTは、ここまで脚を残せていたポガチャルが圧倒的な走りで勝利しました。

 ヴィンゲゴーが万全の状態なら接戦になっていたかもしれませんが、ポガチャルの準備がライバル達を上回っていたことも事実でしょう。高所に弱い、暑さに弱いと言われ続けたポガチャルですが、彼の中でこれまでの敗因を分析し、ひとつひとつ課題をつぶして来たように感じています。
 それを裏付けるのがENVEのレポートでしょう。今年、ジロの後の高地トレーニングにホイールとハンドルを提供しているENVEが帯同し、データを取っていたのです。その高地トレーニングにポガチャルが選んだのはアルプスのイゾラ2000でした。おそらく、クイーンステージの舞台となるシム・ド・ラ・ボネットの試走もしていたはずです。

 この時、ENVEが予測していたのがプラトー・ド・ベイユの所要時間が 43~44 分というものでした。これは推定VAMが1,750~1,850 Vm/hというものです。VAM とは 1 時間あたりに登る垂直メートル数の推定値だそうです。VAM は垂直方向の速度と考えることができますが、登りの長さと勾配に大きく影響されます。たとえば、急勾配の短い登りでは、高い VAM となりやすい傾向があり、一般的に1,500 Vm/h を超えるとどのような地形でも高い数値とされています。ほとんどのアマチュア ライダーは 300 ~ 600 Vm/h 程度になり、ワールドクラスのライダーのVAMは 1,800 Vm/h を超え、特に長い登りや暑い中、高地など過酷な場所での登りではVAMの差が大きくなるそうです。
 ちなみにポガチャルの2022年ツール・ド・フランス中のガリビエ峠のVAM:は1,492 Vm/hと決して高いものではありませんでした。それが今年のガリビエは推定VAMが 1,700~1,800 Vm/hで、ガリビエの登坂と下りでエヴェネプールに45秒、ヴィンゲゴーには50秒というタイム差を付けマイヨジョーヌに袖を通すことになったのです。
 驚くべきはプラトー・ド・ベイユの登坂で、ENVEの推定タイムを大幅に更新し38分代の歴代新記録を叩きだしているのです。VAMはおそらく2000Vm/hを越えていたはずです。これはポガチャルが2022年には確かに高所に弱さがあったのに、今年はそれが完全に克服されている証左でしょう。
 



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