CYCLINGFAN!!

自転車をこよなく愛し、自分の脚と熱いハートで幾つになっても、可能な限り、どこまでも走り続けます~♪

エアロポジションを考える(2)

2024-06-12 11:43:31 | ロードバイクの科学
 今でもTTバイクのDHバーのようなエアロに特化したハンドルバーがあります。これはこの理論に則った設計になっているのですが、あくまでも短時間のTTやトライアスロンのバイクにのみ使用せざるを得ないというのが実情です。つまり、ロードバイクのように何時間も乗り続けることが求められるケースには使われて来ませんでした。

 そこで、ロードレースの選手たちが考え始めたのが、ハンドル幅を狭くすることと、ブラケットを内側に傾けることでした。こうすることで腕の位置がDHポジションに近づくからです。ブラケット位置が通常の場合でも、ブラケットを横から握るのではなく、ブラケットの突起部に掌を被せるように置き、手首をブラケットに沿って置く。この時、脇が空かないように注意すれば、自然とエアロポジションに近付けることが可能になるのです。

 ロードレース界ではUCIがハンドル幅やブラケット位置の規制が入り、今ではフレアハンドルという、ドロップ部分が外に「ハ」の字に開いたものが普及しつつあります。フレアハンドルはフレアの角度にもよりますが、ENVEなどはドロップハンドルの外側とブラケット部の差が50mmもある製品を発売しています。

 ハンドル幅は狭い方がより空気抵抗を少なくするポジションが取れるのが利点ですが、バイクコントロールが難しくなるという欠点も併存します。そこで、フレアハンドルの出番になる訳です。元々、フレアハンドルはグラベルロードやシクロクロスバイク用に開発されたものです。荒れた路面で下ハンを持ってもバイクコントロールがし易いのが特徴です。一方で下ハンを持つと脇が空き、空気抵抗が増してしまうので、ロードバイクでは敬遠されて来たのですが、ハンドル幅とブラケット位置が規制されたことで、エアロ形状のフレアハンドルが見直されることになっているのです。

 こうした傾向はメーカーも把握していて、シマノの新しいSTIレバーはブラケットが10%内向きに設計されています。旧モデルでも10%程度なら内に傾けても問題がないそうなので、一度ショップに相談してみるといいでしょう。

 私は第3世代のSupersix EVOにはSAVEステムとSAVEハンドルバーを使用していて、コンポも機械式105なので、ハンドル幅は400mmでブラケット位置も真直ぐですが、実際にブラケットの突起部を掌で包み込むように握り、手首をブラケットに沿うように置くことでもギア1枚分くらいのエアロ効果が実感出来ました。

 一方で、私のグラベルロードのTopstoneはフレアハンドルにGRXの組み合わせですが、同じことをしてもあまりエアロ効果は感じられないのです。そもそもハンドルがアップライトでスピードもあまり出ないギア構成なので、そもそもエアロ効果を感じ取り憎いこともあるのですが…一度、ハンドル位置をフラットにしてもう一度試してみようと思っています。
 



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エアロポジションを考える(1)

2024-06-11 14:27:59 | ロードバイクの科学
 自転車に乗る時の最大の敵は空気抵抗です。時速30kmの速度域においては全体の抵抗の約80%は空気抵抗だと言われています。近年ロードバイクのエアロ化が進んでいますが、高価なディープリムホイールやエアロハンドル等差新機材を取り入れても、その割合は20%に過ぎないのです。

 僅か2割に高額を投じる前に、自分の身体の空気抵抗をいかに削減できるかを考えてみることにしましょう。空気抵抗は物体の前衛投影面積に比例して大きくなることは誰にでも分かるはず。バイクフレームやホイール、エアロハンドルにステム等は流体力学に基づいて設計されるようになっているのですが、人の身体の空気抵抗はどうすれば減らせるのでしょう。

 最近ロードレースをTV観戦する機会が増えました。プロのロードレーサーから私たちが学べることが少なからずあります。勿論、あのような大集団の中を高速で走ったり、100km/h近いスピードで下るテクニックを真似ようという訳ではありません。学ぶのは彼らのフォームです。

 私がロードレース観戦から離れていた10年ほどの間に、選手のフォームに変化がありました。それはハンドルを握る位置の変化でした。且つては、下ハンや上ハンを持つ選手が多かったのですが、今はブラケットを内側に絞り込むように握るフォームの選手が増えています。

 では、何故このような変化が起こったのでしょう。「サイクリストの上腕の空気抵抗は体の他の部分の前面面積の空気抵抗とほぼ近い」ということが科学的に証明されて来たためです。肘が広く開いていると上腕が作り出す空気の乱れによってエネルギーが失われてしまうことによるものと考えられることが原因です。また腕は極力前方に伸ばした方が、上腕の断面が円(乱流が起きやすい)から楕円(乱流が起きにくい)に変わるので空気抵抗を削減できるのです。

 過去には過去2度アワー・レコードを更新したグレアム・オブリーが生み出した、腕を胸の下に折りたたんだ「オブリー・スタイル」と手を前に突きだした「スーパーマン・スタイルなどもありましたが、いずれもハンドル操作が難しく危険ということでUCIで禁止とされてしまいました。




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カーボンフレームを考える(5)

2024-04-23 09:28:37 | ロードバイクの科学
 TREKはOCLV、SPECIALIZEDはFACTという名称で有名ですが、カーボンフレームで有名なLOOKには特別な名称はありませんが、先に記したようにフレームの用途によって多様なカーボン素材を組み合わせています。カーボンロードとしては後発のcannondaleはバリステック(BallisTec)カーボンテクノロジーで軽くて剛性も高いロードバイクを制作していますが、今回のLAB71に使用されているカーボン素材は「0カーボン」という新たな素材が使われているようです。

 Cannondaleのバリスティックカーボンもカーボンの種類ではありません。これは補強のためのカーボンシートを側面に増し貼りすることで強度アップを図るという方法で、フレーム側面を中心に、補強カーボン材を連続的に配位することで剛性を上げる新技術(テクノロジー)なのですが、LAB71に関してはカーボン素材そのものも新しくなったようです。cannondaleのカーボンはこれまでのHM(HightModulus)とSM(StanderdModulus)に加えLAB71グレードが新たに追加されたことになります。このLAB71は「0カーボン構造」でこれまでのHMに比べ56サイズのフレームで100g弱も軽くなっているというのです。HMは引張弾性率46tのカーボン素材、SMは30tのIMカーボンなのですが、LAB71に関しては最先端のカーボンファイバー(引張弾性率不明)とナノレジンの組み合わせた「0カーボン構造」としか明かされていないのです。レジンは樹脂のことなので、CFRPに引張弾性率の高い軽量なカーボン糸とナノレジンを使用した新しいカーボン素材ということなのでしょう。

 アルミフレームも配合される金属の違いで素材の硬さや重量に違いがありましたが、カーボンフレームの場合は素材の種類に加え、プリプレグの向きや積層枚数等々多様な技術の組み合わせがあり、最早スペックだけでは評価が出来ないのが実情なのです。にも拘わらず、分かり易い重量や剛性といった数値ばかりが独り歩きしているという現実がある訳です。CFRPの特徴のひとつに加工のし易さがあり、独特のフレーム形状を自由に設計できるというメリットがあります。昨今のエアロロードの進化はCFRPのこの特性が大いに寄与しているのです。

せっかくメーカーのエンジニアたちが、知恵の粋を極めて作り上げたバイクを、その製作意図も考えず、ただ軽くて剛性が高いというだけで選んで良いものでしょうか?最近ではエアロ効果の高いバイクが注目されています。エアロロードがパリ~ルーベを征する時代なので、幅広タイヤを低圧にすれば、エアロロードは荒れた石畳でも走り切れることが証明されたといえるでしょう。今後は単に軽いバイクより、多少重量があってもエアロ性能が高いバイクが求められることになると推測しています。
 
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カーボンフレームを考える(4)

2024-04-22 08:47:17 | ロードバイクの科学
 カーボン素材は東レ等の素材メーカーから提供されますが、何故か素材メーカーが東レの場合のみ東レのT〇〇カーボン使用と銘打つ傾向があるようです。cannondaleやSPECIALIZEDのように東レ以外のメーカーの素材を使用している場合、素材メーカーを明らかにせず、BallisTecカーボンやFACTカーボンといったカーボンテクノロジー名で呼ぶバイクメーカーもあるのです。

 これは300~400枚にも及ぶカーボンシートを最適な形状と大きさを決め、強度の違いによって使い分けるロードバイクのフレームには、素材そのものよりも、その素材をどのように扱うかが重要になるからです。むしろ、PINALLEROのように東レのカーボンプリプレグをそのまま使用するケースが稀といえるでしょう。

 バイクメーカーのエンジニアがカーボン素材を選定する際に基準としているのは引張強度、弾性、重量、価格です。エンジニアはそのバイクの用途、ライダーのニーズ、つまり要求水準に対して、どのファイバーをどのように組み合わせて達成するかに苦心するわけです。最終生産者はそれぞれのバイクメーカーであり、素材メーカーが性能を担保するものではないのです。

 一口にカーボンといっても、実際に使われているのはCFRP「炭素繊維強化プラスチック」なので、プリプレグというカーボン繊維をプラスチックに織り込んだシートを張り重ねているのです。東レはアルミの半分近い重量をうたい、実際に航空機やロケット等に使用されているのも事実ですが、現在、炭素繊維(PAN系)を製造している日本企業は東レ、帝人グループ、三菱ケミカルの3社もあるのです。東レのカーボンを使っているから凄いというのは、乗り手の感覚からするとちょっと違うような気がしてしまいます。

 同じ東レのT800という素材(カーボン繊維)を使っていてもPINALLEROとGIANTのフレームの重量や剛性が異なるように、同じ素材の炭素繊維でもどのようにプリプレグ化し、何枚どこにどのように重ねるかはフレームの形状や設計思想によって異なるので、メーカーの技術力次第になる訳です。
 



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カーボンフレームを考える(3)

2024-04-21 09:45:18 | ロードバイクの科学
 カーボンフレームの名車を数多く送り出して来たLOOKのウェッブサイトには、バイクの種類によるカーボン素材の配合率が示されています。ここには引張弾性率が違う12tから60t迄の6種類のカーボン素材が示されています。
それは以下の通りです。

 1)SPECIFIC FIBERS 12t
 2)HR(HighRigidity)CARBON 24t
 3)IM(IntermidiateModulus)CARBON 30t
 4)HM(HightModulus)CARBON 46t
 5)VHM(Very HightModulus)CARBON 50t
 6)UHM(UltraHighModulus)CARBON 60t
 「引張弾性率」とはヤング率ともいわれ、単位断面積当りの引張応力と応力方向に生じる伸びとの比で表されます。 数値が大きい方が応力歪みが小さい樹脂製品です。 製品設計において引張りの強さはあまり参考になりませんが、引張弾性率は製品に掛かる応力の使用範囲の中での変位を算出出来る点で参考となる数値なのです。

 最高級カーボンフレームメーカーとして有名なLOOKのロードバイクフレームで最軽量の785 HUEZ RSでもUHMの比率はわずか10%、最新エアロロードの795 BLADE RSでも5%に過ぎません。その一方で最も引張弾性率が低い12tのSPECIFIC FIBERSが795 BLADE RS以外全てのモデルで使われているのは注目に値します。785 HUEZ RSでは12%、UHMが使用されていない785 HUEZ で11%、エンデュランス系のOPTIMUM+では15%と比率が高くなっているのです。これは同質の東レCPRFのみで作られているPINALERO等とはフレーム設計コンセプトが違うのです。
 「引張弾性率」の高いカーボン製品ほど軽くて硬い高級品になりますが、LOOKのフレーム設計に見るように、高級バイクに必ずしも高級のカーボンばかりが使われるとは限らないことが良く分かります。スパークライミングバイクの785 HUEZ RSでさえ半分はIM(IntermidiateModulus)CARBON 30tが使用されているのですから。LOOKの凄いとこころは、VHM(50t)以外の5素材を最高のバランスで使用していることでしょう。
 これはフレームをCFRPの質の違うシートを部署に応じて上手く組み合わせて作るか、同じ質のCFRPシートの向きや重ね方を工夫して作るかの違いだと思っています。この場合、LOOKの製法は手間がかかり特殊だといえるでしょう。

 
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