CYCLINGFAN!!

自転車をこよなく愛し、自分の脚と熱いハートで幾つになっても、可能な限り、どこまでも走り続けます~♪

マイヨ・ロホの行方(5)

2024-09-01 14:41:39 | ブエルタ・ア・エスパーニャ
 ブエルタも中盤を過ぎ、ベン・オコーナーがマイヨ・ロホを着ていますが、このまま守り切るのは難しい状況になって来ました。第13ステージで大きく遅れ、ログリッジに2分もの差を詰められる結果になっているからです。

 このステージでもAG2Rはレースコントロールが出来ず大きな逃げを許しています。結果、マイケル・ウッズがステージ優勝し、プロトンは10分以上遅れてのゴールでした。ログリッジは16位、大きく遅れたオコーナーは33位でウッズから12分49秒もの大差がついてしまいました。AG2Rで本来アシストとして働く必要があったフェリックス・ガルがオコーナーより前でゴールするというちぐはぐ差を見せてしまっているのです。
 4分42秒差の7位で総合が争える位置にいるので、オコーナーではなくガルで総合を狙っているような動きですが、2兎を追うものは1兎も得ずという諺もあります。続く第14ステージではAG2Rではなくヴィスマがプロトンをコントロールし、逃げとのタイム差は2分以下をキープ。ここまでステージ3勝を挙げているワウトのためにここまでするのかという牽引を見せていました。
 ここまでポイント賞に加え山岳賞ジャージも手にしているワウト。早々にエースのクスが遅れてしまい、クスのブエルタ連覇が遠のいたヴィスマは早々にワウトのポイント賞にシフト。ポイント賞を狙っているうちに山岳賞まで手に入れてしまいましたが、山岳賞のトップ3はUAEのマルク・ソレルとジェイ・ヴァインという顔ぶれで、これは今日のステージで大きくシャッフルされるはずです。

 総合争いはログリッジが少し優利のように思っています。ただ、ログリッジもツールでの落車があり、どこまで走り切れるのにかかっているのではないでしょうか?最後まで走り切れればログリッジ可能性が大ですが、山岳が得意なエンリク・マスやリチャル・カラパス、ミケル・ランダが2分ほどの差なので、今日のステージ次第で総合順位も大きくシャッフルされる可能性もあります。
 UAEはアダム・イエーツがログリッジから4分近い差があるので、ログリッジにバッドデイでもない限り逆転は無理でしょう。ただ、マルク・ソレルとジェイ・ヴァインが山岳賞狙って動きを見せると、アダムと3人で最後の登りに入るとログリッジは苦戦を強いられるかもしれません。
 むしろ、ノーマークになりそうなカラパスがツールの山岳賞の意地を見せてくれぞうです。アシスト勢も第14ステージではほとんど仕事をせずに済みましたので、今日のステージは狙ってくるはずです。

 第79回ブエルタの2週目を締めくくるのは、クイーンステージと目される今日の143kmの山岳ステージです。3級山岳を間に挟む1級山岳コリャディエリャ(距離6.4km/平均8.2%)を2度登り、最後は超級山岳バルグランデ・パハレスに挑む最難関のステージなのです。
 登坂距離18.9km/平均勾配7.4%のバルグランデ・パハレスは、ラスト3kmに最大勾配24%が登場。そこからフィニッシュまでは平均12〜13%の過酷な登りが続いていくので、ここで最終的なマイヨロホ獲得者が明確になると予想されます。
 
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ヴィスマ・リースアバイク低迷の理由(2)

2024-09-01 11:24:02 | プロ・ツール
 それが露わになったのが昨年のブエルタでした。最大のライバルのエヴェネプール対策として、エースの二人を囮にしてクスを逃がすという作戦で、エヴェネプール攻略は成功したのですが、結果、クスがマイヨ・ロホを手にしてしまったのです。個人TTで大きくタイムを失うとみられていたクスが意外な健闘を見せ、マイヨ・ロホを守ってしまったのがチームを悩ませる結果になってしまいました。

 総合1位がクス、2位がヴィンゲゴー、3位にログリッジとなり、チームは3人の戦いを一度は認め、ヴィンゲゴーとログリッジがクスに挑みかかったのです。ここまで3大ツールで献身的なアシストを務めて来たクスに対する同情論をメディアが取り上げ、最終的にクスがマイヨ・ロホを手にすることをチームが決断せざるを得なくなってしまうのです。

 これに不満を示したのがログリッジでした。勝負の世界なのだから、力がある者が勝つべきだという意見は尤もです。一方、サイクルロードレースでは“サクリファイス”「犠牲」が求められるのもまた事実なのです。1人を勝たせるために7人が犠牲になるのがサイクルロードレースなのです。アシストと呼ばれる選手たちはエースを勝たせることで給料を得ているのですから。
 ただ、時にレース中にエース交代が起こることがあります。エースの落車などの怪我や体調不良でセカンドエースがエースを担うことで、後にその選手がエースになって行くことは少なくないのです。ヴィスマのヴィンゲゴーはその代表格でした。アルベルト・コンタドールもそうです。ただ、セップ・クスは根っからのアシストで。誰かをアシストする事が生きがいのような選手なのです。この年も3大グランツール全てに参戦し、ジロではログリッジをツールではヴィンゲゴーを最高の形でアシストして来たのです。
 このブエルタで最も戸惑っていたのがクスでした。勝ちに拘りたいログリッジと冷静に達観しているヴィンゲゴーの間に挟まれ、苦しい時を過ごしていたのでしょう。結果はチームが決めたのですが、ログリッジがチームを去ったことに責任を感じていても不思議はないのです。

 ヴィスマは家族のようなチームで本当に結束が固く、綿密な戦略を練ることで知られています。ログリッジはそのチームで8年を過ごし、ヴィンゲゴーやクスもその姿を見て育ってきたことは間違いありません。貪欲なまでに勝ちに拘る選手で落車も多かったのですが、ブエルタを3連覇、そして2023年のジロとグランツールで4度の総合優勝を飾っている選手なのです。そんなチームの柱が抜けたせいなのか、今季のヴィスマは精彩を欠いている印象があります。落車などの不運もあったのでしょうが、ツールではヴィンゲゴーがポガチャルに完敗。オリンピックではエヴェネプールに金メダルを2個も与えてしまっているのですから。
 



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ロードバイクの空気抵抗を考える(8)

2024-08-31 16:20:26 | ロードバイクの科学
 未だ結論には至ってはいないのですが、ここまでの走りではエアロフレームとエアロハンドル効果が一番大きいような気がしています。特に内向きのブラケットポジションで前三角の面積を小さくするエアロフォームの効果が一番大きいように感じています。

 体腔が600mmの人がハンドル幅400mmのバイクに乗った場合、前三角の表面積は12000㎟ですが、ハンドル幅が380mmなら11400㎟で表面積が600㎟減少することになります。この表面積の減少は身長が高く体腔が高く成れば成るほど大きな数値になります。どの程度空気抵抗の減少になるのか正確な数値は分かりませんが、確実に空気抵抗を減らす効果が期待できるはずなのです。
 典型的なのがレムコ・エヴェネプールでしょう。身長が171cmと小柄な選手ですが、昨年の個人TTの世界選手権を征し、今年はパリオリンピックでもTTとロードレースの2つの金メダルを獲得しているのです。

 ロードレースで小柄な選手は登りで有利とされて来ましたが、どうやらタイムトライアルでも有利なのかもしれないのです。トラック競技では強いとされる大柄な選手でも屋外のタイムトライアルでは小柄なエヴェネプールには敵わなかったのですから。
 これは屋内のトラックと違い屋外のロードでは細かなアップダウンと風の影響があることが大きく影響しているのだと思います。向かい風は明らかに空気抵抗を増しますし、登りでは小柄で軽量な選手の方がパワーが少なくてすむので有利なのです。ただ、エヴェネプールの場合、登りではポガチャルやヴィンゲゴーには敵わないのですが、今年のツールのように平坦基調のTTだと彼らにも先着してしまうのです。

 小柄なエヴェネプールの場合、まず体腔が低く肩幅も狭いので大柄な選手に比べ、前衛投影面積が小さいことは間違いありません。TTバイクは空気抵抗を削減するための究極のバイクなのですが、大柄な選手はバイクのサイズも大きくなりますし、体腔が高く肩幅も広くなりますから、身体の空気抵抗も小柄な選手より大きくなることは間違いありません。
 DHバーなどでポジションは前傾が深く、ノーマルバイクより前衛投影面積が小さくなるので空気抵抗は少なくなりますが、選手の体形はどうしようもないのです。つまり、大柄な選手はより大きなパワーが求められることになります。短時間のトラック競技やゴール前スプリントでは大柄でパワーのある選手が有利とされて来ましたが、近年では小柄なスプリンターも増えているのが実情なのです。これは前衛投影面積の少なさが空気抵抗を軽減し、ロードレースでは有利に働いていることの証ではないでしょうか?
 
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ヴィスマ・リースアバイク低迷の理由(1)

2024-08-31 12:47:11 | プロ・ツール
 2023年はユンボ・ヴィスマにとって栄光の年でした。ジロ・デ・イタリアをプリモシュ・ログリッジが、ツール・ド・フランスをヨナス・ヴィンゲゴーが、ブエルタ・ア・エスパーニャをセップ・クスが総合優勝し、同一年の3大ツールを別々の選手が征するという金字塔を打ち立てたのですから。「All-in: The Trilogy」というドキュメンタリーがJ-Sportsで放送されていましたが、この年のユンボ・ヴィスマは初めから3大ツール制覇という目標を掲げていたのです。

 ジロでは最後のTTでログリッジがゲラント・トーマスを大逆転、ツールではポガチャルのバッドデイに助けられた感はありますが、ヴィンゲゴーのTTでの圧巻の走りで連覇というおまけ付き。加えてブエルタでは表彰台を独占するという強さでした。ツールの勝利に強い拘りを持つログリッジをジロに回し、ツールはヴィンゲゴーの連覇、ブエルタはログリッジとヴィンゲゴーのWエースで臨むという計画だったようです。
 そして、この偉大な金字塔を打ち立てた代償として、ログリッジが移籍を決めてしまいます。そして、ログリッジを失ったヴィスマは春先からワウトやヴィンゲゴーが相次いで落車骨折、結果連覇中のツールでもヴィンゲゴーがポガチャルに大敗してしまうのです。最高のアシストのセップ・クスを開幕前にコロナ感染で欠いたことは大きく影響したと思っています。ボーラ・ハンスグローエへ移籍しマイヨジョーヌを狙いに行ったログリッジも開幕前はビッグ4と言われながら、2度の落車でリタイヤでした。
 ポガチャルという絶対的なエースがいて、資金力も豊富なUAEエミュレーツは3大ツールの総合優勝を全てヴィスマに奪われてもUCIのワールドランキングで昨年もTOPでした。決して資金力が豊富とはいえないヴィスマの強さはチームの結束力です。且つてはラボバンクというビッグスポンサーが付き、オスカル・フレイレ、ミカエル・ラスムッセン、トーマス・デッケルといったツールでも活躍する選手もいたのですが、2012年にドーピング問題でラボバンクが撤退してしまった低迷期に加入してきたのがログリッジだったのです。

 エースのログリッジとヴィンゲゴーという2枚看板に最高のアシストであるセップ・クスがいてこその最強チームだったことが、今年、証明されてしまったような感じがしています。この3人は3者3様で違った個性を持っている選手です。この強烈な個性がヴィスマというチームで上手く融合すれば最強になる一方で危うさも秘めていたのです。
 
 



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マイヨ・ロホの行方(4)

2024-08-30 15:57:22 | ブエルタ・ア・エスパーニャ
 早々にセップ・クスが遅れアルメイダがコロナで離脱となったブエルタ・ア・エスパーニャはログリッジ1強になると思っていたら、ベン・オコーナーが予想外に健闘しています。第12ステージを終えた時点で3分以上のリードを保っているのです。

 流石にツール・ド・フランスではポガチャル、ヴィンゲゴー、エヴェネプールという強力なライバルには全く歯が立ちませんでしたが、ブエルタは3年連続総合優勝しているログリッジ。昨年は初出場のジロ・デ・イタリアを大逆転で総合優勝をしている選手なのですから。

 ログリッジがチームを離れたことでエースの役割を担うことになったセップ・クスはやはりアシスト向きの性格で、プレッシャーからか早々に遅れてしまいました、そんなヴィスマではワウト・ファンアールトがひとり気を吐いているのですが、アシストという枷外れたワウトは強い。昨年はファンデルプールの後塵を拝していましたが、今季は落車の影響で前半を棒に振る結果になりましたが、オリンピックの個人TTで銅メダル、ブエルタでは既にステージ3勝を挙げているのです。

 今回はオコーナーがマイヨ・ロホを着ている関係でAG2Rがプロトンをコントールしなければいけないのですが、そもそもグランツールで総合優勝争いをした経験がないチームなので、集団コントロールが出来ず、終盤ではレッドブルが牽くシーンが多くなっていて、ここのところ大逃げが立て続けに決まっています。
 今日からも山岳ステージが続きますが、そろそろレッドブルが集団コントロールを始めないとログリッジの総合優勝はどんどん遠のいてしまうでしょう。山岳賞を狙うアダム・イエーツやヤングライダー賞を狙うカルロス・ロドリゲス、総合4位に付けるカラパスも山岳なら積極的に動いてくるはずです。

 注目は日曜日の第15ステージでしょう。最後に待ち受ける超級山岳バルグランデ・パハレスは登坂距離18.9kmと長く、平均勾配も7.4%、フィニッシュまでは平均12〜13%の過酷な登りなので、ここで総合順位が大きく動くことが予想されます。
 



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